↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/68

sister's voice 05

「はじめまして、黒猫の妹の白猫です」

 広人は三人娘に妹を紹介することにした。

 隠したところでいずれ見つかってしまうだろうし、逆に話がややこしく成り得る危険性もある。彼女達が信用するかどうかは別として、亜紀をこのまま放置しておくことも出来なかった。

 三人娘はいつものように色違いのジャージ姿で住宅地区の「我が家ギルドホーム」にいた。亜紀を見た彼女達は初め目を丸くしていたが、いつものように背を向けると何事か話し合った後で、カナが亜紀に声をかけた。

「リアルで妹さん?」

「はい」

 笑顔で答えた亜紀とカナはしばし無言となった。直接会話ウィスパーをしているようだった。

「えっ、マジで?」

 ギルド無所属だった「白猫メイド」のキャラ名の下に「KerBerryz」のギルド名が追加された。広人の心配をよそに、三人娘はあっさり事実を受け入れたようだ。

 動揺する広人を無視し、四人は楽しげに話し始めた。妹は自分と同じ「るりきゃろ」ファンの集まりと思っているのか特に驚いた様子を見せなかった。例え違うとしても、人見知りである広人のギルドメンバーとなれば悪い人達ではないと判断したのだろう。三人とも女性となれば尚の事である。

「アーチェリーで中学全国大会って、すげー!」

「練習大変じゃないですか?」

「これあげる」

 亜紀はカナから白い猫耳を受け取ると、嬉しそうに頭につけた。

「今は補欠ですから、まだまだこれからです」

「おー!」 

 三人娘は声を揃え歓声を上げた。

『黒氏、私達のこと彼女に話した?』

 カナは直接会話を広人に飛ばした。

『言えるわけがない』

『ほほう』

 再び三人娘は背を向けると話し合いを始めた。

『広兄、この人達とどこで知り合ったの?』

 亜紀は広人を見るなり直接会話を飛ばしてきた。

『狩りPTで偶然一緒になってからの付き合いだ』

『リナさんとカナさんって本名なのかな?』

 直感的に亜紀は三人娘から何かを感じ取ったのだろうか、急にそわそわし始めた。

 三人娘は話し合いが終わると、二人の方を向き直った。

「今から新しいギルドメンバーの歓迎会を行いますね」

 ユナがそう言うと、リナが椅子を用意して亜紀を座らせ、カナはジュークボックスをアイテム化して部屋の隅においた。マグナスキルオンラインでは、推奨されるファイル形式でウイルス対策が施されたものに限り、外部からの音楽データを使用することが出来た。

「黒氏、合図したらここのボタン押して」

 言われるまま広人はジュークボックスの隣に立った。

 ユナが部屋の中央に立つと、リナはその左後ろに立ちカナは右後ろに立った。

「本当の声じゃないから口パクになるけどごめんね」

 ユナの言葉の意味を悟った亜紀は、「まさか!」と思わず声を上げた。

「未発表新曲の『アルエトロン』です、聞いて下さい」

 カナの合図で広人はボタンを押した。

 軽快な曲の前奏が流れ出し、三人は踊り始めた。

 両手で口を塞ぎ、凍りついたように亜紀は三人娘の姿を見つめていた。

 三人娘が時折ジャージ姿でいるのは、振り付けの練習のためだということが広人にも理解出来た。

 亜紀の顔が紅潮し始め、いつの間にか曲に合わせて右足でリズムを取り始めていた。その様子を見ていた広人は、三人娘の実力の凄さを感じていた。プロが持つ圧倒的なカリスマ性に、音楽やアイドルとは無縁である広人でも思わず引き込まれそうになる。

「調子出てきた!」

「ライブやっちゃおうか」

「黒氏、隣のボタン押して」

 三人娘は広人がDORSのイベントで見たような衣装に装備交換をし、さらに踊り続けた。

 部活漬けの毎日を送り、ライブやコンサートに行ったことのない亜紀にとっては想像もつかない出来事なのだろう、リズムに合わせ両手を叩き始めた彼女の興奮が見ている広人にも伝わって来るようだった。

 計六曲が披露され歓迎会は終了した。

 何度となく彼女達の歌を聞き、PVで踊る姿を見ていた亜紀は、紛れもなく目の前にいる彼女達が本物であると確信したのか、飛び上がるように椅子から立ち上がると、何度も何度も頭を下げ礼を述べた。

「他のプレイヤーにバレてたりとかしてないんですか?」

「4人でID籠もりしかしてないから他の人に会わないし、わはははは」

「普通のファンの集まりにしか見られてないと思うけど」

「確かに聞かれたことない」

 興奮冷めやらぬといった感じの亜紀は、次々と思いつくままの質問を三人娘に投げかけた。闘技場で見せた冷静な姿は微塵もなく、まるで別人のようだった。

「そう言えば、この前のブログに出てたライオン頭の人って…」

 三人娘は一斉に広人を見た。亜紀は広人の方を見るなり直接会話ウィスパーを飛ばしてきた。

『リアフレなの?』

『そういうことになるらしい』

『えー!なんで?どうして?意味わかんない!』

『俺もわからん』

『とりあえず三人のサインが欲しいんだけど』

『もらえることがあったら送るよ…』

『絶対に絶対だからね!』

 カナから直接会話が広人に飛んできた。

『100up』

 意味を理解しかねていると、リナからの直接会話。

『妹さんの写真あったら見せて!』

 無期限の約束を取り付けると、ユナからの直接会話。

『広人君はシスコン?』

…俺がシスコンであるわけがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。