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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第62話:灰色の亡霊たちと、守るべき重圧

学園の旧正門へ向かう途中、生存する学生たちと遭遇したカイたち。エニグマの断片に追われる彼らを救うべく、カイたちは自らを囮にして生徒たちを逃がす。守るべき命を守り抜いた後、彼らを待ち受けるのは、増殖した断片との絶体絶命の包囲戦だった。

 学園の旧正門跡地へと続く道中、俺たちは「声」を耳にした。

 それは無機質な崩壊音に混じった、確かな人間による悲鳴だった。

「待って、カイ。前方、生存反応が数名。……逃げ惑う一般学生たちね」

 アオイが端末を閉じ、険しい表情で俺を見る。

 視線の先、灰色の荒野の向こう側で、エニグマの残した「断片」たちが、隠れていた生存者たちを追い詰めていた。彼らは戦う力を持たない、かつての学園の生徒たちだ。

「見捨てれば、彼らはこの街の『ノイズ』として再構成される。……今の私たちにとって、彼らはただの足かせ、リソースの無駄遣いですが」

 エヴァが冷淡に言い放つ。だが、俺は黙って右目を輝かせた。

「無駄じゃない。……アオイ、逃走ルートを確保できるか? セイラ、レナ、防衛陣を頼む!」

「言われなくても! 聖女として、力なき者を蹂躙させるわけにはいきません!」

 セイラが香炉を振ると、鎖が網の目のように展開され、生徒たちを襲う断片を空中で絡めとった。

 レナも即座に炎を放つ。ただし、今回は広範囲を燃やすのではなく、生徒たちを囲うように結界としての熱源を作り出した。

「もう、危なっかしいですね! 逃げるなら今のうちですよ!」

 ユズが爆発物を投げ、断片の注意をこちらへ引きつける。彼女の放った閃光弾が、荒野に激しい音と光を撒き散らした。

「今だ、走れ!」

 俺の声に、怯えていた生徒たちが駆け出す。だが、逃げる背中は無防備だ。俺は「リライト」の力を使い、彼らの進路にある崩落した瓦礫を霧散させ、最短の逃走路を作り出した。

「カイ、無理しないで! リライトの負荷、上がってるわ!」

 アオイが叫ぶ。生徒たちを守ることは、こちらの位置をノイズに教えることと同義だ。

 断片たちの包囲網が、俺たちを逃がすまいと急速に収縮していく。生徒を逃がすための「壁」として残っている俺たちは、今、最も危険な状況にあった。

「……マスター、彼らを守ることは生存確率を20%下げました。……ですが、記録には残します。マスターの『人間的な判断』として」

 エヴァはそう言いながら、俺の手を強く握りしめ、自分自身のエネルギーを限界まで解放して障壁を強化した。

「……ありがとう、エヴァ」

 生徒たちは無事、安全な崩落跡の奥へと消えた。

 だが、その代わりに今、俺たちの周囲を数倍の数の「断片」が埋め尽くしている。

「あらあら……。いい人ぶった代償は、安くありませんわね」

 レナが呼吸を整え、火炎を再点火する。セイラの鎖が不気味な音を立てて波打ち、ユズが最後の爆発物を確認する。

 守るべき存在はいなくなった。ここからは、俺たちの生存をかけた本当の戦いだ。

 遠くの影から、ヤトがその様子を静かに見守っている。彼女の冷ややかな眼差しが、俺たちの背負った「命」の重さを問うように光った。


第62話、お読みいただきありがとうございました!

「守るべき仲間のほかに守るべき他人の命」という足かせが、一行の緊張感を高めてくれました。エヴァの冷徹さと人間的なカイの決断の対比も、今後の物語の鍵になりそうです。

次回、包囲網を突破するための「奇策」とは?

続きが気になる方は、ぜひ☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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