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エピローグ.2 フェイにもらった魔法の検証 その2

「気を取り直して、次に行こう。」


 光道魔法で微妙な雰囲気になったメンバーに対し、少し明るく声をかけるロディ。


「次は浮遊魔法だったな。」

「ああ。」


 浮遊魔法を楽しみにしていたテオが真っ先に反応し、ロディは安堵とともに笑って答えた。


「なあなあ、それって他の人や物にもかけることができるのか?」

「え?ああ、師匠は出来るって言ってたけど。」

「じゃあ、あとで俺にもかけてくれよ。」


 好奇心爛々の目でロディを見るテオ。彼がこんなに主張するのは珍しいな、と思いつつロディは同意した。


「いいぞ。でもまだ俺も満足に制御できていないんだ。うまく浮かばないかもしれないけどいいか?」

「構わねえよ。」


 テオはワクワクした笑顔で答える。

 それを女性3人はやれやれといった目で見ていた。


「私たちも浮遊魔法に興味があるけど、やってもらうのはロディが十分練習してからでいいわ。」

「私も同じく。」

「後でいいのだ。」


 女性陣は好奇心よりも危険回避を選んだようだった。




 最初はしばらくロディ自身の魔法訓練に時間が費やされる。


「よ・・・お、・・・ほっ・・・」


 変な掛け声とともに、体全身を動かしまくるロディ。バランスを取るためにやっているのだが、

 浮遊魔法はバランスが難しい。

 現代日本の話になってしまうが、浮遊魔法は宇宙船内での動き方に近い。重力がなくなるので浮くことができるが、その重力という基準が全方向になくなるために、あらゆる方向に体が動いてしまい安定しないのだ。場合によっては上下さかさまにひっくり返ってしまうこともある。それをうまく魔力を使ってコントロールして、安定した立った姿勢を保たなければならないのだ。


「なんだかお兄ちゃんが変な踊りを踊ってる。」

「そうね。顔が真剣なのがさらに笑いのポイントね。」

「失敬な・・・お、・・・これでもまじめに・・・うおっ・・・やってるんだよ。」


 エマとナコリナから酷評されるのだが、やめるわけにもいかない。

 数十分後に汗だくになったロディがお尻をついて座り込むまで練習は続いた。


「なんとか、うまく浮くようになった・・・はぁはぁ・・・。」


 練習の甲斐あって、ロディは最初より安定して立ったまま浮くことができるようになった。


「じゃあ次は俺!俺を浮かせてくれよ。」

「ちょっと、テオ。ロディは疲れてるのよ。」

「でも・・・。」

「わかったよテオ。でもちょっと休憩させてくれ。さすがにバテバテだ。」


 待ちかねたように言いよるテオに、慌てて静止するナコリナ。そしてロディは困惑したような顔で返事をする。テオはどれだけ楽しみなのかとあきれるほどである。子供か。


 ロディが幾分回復したところで、テオに浮遊の魔法をかけた。


「行くぞ。あまり動くなよ。」

「任せろ。」


 そこまで信用できるかわからない言葉を叫んでテオがロディの前に立つ。

 ロディが手を前に差し出し、浮遊魔法を発動すると、少し間をおいてテオの体が浮き上がってきた。


「おお、浮いた、浮いたぞ。・・・と、うわっ。」

「あ、馬鹿、動くなってのに。」


 体が浮いたことに喜んだテオは、次の瞬間、氷で滑るかのように見事にすっころんだ。


「だ、大丈夫か。」

「あー、びっくりしたぜ。あんな風になるとはな。」

「どこか当たってないか?」

「ん-、大丈夫、転んだ割にはあんまり地面に当たんなかったぞ。」


 ロディの魔法は自分で掛けるには制御できるようになったが、他人に掛けるには動きが予測できないため、うまく制御できない。

 だがひっくり返っても浮く力が働いているため、地面に叩きつけられることはなく、ダメージもないようだ。


「でもこれ、・・・おー、おもしれぇ。ぐるぐる回る!」


 尻もち状態(少し浮いている)のテオが何やら動き出したかと思うと、お尻を起点にしてぐるぐると体を回し始めた。


「お、おい、動くなって。立てないだろ。」

「立たなくてもいい。この方が面白いぞ!」


 そう言うとテオがいろいろ変な動きをし始めた。

 現代日本風に言うと、ブレイキンやら、横倒しのフィギュアスケートのスピンのような動きを楽しんでいる。体が地面についていないため摩擦が無く、簡単に動けるのだ。

 ロディはと言うとテオの静止状態の制御は早々にあきらめ、ただ単に浮かすだけの状態を保持している。


「「ロディ(お兄ちゃん)」」

「ん?」


 テオのダンス(?)を生暖かい目で見ていると、後ろからナコリナ、エマ、レミアの3人がロディに声をかけてきた。


「私もあれをやりたいのだ!」

「えー!?。」


 レミアが興味津々と言った目でテオを見て、自分もやりたいと主張してきた。そしてそれだけではなく、エマもナコリナも同じ目をしているのにロディは気付く。


「えっと、もしかしてナコリナも、エマも?」

「えへへ。」

「・・・できればやってみたいな、なんて。」

「・・・はぁ。」


 あきれてため息をついたロディだったが、すでに魔力が少なくなっているし、後のこともあるため、この場では断った。しかし後で必ずやると約束をさせられたのだった。




 テオのダンス(?)で浮遊魔法の検証が済んだわけではない。


「やっと浮遊魔法の修正に入れる。」


 予想外に時間がかかってしまい、ようやく浮遊魔法の魔法陣の修正に取り掛かるロディ。

 あまり時間をかけると日が暮れてしまうため、なるべく急いで検証を進める。


「うーん、やっぱり一番の問題は魔力量か。」


 検証を進めてわかったことは、高く速く空を飛ぶことは可能であるのだが、ほぼ比例して魔力量が多くなることが判った。

 やはり当初の魔法のように、少し浮遊するだけの方が効率がいいようだ。


「ロディ、もうこれで検証は終わり?」

「うん、大体終わったんだけどね。」


 そう答えるロディだったが、なんだか少し歯切れが悪い。


「?どうしたの。何か気になることでもあるの?」

「うん、それがね。魔法陣には変更可能な場所と不可能な場所があるのは知ってる?」

「この前聞いたわ。魔力量やスピード、稼働時間などは変えられて、魔力の属性変換とか変換した魔力の体外への発現とかは変えられないって。」


 ナコリナは魔法陣製作師になるために勉強をしているため、こういった話も理解している。


「うんそのとおり。魔法陣にはそれぞれの場所が割り当てられていて、不可変の領域があるんだ。だけどね」


 ロディがナコリナを振り向いて言った。


「この浮遊魔法陣、その不可変領域の一部が変えられるんだよ。」

「え、本当!?」


 ロディが気になっていることは、不可変であるはずの領域に変更ができる場所があることだった。


「魔法陣の中心にある円形の部分なんだけど、動くんだよ。中の模様を変えることはできないけれど、回転するようなんだ。中の模様は変えられないけど、回転する魔法陣は初めてだ。」

「回転って、どんな風に?」

「動くのは2パターン。1つは最初のままの位置。もう一つは、それを上下逆さまに180°回転した位置。それ以外の位置では止まらないんだ。だからその2つの状態だけ許されるらしい。」


 魔法陣の真ん中の図が回転し、上下反対になる。この位置で発動する魔法とは何だろうか。普通は威力やスピードが上がったりするのだが、今回は不可変と思われていた魔法陣を変えるのだ。これは初めての経験で、普通とは違う「修正」の魔法に、何が起きるか想像もできない。


「試してみるしかないね。」


 修正した魔法は、やってみなけりゃわからない。

 修正すれば何かの性能が極端に上がるのだ。フェイトの魔法検証中にとんでもない目にあったことももちろんある。屋敷の屋根を吹き飛ばしたり、地下の訓練場を水浸しにしたり・・・

 それでも確かめたいのは研究者の性だろう。


 ロディが浮遊魔法を「修正」し、フィールドの真ん中に立つ。他の4人はとばっちりを受けないようにロディから距離を広く開けている。


「よし、じゃあやってみよう。浮遊!」


 修正した魔法を発動させるロディ。

 が、何も起きない。4人から見てロディが浮いたり動いたりしていないので何が起きているか最初はわからなかった。

 しかし、


「う、むむ、む・・・くッ!」


 ロディが苦しげに声を上げて、膝をついた。


「ロディ、どうしたの?」


 ナコリナが心配そうに声をかけるが、ロディは返事をしない。

 さらにロディの状態が前のめりになり、地面に手をついて苦しげに呻く。


「く・・・これは・・・」

「ロディ、魔法を解除するのだ!」

 

 レミアの声に反応したかのように、ロディが魔法を止めた。そして四つん這いの状態のまま大きく何度も深呼吸した。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「お兄ちゃん、何があったの。」


 荒い息を吐きながらエマに向けて顔を上げたロディは、地面に座るように姿勢をゆっくりと変えると、ようやく口を開いた。


「体が重くなった。まるで全身に分厚い金属の鎧を着こんだかのように動きづらくなって、立っていられなくなったんだ。」


 ロディ曰く、体を動かそうにも満足に動かず、立つことも無理だと判断してよつんばいになったという。


「地面が、なんかすごいことになってる。」


 ロディの周りの地面を見ると、膝と手をついたあたりが心なしかへこんでいるように見える。かなりの重量がかかったのだろう。

 それを見ながら考えていたロディは、最終的にこう結論付けた。


「多分この魔法は、浮遊とは反対の魔法だよ。」

「反対の魔法?」

「浮遊は体が軽くなったように地面から浮かすことができる魔法。そしてこの魔法はその反対に、地面から離さないように体を重くする魔法じゃないかな。」


 ロディは修正した魔法をそう判断した。中央の模様を反対向きにしたら、逆の魔法効果が表れる、と考えれば辻褄もあう。


「でもそれってあんまり使える魔法じゃなさそうだな。動けなくなるんじゃな。」

「そうとも言えないさ。」


 テオはそう言って浮遊の修正魔法を否定したが、ロディは少し考えて首を振った。


「確かに自分に掛けるにはあまり効果が期待できないけど、相手に掛けるデバフ魔法と考えればいいんじゃないか?相手を重くできれば動きを阻害することができるし、それにスピードの速い魔物だったらそのスピードを落とすことが出来そうだ。」

「そうなのか?」

「じゃあ体験してみるか?この魔法を掛けてあげようか。」


 ロディはニヤリと笑ってテオに提案する。テオは先ほどのロディの状態を思い出し、ぶるぶると首を振った。


「う、・・・いや、いい。」

「そう遠慮せずに。さっきの浮遊もかけただろ。」

「ぜってーヤダ!」


 テオがそう強く拒否してロディから素早く後ずさる。それを見て4人はクスクスと笑いあった。


 フェイにもらった魔法は、いろいろあったもののかなり使える魔法で、検証は有意義なものであった。

 今後これらの魔法を使用するときが来るだろう、そうロディたちは感じるのであった。

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