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鉄の国2

私は直感を信じるタチだ。そして信頼置ける我が直感がけたたましく叫び飛び跳ねている。ここは異国だ。

ここはどこで私は誰?等と陳腐な物言いをしてもよかった。だが私はゴーギャンではない。思い上がりだろうが、私が何処に向かおうかは私自身よく理解しているつもりだ。

「ここに私の自由はありますか?」

これが私の問だ。古都に生まれ落ち23年の内15年はそのことについて考えていた。もはやここがどこだかは関係なく。常に身の自由を優先したいが為に口を付いて出た言葉だ。

「え?」素っ頓狂な声を出す目の前の女性。軍服を身にまといかっちりした印象だがそれに合わず顔は幼さが残る。何より目を引くのは髪色が水色なことだ。日本国民ではない。いや我が惑星の主はこんな色の人種を作った覚えはないだろう。私は聖書を読むことはしなかったがそのくらい分かる。

しかし何より狂気的なのは、私自身がこの状況をありえないほど冷静に処理してしまっていることだ。これは夢だと思えない。だから現実に起きている奇異であると。私の脳細胞がそこまで優秀であるという自覚は一切れすらない。

「私は死んだはずの身です。ここが釈迦のいう極楽浄土ならば仏教徒達はこれから何を夢見て生きていけるのでしょうか?いやここは素晴らしい場所とお見受けしたがね。」

「…貴方の言う事はよく分かりませんが、ええ、貴方は死にました間違いなく。しかし貴方の魂を呼び出したのもまた事実。良く言えば生き返ったと思っていただければ。」

「理屈が分からん。少なくとも私の世界から見ればとんだ駄弁としか思えませんよ。私の見解からすると蘇るとは存在しない現象に記号として文字を与えただけのものだ。」取り敢えず日本語が通じる。いや私の言語が変容しているのか。相手の言葉は聞きなじまないが意味が通じ合う。酔狂な感覚だが幾ばくかすれば慣れるだろうか。

さて視界も晴れてきた。色々文句講釈詭弁駄弁垂れているうちに部屋を見回した。これはとんでもないオクシデントなセンスの部屋である。それもとてつもなくオカルティック。人を蘇らせるなんてのはオカルトでしかないが、それ専用の部屋とでも言うのだろうか。外には無数の歯車、水蒸気そして橙の明かりが蠢く。産業革命黎明のような外界とこの部屋では様相が違いすぎていて明らかに浮いている。

目の前の女性が咳払いをした。空気の一変、状況整理として咳払いとはなんと都合のよいものか。

「なぜ貴方がここに呼び出されたか。貴方は何なのか説明します。街の案内がてら歩きながらになります。宜しいですね。」

「それは良い。」

どうやらオカルト部屋は巨大施設の一室だったようだ。ドアを開け外に出ると一層錆鉄の臭いが強まる。そして沢山の人間が機械を動かし、何かを作りそして流れていた。

「ここはドロイカ共和国に対する反乱軍の基地です。私達はここで身を潜め暮らしています。」

身を潜めてというには余りに騒がしいが。

「この世界はどこもこのような機械都市です。騒がしくても隠れているんです。」

心を読まれたようで嫌にくすぐったい気持ちに襲われた。

「なるほど、木を隠すなら森の中ということですね。」

「ええ。次に貴方について。」

「気になっていた。私といえば決まった定職につかず、物書きの真似事をしては日日新聞に送り突き返される日々を過ごしていた人物です。親の喉元に噛みつき寄生するアンコウのようなものですがね。」

「でも神の啓示があったんです。このタイミングで異世界から人を呼べと。そして貴方が来た。教えてください。貴方はどこから来た誰ですか。」

私はゴーギャンではない。だから私が誰かはわかっている。分かっているのだ。


「私はしがない人殺しさ。といっても殺したのは自分だけだ。大正の終わりに生まれ落ち昭和を生きたただの金持ちの一人息子だ。誰よりも自由に生き自由を愛し自由なまま死んだ。そんな私からこの世界は自由を奪うか?」

気付かぬ内、敬語は取れ何故か高圧的な感じになる。悪い癖が出ていると自覚した。しかし自由とは私にとっての生である。ないがしろにはできなかった。女性はそんな私を強く見つめる。

「自由は、己で勝ち取るものです。」


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