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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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国の狙い【中編】

空からなにか来る。それは大きな翼で羽撃き、天空を統べる気品に充ちていた。


『おや?この近くで我が妹の魔力を感じたのだが!?どこだ!ええぃ。こんな邪魔なガラクタ吹き飛ばすか!?』


竜は足元にいる小さな人の事など気にしない。自分に最良である答えを最短で力技で導き出すのもまた竜のなせる技なのだ。

その大きな羽を力いっぱい打てば大地はめくれ上がり一つの国が滅ぶ。当然人がくらえば一欠片も残すことは無いだろう。


『馬鹿か貴様。我を殺す気か?』

風の魔法で瓦礫をどかし、疲れからか人型になっていたリンは突如変身し竜を諌めた。

『おぉ、我が妹よ。こんな辺鄙なところでどうしたのだ?それに……転生したのか?そんな身体が小さくなって……。誰だ?どこの国だ?』

『煩いわ。黙れお前は呼んでない。とっとと巣穴に帰れそして二度とその顔を見せるな。』

「ひっでぇ……まぁ、その気持ちもわかる気はするけど。」

『おぉ。妹よ相変わらず辛辣だな。そう言えばシルフ共に聞いた話じゃ最近勇者と共に戦っていると聞いたが?どうなのだ?』

『喋るな。黙れ、金輪際我に関わるな。』

『……。』


可哀想に。妹にぞんざいに扱われる兄の心境など俺にはわからないが相当凹んでいるように見えた。

『妹よ……俺はお前のことを心配してだな……。』

『煩い。我のことを心配するなら近づくな。関わろうとするな。失せろ。』

『……。』


もはや彼を救う手立て無し。きっと昔から思い込みが激しく、心配性でその大きすぎる力を振るってきたのだろう。それ故に妹に煙たがられた……と。

どうにも救えない話である。

『しかし……良くもまぁ人間を信用出来るものだな。母の仇だと言うのに……。』

『貴様ァ!』

『おっと、口が過ぎたな。ではさっさと逃げるとしよう。』

「……。」


暴風のように来て嵐を振りまき、大きな竜は去って行った。

「クソ野郎が……。」

「まぁ、落ち着けって。取り敢えず、現状をどうにかしよう。」

「……。ああ、そうだな。」


過去に何かあった。だが、それは言いたくないのだろう。言いたくないのなら仕方がない。聞かない事にする。それよりもこんな真似をしてくれたヤツらを許すことは出来ない。

俺一人なら問題ない。運がなかった。それで済む。

しかし、こんな大きな列車事故を奴らはしでかした。リンやルウも巻き込まれた。リンが自分の身を犠牲にしなければ俺達は死んでいた。

「おい、早見。お前何か知らないのか?こんな列車で運ぶような物……。」

「あぁ?俺は何も知らないね。」

「そうか。」

「チッチッ」

「ウーノ……お前無事だったのか。」

少し汚れてはいるが瓦礫の山の中からウーノが走り寄ってきた。

「チッ」

ウーノは箱を持ってきた。その箱には水晶の欠片が入っており、ウーノはそれをアリスに渡した。

「これ……記録水晶の欠片……?」

「チッ」

そうだと言うようにウーノは頷く。

「何かあるのかな……。」


記録水晶にアリスが魔力を流し込むと微かな光を放ち、荒いがコンテナのようなものを映し出していた。そこには小さな檻が置かれ、中には何かがいた。

「……。これが……必要だった?」

「こいつが何なのか分からないがな。」

画像が荒いというのもあるが……何なのだろう……。何かの生き物……だろうか……。

「……隊長。あの貴族様から……。」


嫌そうな顔をしたゲインが何かの端末のようなものを早見に渡す。早見は嫌そうな顔をした後受け取った。そして、幾ばくか会話をすると通信を切った。


「おい、勇者。」

「なんだよ。」

「お前にゃ悪いが今回の一件は国同士が絡んでいるらしい。そんな企みをぶっ壊すから手伝ってくれないか?」

「あぁ。手伝ってやるよ。」

「主、良いのか?我らが手伝ってやる理由も何も無いぞ。なぁ、アリス。」

「あら?私はいいと思うけど。やられたら、やり返す。そういうものでしょ?」

「ルウ……は?」

「私はユウ様の行くところについて行かせてもらいます。」

「……はぁ。なぁ、主……。」

「俺だって同じだ。やられたら……やり返す。」

「……もう勝手にしろ。まぁ、我はついて行くだけだ。」


やられたら……やり返す。

いくらでも屍を積み上げて

道を踏み外してまでも

仲間を傷付けやがったやつを許したりはしない。


静かに怒りを燃やし、拳をにぎりしめた。

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