番外編【特殊作戦群】
ウルシア王国 エデンガルド地方領主館の執務室では書類の山が一人の男を埋めていた。
そこに軍服姿の男がやってきた。
「大変そうだな。」
「あぁ。大変だよ。手伝ってくれない?」
「いいや、俺はお前にプレゼントが有るんだ。ほれ。」
机の上に書類が追加される。
「鬼だね君は」
「鬼?俺はただの転生者だが?」
「知ってるよ。それで?なんの用?」
「西で不穏な動きがある。どうやらグラブ人が裏で糸引いてるみたいだ」
「ふーんそれで?」
「なんだ。いつもなら調査してこいくらい言うと思っていたが違うのか。」
「いや?行ってきてもらうけど、最近ちょっと物騒でね。簡単に言うなら戦争が起きそうな感じ。」
「そうか。」
「まぁ、ポーンとビショップとはいえ勇者を2人抱えてる国はウチだけだからね。妬みや僻みが火種になってもおかしくはなかった。上は勇者にも戦線に出て欲しいとか抜かしてたけど……ね」
「難しいだろうな。」
「そう。第一災厄来るのになんだ争うのかほんと意味わからないんだよね。ここは手を組んで全て終わった頃に弱ってるところを叩くべきでしょ。」
「お前も大概最低だな」
「うるさいよ。んじゃ次会う時には報告書よろしく。」
「あぁ。分かった。」
男はテキトーに返事をすると割り当てられた自室へ戻る。扉を開ける前に中の気配を探ると2人ヒットする。
「お前ら……何故ここにいる?」
1人は本棚の本を勝手に広げて読書に励み、1人は執務机に座り書類を書いていた。
二人とも見知った顔というか直属の部下である。
「あ、隊長。どうも。」
「隊長……元気?」
読書をしていた方がこちらに顔を向けると同時に隣に立つ。相変わらず心臓に悪いがもう慣れた。
「ラスティア、お前は何をしていた?」
「隊長の部屋で読書でありまーす。」
おどけた調子のラスティアは白金の髪を弄りながら姿を消す。そして背後に現れるとそのまま首を絞めにかかる。しかし、簡単に振りほどけ、ケガしないようにベッドに投げ飛ばす。
「あいた!」
「ゲイン?室内で爆破魔法はやめろ。始末書が増えるぞ」
「うっ」
執務机で始末書を書いていたゲインは構築途中の魔法を投げ出し再度始末書に向き直る。
ウルシア王国エデンガルド地方特殊作戦群223小隊小隊長「早水郁翔」は早くも疲れ果てていた。
ラスティア・フォーゲルン
戦災孤児。保護された教会にて虐待を受けていた。ストレスが原因か戦災が原因かは定かではないが特殊能力を発現。教会への強制捜査時に保護。身柄はハヤミ中佐に渡され、223小隊の隊員になる。階級は少尉。
ゲイン・ローレンツ
世間を恐怖のドン底に陥れた爆弾魔。爆破魔法に精通し破壊した建物の数は200を超える。元犯罪者。こちらも司法省から特例で223小隊に配属。階級は少尉。
「整列しろテメェら。」
「いたた……。」
「まだ……。書き終わってない。」
「ゲイン、後にしろ。まずは仕事の話だ。」
「仕事!? 」
「あぁ。西のザリューでグラブ人共が良からぬ企みを抱えてるみたいでな調査だ。」
「でいつもの如くどんパチやるわけだ。」
「そうかもな。」
「それなら早く準備しなくちゃ!」
「待て。まだ正式な辞令は出ていない。」
「えー」
遠足に行く訳でもないのにはしゃぎだすラスティア彼女の能力は確率を操作するというもの。彼女は何処にでもいてどこにも居ない。早水が観測して初めてその場所にラスティアはいる事になる。弾幕の中ですら彼女は弾の当たらない確率に身を委ねる。戦場で彼女に致命傷を与える事は難しい。
ゲインは優秀な魔法の素養がある。ただ本人が残念なので今も始末書を書かされている。
影では(残念小隊)と呼ばれているがチームワークが悪い訳では無い。それぞれ適材適所を弁えて任務に当たっている。
「それで?具体的には何をするの?」
「侵入して証拠掴んで爆破?」
「爆破まではしないが概ねそんな感じだな。詳しくは移動中に話す。」
旅装を整え、支給品を確認する。今回は公式な命令書はない。任務中は国からあらゆる支援が打ち切られるので今準備を整えておく必要がある。
装備を整え、列車のチケットを確認するとボックスシートに座った。
「ねぇ、早く教えてよ隊長。」
「あぁ。今回は西の街ザリューで不穏な動きをしているグラブ人のアジトに侵入。奴らこれから戦争を仕掛けようとしているからな。その前線基地となり得るアジトを叩く。」
「……。それって限りなく違法じゃないの?まだ何もやってないんでしょ?」
「ん?あぁ。違法だな。バレれば。」
「バレなきゃ犯罪じゃないと?」
「そういう事だ。大人の世界は難しいんだよ。」
「……隊長……僕らと大して年齢変わらないよね。」
「うるせぇ。俺たちは上の命令に従って暴れりゃいいんだよ。」
「軍人らしくないね隊長。」
ワイワイガヤガヤとガタガタ揺れる列車に乗って目的地を目指す
そんな様子を1匹のネズミが見ていた。




