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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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国の狙い【前編】

おいおい……どうするよコレ……。

脳が思考を放棄し爆音のせいか音が遠い。後ろの車両には……乗客だったもの……というか遺体が安置されていた。機関室のあるこの車両は装甲が厚かったおかげでなんとか無事だが次はどうなるか分からないと……。外には作戦失敗を悟った敵対テロリスト共が空を魔法使いのように飛び、こちらに対する効力を確認している。このままでは危険だ……と身体が警鐘を鳴らす。


彼らに対する有効な方法は2つ。


列車を止めて始末しに行くか、列車の速度を上げて逃げ切るか。である。


「うわぁ、こいつはひでぇな。勇者?大丈夫か?顔色悪いぞ?」

「今魔法の恐ろしさを知ったところだ。で?どうする気だよ軍人。民間人を巻き込むんじゃねぇよ」

「民間人?お前さんが?はっ。冗談よせよ。お前さんは立派な戦力だよ。」

「この状況下で呑気なやつだな。」

「主、次が来るぞ!?」

「クソっ……」

火球が迫ってくる。その一つ一つが即死の威力で放たれ、機関室のある車両に衝突する……………………。


いつまで経っても衝撃が来ない。外を見やれば列車を通り抜けた辺りで火柱が上がり、列車には1発も当たっていなかった。

「いやぁ間に合ってよかった。」

「……ラスティア……遅い。」

「ごめんごめん。」

ラスティアと呼ばれた白金の髪をした軍人が突然現れる。第一印象は不思議な少女だった。

気配がまばらなのだ。

どこにもいるし、どこにも居ない。そんな不思議な雰囲気を彼女は放っていた。

「何者だ貴様。」

「ん?あぁ。私はラスティア。よろしく。えっと……」

「リンだ。」

「そう、リンちゃん!凄い綺麗な鱗だね」

「なっ」

「おい、説明しろ軍人。」

「あぁ、そういや名乗ってなかったな。俺は早見。そっちの白金がラスティア。こっちのちっこいのがゲインだ。」

「……隊長。ちっこいって言ったな?言ったよな?」

「あ、や、やめろゲイン。悪かったから。ここで爆破魔法はやめろ。最悪全員死ぬ。」

「……。大丈夫。隊長のお腹の上くらいで再小規模にすれば上半身を粉々に吹き飛ばす事くらいは出来るからそうすれば私より小さくなれるよ。」

「悪かった」

「ふん」


どうやらゲインというあの魔法使い。相当ヤバいやつなようだ。目から下は仮面により隠れているがおそらく相当怒っている。

「あーそういやラスティア。ビショップの嬢ちゃんはどうした?」

「あぁ、あの勇者様?機関室の中だよ。ちょっと魔力を借りてる。」

「……。なぁ、早見。この車両なんか妙じゃねぇか?」

「何がだ?勇者。」

「この車両、まだ上の階層あるだろ。上には何がある?」

「上?」

「そもそも今回テロリスト共が攻めてきたり、殺し屋が紛れ込んだりしていた理由はなんだ?何故奴らは来た?餌があるはずだろ」

「あぁ、そうだな。だがそれはおそらく軍事機密だ。勇者にそれを話す必要はねぇ。」

「そうか。ならいい。ただ。一つだけ言っておくとだな。アヌザだっけ?さっきの魔法使いは違うみたいだぞ?」

「何を言ってるんだ?そんなはずねぇだろ。」

「主!ルウ!衝撃に備えろ!」

「は!?」


リンが飛びつき、バランスを崩して倒れ込むと次の瞬間ガタガタと列車が揺れ始め、しばし浮遊感を味わう。身体が本能的に危機を悟り衝撃を逃がそうとする。数秒にも思える滞空時間を感じながら列車は轟音と共に大地に衝突した。


…………。衝突してから……。何分たったか……。目を覚ますとリンが覆いかぶさるように変身し瓦礫を防いでいた。

「痛てぇ……。」

『大丈夫か?主。』

「……何があった?」

『先程の火球の流れ弾が線路を破壊していたのだ。そして、脱線した。』

「あぁ、なるほど。ルウは無事か?」

『あぁ。まだ気を失ってるようだが怪我ひとつない。』

「そうか。リン、お前は怪我してないのか?」

『我は竜種だぞ?この程度我の自己再生で一瞬だ。』

「そうか。ありがとう。助かった。……。取り敢えず……脱出するか。」

『全部吹き飛ばすか?』

「やめとけ。あの軍人共に死なれたら文句を言われそうだ。」

『ハヤミと言った男はそこで死んでたぞ。』

「あぁ。あいつは不死身だからな。」

「おーい。勇者ー生きてるー?」

「おい、リン。アリスは?アリスはどうなった?」

「大丈夫よ。私は魔法でどうにかなるもの。」


頭の上で声がした。身体がうまく動かないため目線だけ動かすとそこには足があった。

「おはよう。随分と衝撃的だったわね。」

「あぁ。瓦礫に埋もれたのは生まれて初めてだ。」

「怪我してない?」

「大丈夫。クリスは?」

「お嬢!お嬢!どこっスかぁ!お嬢!」

「まだなんか探してる。」

「はは。行ってやれよ。」

『ぬん』

リンが風を操り瓦礫を宙に浮かせる。相当な魔力を消費しているはずだが涼し気な顔で浮かばせていた。俺はその隙間を潜り、瓦礫の外に出る。

『はぁ、疲れた。』

「お疲れさん。助かったよ。」

「奴らやはりなにか狙っていたようだな。我らが死んだと思ってなにか持って行ったぞ」

「追えるか?」

「あぁ。魔力を追えば追える。だが……」

「行く手段がない……と?」

「そうだ。あと、面倒なのが……来る。」

音界がアラームを発し、視界内に特大の魔力反応が現れる。それは凄まじい速度でこちらに向かっていた。


「もしかして……」

「そう。兄だ……。」

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