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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
15/27

勇者の異能

更新が遅くなり、すみません。

次回は3月4日の予定です

白い……どこまでも白い部屋の中でマーリンと名乗った男が軽やかに喋っている。それ以外の者達は口を閉ざし、ただマーリンのおしゃべりが止まるのを待っていた。

「質問……いいか?」

「おやおや?桜馬くんだったね。何かな?」

「先程から気になっていたが何故キングの勇者に猿轡をはめたんだ?あれじゃお前の言う『会議』は出来ないだろ。」

「んーあーあれね。気にしなくていいよ。彼傲慢で我儘で自分の思い通りに動かないと怒るタイプだからネ」

「……。」

「時に桜馬君。君は私達が異世界を渡る時に渡された『ギフト』はご存知かな?」

「?ギフト?なんだそりゃ。」

「え?そんなのも知らないの?流石は歩兵ね。」


高慢な女王(クイーンの勇者)の発言に俺は眉根を寄せた。

「なら教えてもらおうか女王様?」

「えぇいいわ。特別に教えてあげる。まず私のギフトだけれど私は私に服従した者をなんでも操れるの。キングは私と似ているけれど彼の方が強力よ。」

「どうもありがとう。でも次からはもう少し渋った方がいい。お互い敵か味方か分からないのに情報を渡すのは愚の骨頂だぜ?」

「なっ!?」

「ハイハイそこまで。どうせ私が喋るから良いよ。キングのは言葉を事象とする能力って奴さ。これで私が彼に猿轡を噛ませた理由が分かったろう?まぁ、結構制限があるみたいだけれどね。」

「あぁ。なるほどな。」

「え?それじゃ私も貰ってるの?ギフト。」

「あぁ。もちろんだとも。ビショップの勇者は全ての言葉を理解する能力が与えられている。だから世界の言葉たる魔法が全て使えるのさ。」

「な、なるほど。」

「それじゃマーリンお前のギフトはなんだ?大方『言葉』に関するものなんだろ?」

「くくくっ。察しが良くて助かるよ。そうだとも。私のギフトはキングと似たようなもので『言葉』を物として具現化させる能力さ。」

「違いは何なんだ?」

「彼は『言葉』そのものを事象として顕現させられる。例えば彼が『この塔は壊れる』と言えばこの塔は問答無用で破壊される。」

「……なんだそのチート。」

「一方私のは『絶対に壊れない塔がここにある』と言って壊れない塔を創り出す。彼はオールマイティだが私は『物体』に限られる」

「なるほど?」

「ナイトは『言葉』を使った強力な自己暗示って感じだ。『俺は最強の勇者』と自身に思い込ませ、驚異的な身体能力を獲得できた訳だ。」

「へぇ。それじゃ俺は?」

「……。」


マーリンは微妙そうな顔をした。議場は静まり返り、リンの寝息が聞こえてくる。後で話し合いが必要なようだ。感覚が鋭いルウが咄嗟にリンを起こそうと奮闘するがアホな竜は中々起きない。

「君は……実は分からないんだ。」

「分からない?何故だ?」

「何でだろうね。この塔は中にいる者のステータスをある程度表示出来るんだけど君のは一向に表示されない。」

「ちょっとマーリン?失礼ではなくて!?人のステータスを覗き見するなんて!」

「まぁまぁ。これも必要なことなんだよ。今後の災厄に備える為にね。」

「あぁ、そうだった。元々その話をしに来ていたな。」

「そうそう。」

「災厄について君達はどこまで知っているのかな?」

「期日が決まってて襲来する災害……?」

「今回は悪魔だったな。首魁はどうだったんだ?」

「弱かった。」

「あそ。それで?マーリンとキングとクイーンは何やってたんだ?」

「私は塔の中で引きこもりだよ。君たちの戦いの様子はずっと見てたけど。」

「傍観者かよ。クイーンは?」

「国の役人たちと会議をしていたわ。」

「ウーウー!」

「彼も同じようなものだよ。決済が溜まってたみたいでねそれの消化をやってたよ」

「へぇ。じゃ俺ら3人以外は戦ってなかったわけか」

「言い方にトゲがあるね〜適材適所だよ。彼ら二人の決済が無ければ復興は遅れていたよ。支援物資の決済もキッチリやってたからね。」

「なるほど。そりゃ悪かった。ではそれを踏まえてマーリン、お前は?」

「恥ずかしながらなーんにもして無いよ?」


こっちは命懸けで戦ってたというのに……と思うと怒りを通り越して呆れてくるがマーリンはこちらを気にすることなく会議を続ける。


「今回は星読みの子達が前もって予測できていたおかげで何とかなった。でも、次はどうなるか分からない。だからこんな物を用意しよう。『勇者同士で連絡が取れる物』だ。」


マーリンは掌の上で言葉を具現化すると500円玉位のバッジの様なものを投げて寄こした。

「これがあれば私の魔力回路を通して世界中、ありとあらゆる場所で通話可能だ。」

「携帯みたいなもんか」

「携帯?……まぁ、そんなもんだ。メッセージを伝えたい相手を想像しながら魔力を流せば問題ない。大いに活用してくれたまえ。」

「ありがとさん。」

「さて、マーリン?私はすぐにでも片付けなくてはならない案件が溜まってますの。さっさと解放して貰えませんか?」

「うー!うー!」

「OK。OKでは今回の話し合いはここまでかな。恐らく我々後方支援勇者は余り前に出られない。次回も君ら3人に任せることになるだろうけど」

「分かった。兵隊は兵隊の仕事をしてやるさ。」

「それじゃ次の災厄はよろしくね。私も出来うる限り支援するからその時はよろしく。」

「あぁ。」


マーリンは言いたいだけ喋るとパチンと指を再び鳴らし、消えていった。それと同時に意識も遠のき、取り戻した時には竜形態のリンが腹の上で丸まって寝ていた。


「おい……リン?ちょっと起きてもらおうか?」

「何だ……主……我まだ眠……い。」

「おい、起きろ。移動するぞ。」

「ユウ様、どこへ?」

「昨日派手にやったからな。街から少し離れたところでお客さん対応だよ。」

「危険ですか?」

「さぁ、どうだろうな」

昨日の報復だろうか?生存者はいないはずだが……?いや、俺の知らない魔法ということもあり得る。


「おっと、動かないで貰おうか?動けば外にいる連中に爆撃魔法を放つよう言うが?」

「……。」

ドアの所に既に男が立っている。鋭い眼光を放つその目に嘘偽りはなく、ウーノも部屋の端で首を振っている。

「ノックもなしに来るなんてどんな教育受けたんだ?」

「あぁ、生憎スラム育ちでな。マナーなんて習ってねぇんだよ」

「マナー以前に人としての問題なんだがな。」

「うるせぇよ。お前、昨日の夜どこに居た?」

「は?」

「昨日の夜どこにいたんだよ?」

「どこだっていいだろ?つーかお前誰よ?」

「俺はここらを取り仕切ってるアーガスの幹部『プルーシュ』だ。」

隙のない構えで名乗りを上げたプルーシュは紙を取り出し放った。それは写真のような紙だった。

「うちの部下が昨日この辺りで仕事しようとして全員殺された。」

「そらご愁傷さま。悪いがこの後街の近くでレベリングをするつもりなんだ。俺らは関係ないから。他を当たれよ。」

「この絵に写ってるのはお前だろ!?」

「証拠は?この写真以外で」

「……そうか。邪魔したな。」


男はじっと俺の目を見つめると諦めたのか去っていった。

「何じゃあいつら」

「さぁな。取り敢えずレベリングしに行くぞ。疑い深いようだから。このままじゃ終わらないだろ」


新たな厄介事の雰囲気を感じ、今後の戦闘はやはり後衛に徹しようと決意した。

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