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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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悪魔のいる列車

長い旅路をショートカットする為、列車に無断乗車を試みたはいいものの、どうやら先客が居たらしいということに俺達3人は気づいた。というのも恐らく車掌らしい服装の男と何人かの乗務員の遺体が後部車両に転がされていたからだ。どの遺体もまずは喉を刺され、声を挙げられないようにして殺されている。そして処刑場は恐らくここ。床にベッタリと付いた血とその血の付いた靴が置いてある。

大きな木箱の上には合羽のようなものが置かれ、それも満遍なく血が付いている。


「……ひどい。」

「……徹底してるな。こりゃだいぶ浸透されてると見て間違いない。とりあえず、ウーノ、探ってきてくれ。」


チッチと元気よくうちの密偵は走り抜けて行った。

この様子なら既に運転手は敵組織の人間にすり変わっている。そう考えるとアリス達が心配になるが彼女も勇者だ。どうにかしてくれるだろう。

「リン、列車を壊すなよ?ルウ、この遺体達清められるか?」

「えぇ。簡易的な祈祷なら出来ます。」

「頼む」

「はい。」


暫く経つと密偵が見取り図を咥えて戻ってきた。

「チッチチ」

広げると客室に印が付けられていく。赤は遺体。黒は生存者。前の方に数人。後ろの方というか隣の車両に生存者数人。予想の半分以下であった。


「少ないな。」

「そうなのか?」

「まぁ、軍の幹部とその取り巻きを狙ったとするならまだ分かるが……。それでも兵員が足りないだろ」

「極秘で何かやっていたと言うのか?」

「もしくはこいつらをおびき出すための罠……かもな。」


考察していると急に扉が開かれる。慌てて隠蔽のスキルを行使し隠れるが、入ってきた人物はこちらの存在に気づいているようで一人喋り出す。


「おや?確かに人がいたと思ったんだが……。」

「……隊長、誰か、いた?」

「いや?居ねぇみたいだな」

「……そう?」

「取り敢えず先頭まで戻るか。ラスティアにあの勇者を任せておけないしな。」

1人は男の声。もう1人は……よく分からない。しかし、どちらの勢力なのか……。確かめてみる必要があるかもしれない。


「出る気か?」

「隠れていても仕方ないだろ。」

「だが……。」

「そうですよ。危険です。」

「チッチッチー」

「おい、主。ウーノが軍服の上でグルグルしてるぞ?」

「え?」

揺れのせいで崩れたのか木箱から漏れ出た軍服の上でクルクル回っている。

「軍人……だと言いたいのか?」

ウーノはピタリと止まると頷くような仕草をした。

「なるほど。軍人だから列車ジャック犯じゃねぇとは言えないが……。話をし……っち」

「見つけたぜ残党風情が!」

「ちょっなんで……。」

「あぁ?うるせぇ。」

「……。隊長下がって!」


いつの間にか近づいていた軍服姿の男がすっと身を翻すとすぐ近くで爆発が起きた。

「クソッタレが!」

即座に伏せたから何とかなったが爆発の威力は凄まじく、目の前の木箱を吹き飛ばし、金属製の車体を大きく歪ませている。それよりも今の一瞬で魔法の力量差を理解した。


何故なら今の魔法は()()()だったからだ。爆破魔法の事は知らないが相当の実力者であることは確かだ。

「待てって!」

「クソっ外した。」

「ゲイン。下がれ。」

隊長と呼ばれた男が肉薄する。拳を固め腹部を狙ったフック。

敢えて金属鎧で受けて膝と肘を使って挟み込みへし折る。

「グッ」

「あぶねぇな!」


少し下がって膝下を狙ったローキック。先ほどのダメージのせいか少し狙いのそれたそれを難なく躱し掌底を方に叩き込む。ゴキッという鈍い音と共にダラりと肩が垂れる。


「いってぇ」

痛みで仰け反った瞬間に鳩尾を狙って打ち上げる。殺す気なら心臓の下あたりに到達するように打ち抜くが今回は殺さずに気絶を狙う。

「……隊長?」


数秒の攻防で軍服の男はノックアウト。1人では分が悪いと判断したのか魔法使いの方も手を止めた。

「……隊長が負けた?ぷぷッ後でからかってみよ。」

「落ち着け。俺はポーンの勇者だ。お前らと争う気は無い。」

「……えー勇者が一般軍人をシバキ倒しちゃったの?」


魔法使いは黒いフードを取った。白い髪がすきま風に揺れ、銀色の双眸がこちらを見据える。


「勘違いして殴ってきたのはお前らだろ?俺は応対しただけだ。」

「ユウ様?些かやりすぎでは?」

「いや、ルウよ。この男は主を確実に殺すつもりだったぞ?むしろ大怪我で生かされてる分主の優しさが垣間見える。」

「……。」

「……まぁ、今怪我されても後で困るから……。」

白髪魔法使いは拳銃のようなものを取り出すと軍人の男の頭に照準を合わせ引き金を引いた。

『パンッ』と小気味良い音と共に火薬のにおいが立ち込め、弾丸が男の頭を抜けていった。


ヘッドショット。確実に死亡である。

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