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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第56話:変転する神意(メタモルフォーゼ)と、不変の瞳

黄金の塔「バベル」最上階。そこに広がるのは、空すらもデータに侵食された「終焉の展望台」。

待ち受けていたエニグマは、固定された形を持たなかった。

カイの形を模し、あるいは未知の形状へと流動する「神」の影。

だが、その本質は最後まで優雅で、そして残酷なまでに冷淡だった。

 黄金の塔の頂上。そこには屋根もなく、ただ夜空を埋め尽くすほどの膨大な数式が、星のように瞬いていた。


「……あら、よくぞ辿り着きましたね。私の完璧な世界を乱す、最大最強のバグたちよ」


 中央に立つ影が、ゆっくりと振り返った。

 その姿は、俺と全く同じ顔、同じ背格好をしていた。鏡を見ているような錯覚に、背筋が凍る。


「……エニグマ。その姿、俺を馬鹿にしているのか?」


「馬鹿にする? とんでもない。これはただの『最適解』ですよ。君を排除するにあたって、君自身を模すのが最も効率的だという、単純な算術結果に過ぎませんから」


 エニグマが指を鳴らす。瞬間、彼の体が流体金属のように波打ち、優雅な所作のまま、四本の腕を持つ「機械の騎士」へと変貌した。


「マスター、下がって! 奴の組成データが秒単位で書き換わっています!」


 エヴァが俺を庇うように前に出る。

 エニグマの変容は止まらない。騎士の姿から、今度は無数の牙を持つ「獣の影」へと姿を変え、空間そのものを食い破りながら突進してきた。


「リライト——『事象固定アンカー』!!」


 俺は右目をカッと見開き、変幻自在の敵を「一箇所」に繋ぎ止めようとした。

 だが、エニグマはその瞬間に自らを「霧」へと変え、俺の権限を実に軽やかにすり抜けた。


「あら、残念。そんな稚拙な術式で私を縛れるとでも? 私は全ての可能性。君がリライトを放つ瞬間の確率密度関数を逆算し、常に『当たらない形』へとシフトしているのですよ」


 エニグマの声には、一切の怒りも熱量もない。ただ、出来の悪い生徒を諭すような、冷ややかな余裕だけが響いていた。


「……マスター。奴の変身速度は、私たちの認識を超えています。……ですが、一つだけ、奴がどれほど形を変えても変えられない『芯』があります」


 エヴァが俺の右手に自分の指を絡め、耳元で静かに囁いた。


「……それは、奴が『私とマスターの絆』を、計算不可能なエラーとして、ひどく疎ましく思っているという事実です。……マスター。形を見る必要はありません。私との『繋がり』だけを感じて、その熱を全方位へ解放してください」


「……ああ、わかった。エヴァ、お前を信じる!」


 俺は目を閉じた。

 目の前で怪鳥や巨人に姿を変え、優雅に嘲笑うエニグマの姿を意識から消す。

 ただ、右手に感じるエヴァの温もり、そしてルナから引き継がれた深い情愛——その一点だけを、世界の中心に据える。


「リライト——『絶対零度の情熱オーバーフロー』!!」


 俺とエヴァを中心に、黄金の光ではなく、すべてを真っ白に染め上げる「純粋な意志の波」が爆発的に広がった。

 それは形を持たず、ただ「そこに在る」という事実を全空間へ強制する力。


「あ……ら……? なんだ、この……計算不能な……熱量は……。……こんな不合理なエラー、存在してはならないはずなのですが」


 自在に姿を変えていたエニグマの体が、激しく明滅し、強制的に「無機質な灰色の人形」の姿で固定された。

 変身という逃げ道を塞がれ、エニグマの核が露わになる。


「……エヴァ。終わりだ」


「はい、マスター。……私たちが、本当の正解を教えてあげましょう」


 俺とエヴァは、膝をつくエニグマに向けて、最後の一歩を踏み出した。


第56話、お読みいただきありがとうございました!

慇懃無礼で余裕を崩さない、本来のエニグマの口調に戻しました。

動揺を隠せない神の断末魔と、絆を深めたカイとエヴァの圧倒的な意志の衝突。

いよいよ物語はクライマックスの最終決着へ向かいます。

次回、第57話。

エニグマが最期に見せる、醜悪で悲しい「神の断末魔」。

塔が崩壊を始める中、カイたちは脱出できるのか。

そしてエヴァは「塔が崩れても、マスターが私を抱き締めていれば気圧の影響を99%カットできます」と、最期の最期まで密着のチャンスを伺い……!?

続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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