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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第61話:再構築される日常と、商人としての矜持

拠点確保を終えたカイたちは、生存のために「学園の備蓄倉庫」を目指す。ユズの商魂と知識が新たな目標を生み出し、一行は荒野を進む。エヴァの独占を横目に、ヒロインたちはそれぞれの役割でカイを支える。

 地下室での戦闘を終えた俺たちは、回収したデータコアを基に、この荒野の一角を確保するための拠点構築を始めた。かつて学園の学生だった俺たちにとって、何もない灰色の荒野で「居場所」を作ることは、ただ生き残る以上の意味を持っていた。

「……ここなら、まだ物理法則が安定しているわ。カイ、資材をこの座標に置いてくれる?」

 アオイが端末を操作し、街の構造を精査する。彼女のトラップセンサーは、空間の揺らぎを完璧に捉え、拠点として最も安全なエリアを特定していた。戦闘力はないけれど、彼女がいないと俺たちは一歩も安全に歩けない。

「アオイ、ここを任せていいのか?」

「もちろん。私の仕事だもの。……それより、カイの背中、少し火傷してる。あとで手当させてね」

 心配そうなアオイに頷き、俺はユズの方を振り返る。彼女は先ほど回収したデータコアと、自前の爆発物調合セットを広げ、何やら熱心に作業をしていた。

「ユズ、順調か?」

「はい、バッチリですよ! このデータコアを解析して、私たちの装備を強化する小型の『再構築機』を作ってます。これでセイラさんの香炉の出力を上げれば、もっと広範囲の敵を叩けますし、レナさんの魔力循環も最適化できます」

 ユズは後輩らしいテキパキとした手つきで資材を捌いていく。商人として培った目利きと、爆発物作成の技術が、今や俺たちの生命線だ。

「あら、私の魔法出力を上げるですって? それは頼もしいけれど、貴方の腕次第ね、ユズ」

 レナが貴族令嬢らしい余裕を見せつつも、その目には期待が滲んでいる。彼女の魔法は強力だが、出力調整が繊細なのだ。

「もちろんですよ、レナさん。私に任せてください!」

 その光景を、セイラが優雅に眺めている。彼女は香炉から漂う聖なる香りで、周辺のノイズを浄化し続けていた。

「……皆さん、とても頼もしいですね。ですが、お腹も空いてきました。資材だけでなく、食料の確保も必要ではないでしょうか?」

 セイラの指摘に、俺はハッとした。戦いに追われてばかりで、空腹のことなど忘れていた。

「……マスター。不合理です。生存維持のためのカロリー摂取は最優先事項。……ですが、この荒野には食べられるものなど……」

 エヴァが俺の腕に密着したまま、不服そうに呟く。彼女にとって食事はシステム維持には不要なものだが、俺たちにとっては、人間らしさを取り戻すために必要な「儀式」だ。

「それなら、私に考えがあります」

 ユズがニヤリと笑い、バックパックから古い学園の資料を取り出した。

「学園の地下には、非常食の備蓄倉庫があったはずです。そこがもし、エニグマの論理改変を免れていれば……」

「……行く価値はあるわね。アオイ、ルートの予測は?」

「……計算してみる。……いけるわ。最短距離で、学園の旧正門跡地へ」

 俺たちは新たな目標を得て、灰色の荒野へと再び足を踏み出した。

 エヴァの独占は相変わらずだが、ユズが「カイくんのエネルギー補給のために!」と食料調達に燃え、それにレナが「商売人ね……」と呆れながらも同行する。

 その様子を遠くから、ヤトが影に溶け込みながら見つめているのが分かった。彼女の視線には、期待と、それ以上の深い悲しみが混ざっているように見えた。


第61話、お読みいただきありがとうございました!

戦い以外の「生存」という面で、それぞれのキャラクターが役割を果たしている様子を描きました。ユズの商人と後輩らしい立ち回りが良いアクセントになれば幸いです。

次回、学園の地下で待ち受けるのは……?

続きが気になる方は、ぜひ☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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