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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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次の街へ

夢……だ。夢とわかる夢。確か明晰夢といったか周囲は真っ白な空間に閉ざされ、目の前には何かが映っているモニターがある。

「……。」

少しだけ覗いてみればそこにはどこかの街が映り、そして燃えていた。

人も獣人も家も荷馬車も……。ありとあらゆるものが燃えその様子はさながら煉獄の業火のようであった。

「ひでぇな。」


画面の向こうだからか、それが夢の中だからか、現実感が薄く実感がない。ただ、見ていて不愉快だった。

「戦争……か?それとも……。」

映っている映像をよく見てみれば炎を操る何人かが街に火を放っているのを確認した。全員揃いの軍服を着て、街に向けて炎の球を発射している。映像が魔術師に指示している男の顔に近づいていったところで現実に引き戻された。


「……今のは……。」

目を覚ますとそこは宿屋だった。明日の出発に備えられた食料や

旅装が置かれ、右隣には1本の角が呼吸と共に上下に動いている。

「……。」

冷静になってきた頭で考えてみれば、森で一悶着あった後暫くレベリングを行い、予定通り明日に向けて準備を整え、寝たのだった。


「主よ。」

「ん?」

左隣で寝ていたはずのリンがいつの間にかベッドに潜り込み、隣にいる。

「良くない夢でも見たのだろ?」

「分かるのか」

「我は主の従者だからな。ある程度は伝わってくるのだよ。」

「じゃあルウにも伝わっているのか?」

「あぁ。だが、今回の夢はルウの予知夢のようなものだ。恐らく従者間の繋がりが主に逆流したのだろ。」

「ふぅん。あれがルウの夢か」

「あぁ。星よみの巫女の夢は少し先の確定した未来を見ると聞いたことがある。だからきっとあの街は近い未来焼かれる運命にある。」

「少し先って……期間はわからないのか?」

「あの映像にその日がわかる内容があればその日に合わせることが出来るだろうが我らにはもう分からない。」

「そうか。」


きっと街が襲われた時も第1の災厄の時もルウは見たのだろう。

「それはそうと、どうしてここにいる?自分のベッドに戻れよ。」

「あっちは寒いのだ。」

「……寒いのほんと苦手だなお前。冬とかどうするんだよ。」

「春が来るまで洞窟で過ごすか魔力を放出して身に纏う。」

「今後者の手段を取ればいいだろうに」

「街の規模にもよるがここで魔力を放出したら間違いなく結界が作動してしまうぞ。」

「へぇ。やっぱそういう設定あるんだ。」

ゲームでは街中で魔物と出くわさぬよう湧出禁止エリアにしていたりするが外から中に持ち込まないように結界を設けるとは……。中々の仕様である。

「設定?まぁ、そういうものがあるからな。魔物はそう簡単に街には入れん。」

「じゃあなんでリンは入れてるんだ?」

「魔力の放出を絞っているからだ。今の放出具合ではただのリザードマンと大して変わらん。」


努力の賜物だ!と嬉しそうにベッドからはみ出した尻尾をタシタシと叩く。確かに、見た目は人間に近いが尻尾や爬虫類的な目は変えられず非常に人間に近いリザードマンという扱いをされている。見た目はルウよりも少しお姉さんとなっているが実年齢はまだ0歳である。


翌朝、朝食をルウが作り、席に着くとルウが急に切り出した。

「ユウ様、次の災厄まで何日でしょうか?」

「次?あぁ、あと2ヶ月位だな。54日だ。」

「2ヶ月……。海の月ですね。なら符合します。次の災厄の街がわかりました。」

「まさか街ごと焼かれてる街じゃないだろうな?」

「え?何故それを?」

「昨夜我らもルウの見た夢を共有したのだ。」

「ええっ!?そんな事が!?」

「まぁ、起きたな。それで場所は?」

「周辺地域の地形から恐らくカルネア山脈の麓にあるザリューという街かと。」


ルウが簡単な地図を描き、説明する。ここから西に大分離れた場所であり、旅路は過酷になる。人の足で行くなら2週間。疲れや休憩を挟むなら3週間くらいかかる。

「あぁ……カルネア山脈か……。すまぬが今回は背に乗せていくことは出来ぬ。」

「ん?あぁ。別にそれはいいが。何故だ?」

「カルネアの山には……兄がいて……気づかれると色々面倒だから……。」

「へぇ。兄がいるのか。」

「……あぁ。あいつとは関わり合いたくない。」

「なるほど……?」

「じゃあ予定通り王都に寄って武器を調整したあとザリューに向けて出発する。」

「はい。ありがとうございます。」

「王都までなら乗せていけるぞ」

「あぁ。じゃあ頼む。」

「おうともさ。」


方針も決まり、朝食を平らげた頃アリスとクリスが食堂へやってきた。

「おはよう〜ルウ、リン。ユウ。」

「おはよう。アリス。」

「おはようございます。」

「お、おはよう。」

「はよっす。皆さん朝早いっスね〜お嬢も見習ってください。」

「うるさいわね。いいじゃないたまには。」

「お嬢の場合たまにって頻度じゃないっスよ。」

「起きる時は起きてるからいいの。」


相変わらず仲良いなあの二人。

「あ、そうだ。ユウ、マーリンから言伝よ」

「あ?聞きたくないからわざと切ったのに。」

「そうやって切ったから私の方にしわ寄せが来たんでしょうが!」

「で?なんだって言うんだ?あの引きこもりは」

嫌々ながら聞く素振りを見せるとアリスはマーリンのくれた端末を取り出し、再生した。

『やぁ引きこもりで悪かったね。』

「なんだあいつ未来予知でもできるのか?」

『どうせ君の事だ。私からの言伝と聞いてすぐさま引きこもりと言うに違いないと思っての言葉だがあっていたかな?』

「大正解だよ引きこもり。」

『ふふっまぁ、言伝と言っても大したことではないヨ。』

「なら言うな。」

『君はきっと次の災厄の街へ向かうのだろ?なら、アリス嬢も一緒に連れて行ってあげて欲しい。理由は後でわかる。以上だ。』

「……マーリン……。」

「え?は?準備してないわよ!?」

「あー昼までに準備してくれ。一旦王都に寄って武器の調整後出発する。」

「わ、分かった。」

「え?また黒竜のお嬢さんの背中スか!?えぇ……。」

「大丈夫だ。王都までだから。気絶させときゃすぐだ。」

「え、えぇ……。」


こうして、次の街へ行く準備を整え、旅立つ事にした。科学が進歩した街と聞いていたが、それらしいものは見つからなかったな……。と少々物足りない感じがしたが少しは羽を伸ばせたような気がする。


次の街と聞くと想像で胸が膨らむが、あの悲惨な光景が既に確定した未来の姿となった今早めに向かって対策を考えたい。


逸る気持ちを抑えて、アリスの準備が終わるのを待っていた。


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