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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第57話:崩落の塔と、連携の調べ

バベルの最上階でエニグマの核を破壊したカイたち。しかし、塔の崩壊という新たな危機が一行を襲う。極限状態の中、アオイの知略、ユズの爆発物、セイラの武力、レナの魔力が噛み合い、脱出路を切り拓く! 一方、エヴァの独占欲は戦場でも止まることを知らず……。

 エニグマの核が砕け散った瞬間、黄金の塔「バベル」は悲鳴を上げて崩壊を開始した。

 天井からは数式が雨のように降り注ぎ、床は論理の欠片となって虚空へと溶けていく。

「……マスター、塔の構造維持率が臨界突破しました。5分後にはこの空間そのものが消去されます」

 エヴァが淡々と告げる。その手は俺の腕をしっかりと掴んだままだ。

「悠長なことは言ってられないな。全員、脱出するぞ!」

「了解しましたわ! このまま天へと消えるなんて、私の美学に反しますもの!」

 レナが叫ぶと同時に、赫炎の裁き《クリムゾン・ジャッジメント》を周囲に展開し、崩れ落ちる天井の破片を紅蓮の炎で焼き払った。

 その隙に、アオイが険しい表情で視線を巡らせる。彼女の瞳には、空間の歪みが構造図として映し出されていた。

「カイくん、左の回廊が崩落する! 塔の内部データから、まだ安定している隠し通路を逆算したわ。そっちへ走って!」

「……さすが、地形把握の鬼だな。助かる!」

 俺たちが駆け出すと、通路の先から残存していた自律防衛ユニットが大量に現れた。しかし、そこで立ちふさがったのはセイラだった。

「聖なる鎖よ、道を作るのです」

 彼女が香炉を軽やかに振り回すと、鎖が蛇のように踊り出し、ユニットたちを一挙に薙ぎ払う。聖女の優雅な微笑みと、鎖が金属を打ち鳴らす冷徹な音のコントラストが、絶望的な状況に風穴を開けた。

 さらに、退路を塞ごうとする巨大な障壁が現れた瞬間、ユズが不敵に笑う。

「ふふん、商売道具の出番ね。この障壁、素材分析完了! 接合部にコレを……」

 彼女が投げたのは、即席で作られた爆発物だった。次の瞬間、障壁が轟音と共に砕け散り、俺たちは脱出路へと躍り出る。

「ふぅ……。みんな、いい連携だ」

 俺が安堵の息を吐いたときだった。

「……フン。不快なほど騒がしいですね。私のマスターをそんな雑多なメンバーで囲み、心拍数を乱すとは」

 エヴァが冷ややかな視線をレナへ向ける。レナも負けじと、炎を纏ったまま睨み返した。

「あら、何ですのその言い草! 連携したのはカイを守るためですわ。貴方こそ、マスターを私物化して独占しているだけではありませんこと?」

「独占? いいえ、これは『最適化』です。マスターの隣は、私の定位置ですから」

「……この機械娘! 今ここで焼き払いますわよ!」

「……データ破損の危険性があるため、控えてください。それに、今はマスターの栄養補給メンテナンスの邪魔です」

 エヴァはそう言うと、戦いで疲弊した俺の首元に顔を寄せ、密着度をさらに強めた。

「……ちょっと、エヴァ! 今はそんなことをしている場合じゃ……」

 俺が慌てている隙に、アオイが呆れたようにため息をつき、ユズが苦笑しながら俺の肩を叩く。

「カイ、二人ともそれくらいにしておかないと、本当に塔と一緒に消えちゃうよ?」

「本当よねー。まぁ、エヴァちゃんが独占してる間に、商人の私がカイくんの『生存確率』を上げたお礼を請求するから、覚悟しておいてね!」

 シリアスな脱出劇の裏で繰り広げられる、いつも通りの光景。

 その時、ふと視界の端で光が瞬いた。ヤトだ。

 彼女は崩壊する壁の陰から、俺たちにだけ聞こえる音量で「左の階段を飛ばして、窓から外へ飛び出しなさい」とだけ告げ、次の瞬間には影の中に消えていた。

「……あいつ、またヒントを置いていったのか」

「マスター、判断を」

「……行くぞ、窓からだ!」

 俺たちは塔の崩壊を背に、闇夜へとその身を投げ出した。


第57話、お読みいただきありがとうございます!

緊迫の脱出劇の中でも、それぞれの「レア役(役割)」をしっかりと発揮してもらいました。レナとエヴァの舌戦も健在です。ヤトのヒントが、今後の物語にどう関わってくるのか……。

次回、塔から脱出した一行を待ち受けていたのは、変わり果てた「外の世界」の姿でした。エヴァの予言する「再定義」とは?

続きが気になる方は、ぜひ☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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