M+ 06
「確定フラグきた!」
身の丈3mの骸骨型のボスモンスターは、片手斧を持ち盾を構えていた。このモンスターは装備している武器の種類によりドロップアイテムが変化していた。片手斧の他に片手棍棒、両手斧があるのだが、なかでも片手斧装備時の場合、高確率でレア以上のアイテムを落とすことが確認されていた。
広人は武器を両手剣に持ち替え、攻撃優先のスタイルに切り替えた。敵の一撃ダメージは大きかったが動作が遅いため、両手剣でも充分に回避が出来ると判断したからだ。
妹の亜紀は、広人が三人娘の新メンバーになっていたことを当然知っていた。
「初めはびっくりしたけど、広兄なら納得できた」
広人を回復しながら状態異常スキルを次々と亜紀はボスモンスターに仕掛けていった。
「その納得という意味が分からないんだけど」
三人娘と同性である妹なら、彼女達の考えが分かるのではないかと広人は思っていた。
「その鈍感さが広兄のいいところなんだけどな」
敵が攻撃モーションに入ったところで広人は連続スキルを使い、攻撃を避けては強烈な単体スキルを打ち込んだ。
「前に広兄が言ってくれたよね、結果を出して一番喜んでいいのは本人だって」
「そうだけど」
「でも人って誰かに喜んで貰いたいって気持ちもあるんだよね」
「そうなのか」
「だってそのほうが倍楽しいし。でも誰でもいいって訳にいかないけどね」
亜紀は広人の後方に移動し、回復に専念し始めた。敵の残りHPは30%を切っていた。
「アーチェリーには個人と団体があるけど、楽しいのはやっぱり団体戦だね。みんなで一緒に苦労して色々考えて、それで結果が出せたら最高だし。もしそれが仲のいい友達とか好きな人だったら超感動じゃん」
広人は三人娘のことを考えていた。
彼女達に出会わなかったら、マグナスキルオンラインをここまで長く続けることはなかった。息抜きに始めたものであるし、VRMMOは他にも数多くのタイトルがある。おそらくはつまみ食いをするように様々なゲーム世界を渡り歩くだけになっていたであろう。あるいはゲームそのものをやめ勉強だけの毎日を送っていたのかもしれない。
広人がマグナスキルを発動させると、亜紀は広人のHPを回復スキルで全快させ、素早く敵の背後に回り込みマグナスキルを使った。
「マグナスキル一種、大地裂破が発見されました。繰り返します…」
久しぶりに広人はNPCのアナウンスを聞いた。
「衣装もゲット!…あれ?このスキル鞭用だって珍しい」
広人はドロップ品の全てを亜紀に譲った。近接装備主体の広人にとって遠距離スキルは必要のないものであり、衣装に至っては変える気など全くなかったからである。
亜紀の喜ぶ様子を見ていて、三人娘が自分を選んでくれた理由をあれこれ考えても仕方がないと思った。その答えは三人娘との関係を続けていくうちにいずれ分かる時が来るような気がしたからだ。
「ところで広兄に質問」
上機嫌だった亜紀は、急に真面目な顔で広人に聞いた。
「三人のうち誰が好きなの?」
妹の方が父親の遺伝子を強く受け継いでいるのではないかと広人は思った。
「何を急にいきなり突然…」
「リナさんとわたし気が合うんだよね、一番メールのやり取りが多いのはリナさんだし…。カナさんはあまり感情を表に出さないけど、頭が良さそうだし色々気が利く人だし…。薫さんは、ああいうお姉さんがいたら楽しいだろうなって思う」
「そんなの考えたこともない…」
「へー」
不敵な笑みを見せながら、亜紀は広人の本心をどう聞き出そうかと思案をしている風に見えた。
「まあ、いいか」
あっさり亜紀が引き下がったので、広人は肩透かしを食らったような気になった。
「うちの兄が妹以外の人を好きになるわけがない、ってことにしておこう」
勝手な結論を出されては困ると広人は思ったが、この話題を引き延ばし続けるのはあまりに危険すぎたため、それ以上の反論は控えることにした。
「で…相談って何だっけ?」
「自己解決出来そうだから…もういいや」
「ホントに?」
「それよりあの三人に、ほかに余計なこと言ってないよな?」
「はて?どのことだろう……?」
妹が三人娘に色々なことを話される前に釘を刺そうと広人は思ったが、もはや手遅れのようだった。
ギルドチャットに三人娘のログインを告げるメッセージが流れた。空白だったギルドチャット欄にログが流れ始めた。
「おー心の友がいるではないか!」
「リナさんちわっす!闘技場行きませんか?」
「いくー!」
「黒氏、踊りの練習はじめるよ」
「はいはい」
亜紀は広人に「頑張って」と言ったあと転移アイテムを使い闘技場へと向かった。広人が帰還スキルで移動しようとすると薫から直接会話が届いた。
『広人君はやっぱりシスコンなの?』
…ログイン時間は薫に合わせることにしよう。
広人はそう心に決めた。




