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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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不死身の兵士と吟遊詩人

拳銃をそう何度も見たわけではないが意識が集中したせいかスローモーションのように見える。一般的な自動式拳銃で男は頭を撃ち抜かれた。少し柔らかい弾ならそのまま頭蓋骨の裏側で脳みそをかき混ぜるのだろうが、そんなことは無く。貫通して脳漿を床にぶちまけていた。


「おいお前、仲間……じゃなかったのか?」

「……残念『仲間』じゃない。……上司と、部下」

「何故殺した?」

「……治療。」

魔法使いの指さす方を見てみれば黒い靄に包まれた男が横たわっていた。黒い靄が次第に薄くなると男は頭を振りながら血のついた顔で起き上がった。

「ったくひでぇ事しやがる。にしても腕上げたなゲイン。」

「……隊長、脳の一部消えちゃった?」

「うるせぇ。」

男は何一つ不自由なく立ち上がる。そこには肩を砕かれ、肘を潰された男の姿は無く。多少血に染まった軍服を着た男が立っている。


車内は再び静寂に包まれる。


「……。隊長。彼ら、どうするの?」

「お前ら……何者だ?ただのジャック犯如きがあんな体術使えるとは思えねぇぞ?」

「だから言ってんだろ阿呆が。勇者だ勇者。ポーンのな」

「は?勇者が無断乗車だと?普通にビショップの勇者みたいに乗ってくりゃ良かったのに」

「オタクの国から嫌われてるからな。それだと乗せてもらえないだろうって事で悪ぃが無断で乗ったんだよ。」

「……。そちらのお嬢さんは?」

「リンだ。」

「ルウです。鬼人の巫女です。」

「……巫女付き……勇者……。隊長、本物」

「な……すまなかったな。」

「わかってもらえて何よりだ。それで?状況は?」

「武装テロ組織アヌザとかいうグループがこの武装列車を占拠。乗っていた軍人数名を射殺後機関室と、操縦室を一時的に占拠。今は操縦室を俺の部下が奪取した。」


アヌザ……ねぇ。

「奴らの狙いは?」

「分からん。」

「占拠して何か言ってなかったのか?」

「あぁ、特には何も。」

「……いや、隊長。言ってたよ。」

「え?」

「『我々はこの列車に乗った軍人を捕虜とし王国に不当逮捕され幽閉されている同志の解放を求める』って言ってた。」

「へぇ。なんともオーソドックスな話だな。これで実は金儲けして仲間の事はどうでもいいとか言い出したらハ○ウッド狙えるぜ?」


第一印象はチグハグ。

後方車両ではこんなにも徹底的に浸透作戦として活動しているのに……わざわざ声を出すなんて。おかしい。

そう、もう1つチームがいる。

「クスクス。」

「リン、変身しとけ。ルウ、後方3つ目の木箱の中だ!」

「応。」

「はい。……。中に何かいますね。」

「軍人共、前の列車にいけ。ここは俺らでなんとかする。」

笛で攻撃力と防御力、速度を上げる。バフがかけ終わるとリンが目にも止まらぬ速さで近づき、木箱を尻尾で粉砕した。

「ケケッ随分と荒っぽいまねするじゃねぇノ。」

破壊される寸前に飛び出したのか両手にナイフを持った小柄な何かが笑う。ボロボロのマントを被り、顔は仮面で隠れていた。声から察するに男……。

「隠れる必要はなかったろ?でも隠れてた。お前は何者なんだ?」

「あぁ?俺はしがない殺し屋さ。この列車にいる例のブツを殺すのが目的。」

「そこに転がってた死体はお前がやったのか?」

「あ?あぁ。俺は情報が欲しかったのにこいつら知らされてなかったからよ。殺しといタ」

「へぇ。そうかい。で?俺達はどうする?」

「あんたを殺す?ハハッ冗談はよしといてくれヨ。お前さんは依頼されて無いしナ」

「あっそ。じゃあ失せろ。この列車でターゲットを殺すのは無理だ。」

「ほほう?それは何故ダ?」

「教えてあげねぇよ。」

「ヘッまぁ、俺も期日までに殺せりゃいいからナ別にここで殺る必要はねぇ。じゃあなご同業。」


男は自身の背後を切りつけるとそのまま列車を切り裂き、時速50キロくらいで走っている列車から飛び出して行った。

「うわっマジかよ。」

「あの男……ただならぬ気配だったな。」

「えぇ。」

「まぁ、ターゲット次第ではまた会うかもしれないな。」

「もう会いたくは……無いですね」

「取り敢えず、前に行くか。」

壊れかけた車両から脱出し、機関室へ向かう。道中何体かの遺体を見たがどれも射殺体だった。


「アヌザの面々は全員死亡ってとこか?」

「いや?主。外を見てみろ。なんか飛んでるヤツがいるぞ?」

そう言われて外を見やれば赤いローブ姿の連中が空を飛びながらこちらに火球を投げつけていた。

「火球作成!発射!『火球』!」


火球が大量に生成され、後方に次々と着弾していく。続くようにして爆発音が聞こえ、脱線した車両が吹っ飛んで行った。

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