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sister's voice 02

 マグナグランティアの首都アデルの中央広場から直線上に伸びる石畳の道を北へ進むと、レンガ作りの巨大な円形闘技場の外観が見えてくる。前回のアップデートで開放された対人エリアコンテンツであるその場所には、腕自慢のプレイヤー達が報酬目当てに連日のように詰めかけていた。戦闘に勝利した回数に応じてランキングが決定されるため、面倒なルールを理解する必要もないことが人気の理由だった。ランキング上位者にはバトルトーナメント出場権が与えられ、そこで勝利すれば垂涎のアイテムを獲得できる。

 PvE(MOB狩り)専門の広人には無縁とも思えたが、実力者同士の戦いを観戦出来ることから、三人娘のログインを待つ間の暇つぶしの場所となっていた。

 建物内に入ると広いロビーがあり、大きなモニターには観戦者数の多い試合の様子が映し出されていた。闘技場内には左側に試合参加者用の入口が有り、右側に観戦者用ルームへの入口があった。広人は観戦者ルームに入ると、パチンコ店の台のようにずらりと並んだ観戦用端末の前に立ち、タッチパネルで観戦する試合を選び始めた。観戦者数の多いものやランキング上位者が参戦中の試合などが、カテゴリー毎に任意で選択でき、一試合につき500マールの観戦料を支払うことで競技会場の観戦席へ移動することになる。

 観戦料はそのまま競技者達のファイトマネーとなる仕組みで、試合に勝利した側には観戦料総額の50%と残りHPの%に応じた報酬が追加される。つまり試合に負けたとしても勝敗決着時に相手のHPを仮に10%削っていれば、観戦料の5%を敗者は得ることが出来るというわけだ。無論勝利者にはNPCからの別報酬が与えられる。またマグナスキル所持者を倒すと、NPCから特別報酬としてマグナスキルが貰えることから、低レベルでも一発逆転のチャンスを狙い参加する者が絶えなかった。

 広人はランダム選択を押し500マールを支払った。ほどなく全身が青い光に包まれ、競技場観戦席に移動した。

 競技場は石畳作りの正方形型をしており、一辺の長さが50メートルほどであった。その周りを観客席が取り囲んでいた。中央部分には等間隔で2つの魔法陣が置かれており、競技者はそこに登場することになる。対戦者はエントリーした後、ランダムで決められるため、報酬目当ての違反行為は出来ない仕様となっている。無論その行為を行なったとしても、観戦者が気づいて試合開始前に退場してしまえば観戦料であるファイトマネー報酬は発生しない。

 広人が観戦席に腰を下ろすと、ほどなくして一人目の競技者が現れた。

 右手にバスケットボールほどの大きさの鎖付き鉄球を持ち、左手に長さ50センチはありそうな鈎爪をつけた身の丈2mの競技者は、キャラ名こそ「わさび大根」という風変わりなものであったが、常にランキング20位付近をキープする実力者であった。全身を重鎧で覆い、中距離から近接物理攻撃スタイルを得意とすることが見て取れる。手にしているのは敵を追い詰めるための初手武器であり、相手を追い込んだ後には自慢の武器に持ち替え、怒涛の如きラッシュをかけることが予想された。

 その対戦者となる競技者はなかなか現れなかった。無人の魔法陣が青色の点滅を続けていることから、エントリーは確定されているはずなのだ。対戦者が決定すると同時に、戦闘準備時間として一分間が設けられているが、30秒経過しても現れない。このままでは「わさび大根」の不戦勝が決定してしまう可能性が高い。

 競技場内では試合開始までのアナウンスが始まった。

「試合開始まで、残り15秒…10秒、9、8、7…」

 残り時間5秒を切ったところで、もう一人の競技者の姿が魔法陣の中に浮かび上がった。

「えっ?」

 遅れて入場した競技者を見て広人は思わず声を漏らした。

 競技者のキャラ名は「白猫メイド」だった。

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