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CAROLIANS 04

「でかっ!」

 薫は思わず声を上げた。

 裕香の背の高さと胸の大きさのどちらに驚いたのか広人は気になったが、今はそれを聞いている場合ではない。広人の隣には裕香達のカリスマである「るりきゃろ」本人がいたからである。

 目を丸くしていた裕香達は、何やら英語で話し始めた。

 隣にいるのは広人の彼女でその彼女は「るりきゃろ」にかなり似ている、自分達の選択に間違いはなかったのだという様な意味合いの会話が聞き取れた。彼女とデートの約束をしていたから広人は急いで帰ったのだとも言っていた。

…グッジョブ勘違い。

 裕香達は広人達と同様に夕食と夜食用の食材を買いに来ていたということだった。

 慌てて立ち去っては裕香達に不自然な誤解を招いてしまうと考えた広人は、ライブ配信のことについて聞いてみた。午後11時40分から放送される音楽番組に合わせ、午後11時からライブ配信を開始するということだった。配信時間は30分。裕香達は「もしよかったら彼女も一緒にどうぞ」という歓迎の意志を広人に伝えてきたが、広人は伺う場合は連絡をすると返答した。

 裕香達は腕時計を見ると、広人に手を振りながらレジへと向かっていった。

「広人君英語話せるんだ」

 広人と裕香達の会話中ひと言も声を出さなかった薫は、好奇に満ちた目で広人にそう言った。

「大学の勉強で必要になるから、少し話せる程度だけど」

 そう広人が言うと薫は彼の手を取り楽しそうに歩き始めた。

「今の人達とはどう言う関係なの?」

 下手なことを言って疑われても困ると判断した広人は正直に言った。

「高校の同級生とその友達で『CAROLIANS』とかいう君のファンサークルのメンバーだよ。ライブ配信を今夜するとか言ってた」

 急に薫は立ち止まった。

 同級生という言葉に反応し妙な方向へと話が進むのではないかと危惧した広人に彼女は聞き直した。

「『CAROLIANS』って本当に?」

 彼女の言葉に広人は頷いた。すると薫はパンツのポケットから携帯端末を取り出し電話をかけ始めた。

「おシノさん、薫です」

 三人娘は咲岡の事を親しみを込めてそう呼んでいた。しばらく薫は咲岡と話をしていたが、携帯端末を広人に手渡すと電話に出るようにと言った。

「本物の『CAROLIANS』で間違いないのね?」

 電話の向こうで咲岡は広人にそう聞いてきた。間違いないと広人が答えると、咲岡は早めに自宅に戻るように言ってきた。

「急いで買い物終わらせちゃおう」

 薫はそう言うと再び広人の手を取り歩き始めた。

 レジ付近に「CAROLIANS」の姿はなかった。買い物を済ませ裕香の自宅へと戻っていったのであろう。買い物かごに次々と品物を放り込んでいく薫を見ながら広人は改めて裕香達のことを考えた。「るりきゃろ」本人が急に咲岡に連絡を取るということなど滅多にあることではなかった。それだけに何か特別な意味があるのだろうと思ったが、容易に想像することが出来なかった。


 広人の自宅リビングでは咲岡がソファに座り植野に電話を掛けていた。

「萌木と合流したらこっちに向かって。車は二号車でお願い。ここの住所は車のナビに登録してあるから問題ないわ」

 薫とリナは広人の母親の夕食作りを手伝いカナは携帯端末で萌木に連絡を取っていた。

「ナイトメアの衣装はミーティングルームの隣の衣装部屋にある。ダンボールとケースを出しておけば植野氏が運んでくれる。メイクは二号車のもので間に合うから大丈夫。それとAセットをお願い」

 広人は父親とダイニングテーブルの椅子に座り、居心地なさげに女性たちの動向を伺っていた。

 時刻は午後6時になろうとしていた。

「何が始まるんだ?広人知らないかお前?」

 周りを気遣うように広人の父親は小声でそう言った。

 知らないと広人が首を横に振ると、そうかといって父親は腕を組み不安げな顔をした。

「カナ、萌木に事務所のファイル28番を持ってくるように言っておいて」

 咲岡の指示をカナは萌木に伝えた。

「なんだか楽しい」

 広人の母親はそう言いながら出来上がったパスタ料理を大皿に盛り付けた。リナはそれをリビングへと運び、薫は食器をテーブルに並べていた。

「広人君、『CAROLIANS』にこう伝えて、『自分の友達と一緒にライブ配信を見たい。伺う時間は10時頃』。それ以外の事は聞かれても上手くごまかして」

 咲岡にそう言われた広人はリビングでは落ち着かなかったので、二階の自室から裕香あてにメールを送った。向こうも夕食中だったのか10分ほどの間をおいて返信が届いた。

『大歓迎しちゃいます。みんなも喜んじゃってます』

 ライブ配信を前に盛り上がっているのか、それ以上の内容は書かれていなかった。

 広人はデスクトップPCを起動させると「CAROLIANS」について検索をかけてみた。ヒットした記事の数は二十万件を上回り、その記事のほとんどが英文であったため公式サイトは見つけにくかった。そこで「NightmareLip」を加えて再検索をかけてみる。絞り込まれた検索結果から「CAROLIANS」の公式サイトらしきものが発見できた。

「AZURE EYES CAROL」が「CAROLIANS」の公式ウェブの正式名称らしく、トップ画面には「るりきゃろ」のシングルジャケット写真が飾られており、「るりきゃろ」公式ブログから引用されたと思われるプロフィールやディスコグラフィなどのほか、様々な「るりきゃろ」動画へのアドレスが記載されたあった。何より広人が驚いたのはその訪問者数である。一日で百万をこえるアクセス数がカウントされていた。最新記事として今日深夜にライブ配信を行なうとあり配信元のURLが紹介されていた。

 母親に呼ばれリビングに戻ると、三人娘と咲岡がソファに座り広人の両親はダイニングテーブルの椅子に腰掛けていた。咲岡はソファ側に広人を招くと、眼鏡の位置を直しこう言った。

「『CAROLIANS』を確保します」

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