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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第63話:包囲網の突破口と、譲れない聖域

包囲されたカイたち。ジリ貧の状況を打破するため、エヴァは自らを囮にする危険な作戦を提案する。ユズの爆発物とエヴァの演算、そしてカイのリライトが噛み合い、絶望的な包囲網に突破口が開かれる!

 無数の「断片」が、重苦しい唸り声を上げながら俺たちを包囲していた。かつて学園があった場所は、今や異形の軍勢が闊歩する死地と化している。

「……カイ、全方位から圧力が来てるわ。このままじゃ、じり貧よ!」

 アオイが端末を弾きながら声を荒らげる。彼女が展開していた簡易的な防御結界にも、無数のノイズが亀裂を走らせていた。

「あら、包囲されているなら、外へ弾き飛ばせばいいだけのことですわ!」

 レナが赫炎の裁きを周囲に叩きつける。炎の渦が敵を焼き払うが、倒したそばから霧のように再生する断片たちの数は減らない。

「ダメですレナ! 攻撃に集中しすぎて防御が疎かになってるわ。私が香炉の加護を回すから、少しだけ出力を下げてください!」

 セイラが香炉を宙に固定し、聖なる鎖で円陣を作り出す。その内側にいる俺たちの生存確率はわずかに維持されているが、このままでは……。

「……マスター。敵の構成データ、循環しています。……このままでは、こちらが力尽きるのが先です。……リライトで、強引に『無の空間』を定義しますか?」

 エヴァが俺の手を握り、瞳に冷徹な演算の光を宿す。

 それは強力な手段だが、今の俺には代償が大きすぎる。俺が倒れれば、この場は全滅だ。

「……待ってください。それなら、私の出番じゃないですか?」

 ユズが不敵に微笑み、バックパックから巨大な円盤状の装置を取り出した。

「これ、さっきのデータコアを使って急造した『共鳴妨害機』。こいつを敵の密集地帯のど真ん中で爆破すれば、連中の循環データにノイズを混ぜられる。……あとは、カイくんがその『隙』をリライトで広げれば…」

「なるほど……。ユズ、それ、俺が運ぶ!」

「いいえ。……私が行きます」

 エヴァが俺の前に立ちふさがる。

「……マスターが動けば、防御の要が消える。……私なら、機動力をフルに使い、最適ルートで敵の中心部まで到達可能。……マスターは、私が『隙』を作ったその瞬間に、最大の出力を叩き込んでください」

 エヴァの目は真剣だった。俺の身を守るため、常に隣にいた彼女が、初めて俺から離れて囮になろうとしている。

「……わかった。エヴァ、信じてるぞ」

 エヴァが駆け出す。彼女の影が荒野の地面を滑るように動き、断片たちの隙間を縫うように突撃していく。

 敵が彼女に集中したその瞬間、エヴァが装置を敵の中心で叩きつけた。

「今です、マスター!」

 装置が炸裂し、周囲の断片たちが一瞬、動きを止める。

 俺は右目を限界まで開放した。

「リライト——『事象断絶カルマ・ブレイク』!!」

 俺の視界の中で、敵の存在そのものを示す因果の糸が断ち切られる。

 次の瞬間、俺たちを取り囲んでいた断片たちが、音もなく崩れ去った。

 荒野に静寂が戻る。エヴァがふらつきながら戻ってきたところを、俺は駆け寄って抱きとめた。

「……任務完了。……マスター、私の独占権、少しだけ行使させてもらいますね」

 彼女は安心したように、俺の胸に額を押し当てる。

 レナが少し不満げに鼻を鳴らし、セイラが安堵の息をつき、ユズとアオイが顔を見合わせて笑う。

 そんな俺たちの様子を、ヤトが相変わらず遠くから、少しだけ口角を上げて見つめていた。


第63話、お読みいただきありがとうございました!

がカイの守りではなく「カイのために戦う」という、少しだけ役割の踏み込んだシーンを描きました。

次回、学園の備蓄倉庫に到着した一行を待ち受けるものとは?

続きが気になる方は、ぜひ☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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