最初の出会い〜六年前〜
クナギが僕の中に入って一年が経った。
最初の頃は何かと大変だった。
朝起きれば体はクナギになってるし、クナギが神主に説教したり、あとは両親に説明するのも大変だった。
そして今年の儀式の日が来た。
クナギ
『今年はちゃんとした儀式になるはずじゃ』
京平
「それを言われると僕の時は失敗していたみたいだね」
クナギ
『みたいじゃのうて、失敗していたのじゃ』
京平
「そうなの?」
クナギ
『神主の呪文は意味が無かったのじゃ。妾がオヌシに入れたのは陣のおかけじゃ』
京平
「陣ってあの幾何学模様のあれ?」
クナギ
『そうじゃ。あれは初代神主が書いた陣なのじゃ』
京平
「そうなんだ…」
クナギ
『そろそろ時間じゃろ、行くのじゃ』
京平
「そうだったね」
僕は鏡をしまい、家を出た。
行き先は神社だ。
神主さんから許可をもらい本堂の儀式の様子を見れるのだ。
神主
「京平よ、よく来たな」
京平
「はい。クナギから監視するように言われていますから」
神主
「クナギ様が見られておるのか!これはますます失敗は出来ないな」
京平
「頑張ってください」
神主
「うむ、お主はそこに座って見ておいてくれ」
僕は神主が用意した座布団に座り、始まるのを待った。
少しすると神主が一人の少女を連れてきた。
神主
「では、そこに立ってじっとしておいてくれ」
少女
「はい」
少女は幾何学模様の描かれた床の上に立った。
神主
「では始めるぞ」
神主が呪文を唱え始めた。
僕は鏡を取りだした。
クナギ
『今年はちゃんと唱えておるようじゃの』
クナギは神主にちゃんとした儀式のやり方を徹底的に教え込んでいて、神主は教えられた通りにやっているようだ。
呪文が終わりに入ると、床の幾何学模様が光だした。
少女
「え?えぇぇ!?」
光る床にびっくりしたのか少女は叫んでいた。
そしてその場に座り込んだ。
神主
「…、ふぅ」
クナギ
『馬鹿者!気を抜くでないぞ!』
京平
「え?」
クナギが叫んだが鏡の中なので僕以外には聞こえなかった。
クナギ
『今すぐあの娘を拘束するのじゃ!』
京平
「え?何で?」
クナギ
『説明は後じゃ、はよ拘束するのじゃ!』
京平
「わかったよ」
僕は自分の霊力を縄みたいにして少女を縛った。
京平
「意外と維持が難しい」
クナギ
『今は縛るだけでよい。今のうちに妾と代わるのじゃ』
京平
「わかったよ」
鏡に手を伸ばした
京平
「え?」
何か強い衝撃を受けて少し飛んで、手に持っていた鏡を落としてしまった。
京平
「ぐっ」
僕は起き上がり、鏡を拾おうとしたが、誰かが蹴って遠く飛んでいった。
僕は鏡を蹴った本人を見た。
京平
「…何で?」
そこに居たのは縛った少女だった。霊力の縄は既に無くなっていた。
少女
「ねぇ、ミィと遊んで」
京平
「え?あそ…」
言い終わる前に少女に蹴られて、柱に当たった。
京平
「ぐっ、ばっ」
身体中に激痛が走り、床に落ちた。
少女
「まだ壊れないでよね〜、ミィは満足してないんだから〜」
…狂ってる。
僕はそう思い、痛みに耐えて立ち上がろうとした。
少女
「立つの?なら手伝ってあげる♪」
少女は僕の髪を掴み無理矢理僕を立ち上がらせた。
少女
「じゃあ寝ていいよ」
腕を掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。
今度は壁に当たり、床に落ちた。
薄れていく意識の中、目に見えたのは怯えて隠れている神主の姿だった。
僕はそのとき初めて怒りを覚えた。
神主は何もしないで隠れているだけだなんて…
何だか今ならクナギが神主に厳しく当たっていた理由がわかるかもしれない。
消えそうな意識が怒りで元に戻り始め、床に手をついて起き上がった。
少女
「あれぇ?まだ立つの?」
京平
「……」
少女
「じゃあ、死んで」
京平
「…邪魔」
僕は近づいて来た少女を殴った。手のリーチは僕の方が長いから先に当たった。
少女
「え?え?」
少女は驚いて、殴られた頬を擦っていた。
京平
「だから邪魔!」
霊力を手に集中させて、少女の腹に手を当てて、集めた霊力をふづけて吹き飛ばした。
少女は柱に当たり、床に倒れた。
僕は神主が隠れているところに行き、神主を引っ張り出した。
京平
「ねぇ神主さん…」
神主
「な何かな?」
京平
「何で神主さんは隠れているのかな?」
腰が抜けている神主を掴んだ。
神主
「わわ悪かった。許してくれ」
京平
「痛かったんだよ。今も身体中痛いんだよ」
僕の身体は悲鳴をあげていた。けど痛みより怒りが込み上げてくる。
少女
「ミィを無視しないで!」
突然少女の声が聞こえたから、掴んでいる神主の後ろに回り込んで盾にした。
神主
「ぐは!」
案の定神主が殴られた。
僕は飛ばされないように神主を抑えた。
そして、両手に霊力を集中させて、少女ごと神主を壁まで吹き飛ばした。
京平
「そう言えばキミは遊んで欲しいんだよね?いいよ、遊ぼうよ」
僕は気を失っている神主を必死にどかそうとしている少女に近づいた。
京平
「僕ね、女の子には暴力はしないって決めてたんだけど…、キミは例外だよ」
少女
「い、イヤァァァァァ」
僕はそのあと神主のせいで動けない少女を一方的に殴り続けた。
京平
「はぁ、はぁ、はぁー」
結構長い時間、少女を殴り続けたんだけど、少女の身体にはアザ一つできなかった。
そして少女の顔は何故か嬉しそうだった。
少女
「ねぇ終わり?もっとしてよ〜」
僕の背中に寒気が走った。
僕は目覚めさせてはいけないものを目覚めさせてしまったかもしれない。
少女
「まぁいいわ今日は楽しめたし」
言い終わると少女はその場で意識を失った。
京平
「何だったの?あれ」
僕は鏡を拾ってクナギに聞いた。
クナギ
『妾と同じ神じゃ。しかし意外じゃったな、あやつは殺戮の神じゃぞ』
それを聞いて一気に血の気が下がった。
京平
「よく死ななかったね僕」
クナギ
『降りてすぐじゃったから本調子じゃなかったんじゃろう。運が良かったな』
京平
「いや笑いながら言わないでよ」
僕は鏡を仕舞って、神主と少女を起こしに行こうとしたら…
京平
「え?あれ?」
そのまま倒れてしまった。
そう言えばとっくに身体は限界を超えていたんだっけ…
僕はそう思いながら意識が消えていった。
次に目覚めた時は病院の一室の中だった。
全治5ヶ月の重症で完全に病院のベットから動けなかった。
京平
「暇だな〜」
病院のベットの上に寝ているだけだから、ただ暇をもてあますだけなのだ。
クナギ
『あれで動けていたのが不思議なくらいじゃ』
親に頼んでベットに寝てても写る場所に鏡を置いてもらっていて、クナギとは会話は出来る。
京平
「執念じゃない?それとも霊力で動いてかもしれないんじゃない?」
クナギ
『まったくオヌシの発想は飛んでおるのう』
京平
「じゃなに?車に跳ねられた状態と同じだった身体をどうやって動かしていたのさ?」
クナギ
『妾もわからぬ』
京平
「クナギにもわからない事ってあるんだね」
クナギ
『オヌシにはいろいろと教えてきたんじゃが、妾とて知らない事はあるのじゃ』
京平
「ふーん意外だね」
クナギには霊力を使った技や僕の知らない事を教えてもらっていた。
京平
「ん?誰かな?どうぞー」
病室のドアからノックする音が聞こえた。
少女
「あ、あのー、失礼します」
京平
「げっ!」
病室に入って来たのは今年の儀式に選ばれた少女だった。
少女
「会うのは二回目ですけど…会っていきなり『げっ』はないよ。と言うより深く傷つよ〜」
京平
「ごめん。つい儀式の時のことを思い出して…」
少女
「ひなは断片的にしか覚えてないけど…」
何でか少女は顔を赤くしてもじもじし始めた。
少女
「ねぇキミの名前を教えてよ。ひなはね、西尾陽菜って言うの」
京平
「僕の名前?僕は高崎京平だよ」
西尾
「高崎京平…、ねぇ京平、儀式の時にひなをボコボコに叩いたよね?」
いきなり呼び捨てかよ!とゆうツッコミはあえてしない、それより何で顔を赤くしてさらに目を輝かして聞いてくるのかが不思議だった。
京平
「確かに僕は陽菜ちゃんをボコボコに叩いたよ」
僕は正直に言った。
陽菜
「やっぱり…そうなんだ…」
さっきから顔を赤くしてもじもじしているけど、どうしたんだろう?トイレに行きたいのかな?
陽菜
「あのね京平…お願いがあるんだけど…いいかな?」
京平
「何かな?」
陽菜
「ひなをおもいっきり叩いて!」
京平
「え?えっと…」
陽菜
「ひなね、京平に叩かれたことを思い出すと凄く気もちよくなるの!だからもう一回ひなを叩いて」
京平
「えっとね、今僕は人を殴るような力はでないし、それに今は入院中なんだよ」
陽菜
「じゃあ退院してからでいいから!」
京平
「あのちょっと落ち着いてよ」
目が、目が恐ろしいぐらい輝いていますよ!
陽菜
「京平に叩かれると思うと物凄く興奮するの!」
は、鼻息まで荒くなってる!
京平
「わかったよ。退院してから一回だけ叩くから、落ち着いてー」
陽菜
「本当!約束だからね」
京平
「わ、わかったよ」
陽菜
「やった。約束だよ〜」
陽菜は嬉しそうにして病室を出て行った。
この時の僕はまだこの約束のせいで大変な事になるのを知らなかった。




