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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第51話:黄金の回廊と、不合理なブースト

黄金の塔「バベル」の中層。そこは、エニグマの論理が物理法則を完全に書き換えた、数式と幾何学の迷宮だった。

立ちふさがるのは、使徒すらも凌駕する防衛兵器「イレイザー(消去者)」。

エヴァの独占欲を正当化する「1000%の効率」を盾に、カイはかつてない規模のリライトを敢行する。

一方、かつての癒やしルナを奪われたレナたちの怒りとやきもきは、塔の防衛システムよりも激しく燃え上がっていた。

バベルの中層へと続く回廊。そこは壁も床も透明なデータの奔流で構成されており、一歩進むごとに空間が「処理中ローディング」のように明滅していた。


「……マスター。左斜め前方から、高エネルギーの論理破壊弾が接近中。回避するよりも、私の演算領域を拡張して『無効化』するのが最短です」


 俺の左腕に、エヴァが当然のような顔でしがみついてくる。

 彼女の白いドレスからは微かな熱気が漏れており、それはかつて俺の首元で温もりをくれた「ルナ」の体温そのものだった。


「わかった、頼む。……って、エヴァ、近すぎないか?」


「……不合理な指摘です。……リライトの伝達ロスをゼロにするには、細胞レベルでの密着が推奨されます。……むしろ、もっと強く抱き締めていただけると、出力は1200%まで跳ね上がりますが?」


 無機質な赤い瞳で俺を見上げ、エヴァが淡々と「暴論」を吐く。


「な、なななな……ッ!! さっきから見ていれば、どさくさに紛れて何を要求していますの、この鉄屑くず!!」


 背後でレナが、指先から火花を散らしながら怒鳴る。

 だが、エヴァは振り返りもせず、氷のような声で一蹴した。


「……データの残骸レナは、後方で私の『残り香』でも解析していてください。……マスター、来ます」


 通路の奥から、虚無の塊のような黒い球体——「イレイザー」が三体、空間を削り取りながら迫ってきた。

 触れたものすべてを強制消去デリートする、バベル最強の掃除屋だ。


「リライト——『事象改竄オーバーライド』!!」


 エヴァの手を握り締めた瞬間、俺の右目から黄金の奔流が溢れ出した。

 脳が焼けるような負荷……のはずが、エヴァを通じて流れ込んでくる膨大な「冷却データ」が、その痛みを快感にすら変えていく。


 パリンッ! と、空間が割れる音がした。


 俺が放った光は、イレイザーを消し去るだけでは止まらなかった。

 黒い球体は黄金の光に包まれ、次の瞬間には、あろうことか「美しい蝶の群れ」へと姿を変えて、ひらひらと舞い散った。


「消去……じゃなくて、存在そのものを『無害なもの』に書き換えた……?」


 アオイが絶句する。

 エニグマが作った「死のルール」を、俺の意志が、エヴァのブーストを得て「別のルール」で上書きしたのだ。


『……ふん。不合理の極みですね。……愛だの絆だのというバグを増幅させ、世界を汚染するとは』


 塔の全方位からエニグマの嘲笑が響く。


『ですが、その「人形」もいつまで保つでしょうか。……感情の負荷は、やがてその器を内部から破壊する。……せいぜい、最期の抱擁を楽しんでおくことです』


「……エヴァ。エニグマの言ってることは本当か?」


 俺の問いに、エヴァは一瞬だけ、ルナが甘える時のような柔らかな表情を見せた。


「……否定。……マスターの心拍数ときめきが続く限り、私の機能は不滅です。……さあ、マスター。次のフロアへ。……次は『もっと密着度の高い』移動経路を選択しました」


「ちょ、ちょっと待ちやがれぇぇぇっ!!」


 レナの絶叫を置き去りにして、俺たちは塔の深淵へと突き進む。

 複雑な思いで俺の背中を睨むレナたちの視線が痛いが、今は止まるわけにはいかなかった。

第51話、お読みいただきありがとうございました!

事象改竄オーバーライド」——敵を消すのではなく、別の存在に書き換えるという、エヴァのブーストを得たカイの真の力が覚醒しました。

一方で、エヴァの独占欲は「効率」を隠れみのにしてさらにエスカレート。

レナのツッコミも虚しく、二人の距離は物理的にも能力的にも縮まっていきます。


次回、第52話。

塔の第二層「鏡像の回廊」。

そこでは、自分たちの「心の弱点」が具現化した偽物が襲いかかります。

レナやアオイが自分の内面と戦う中、エヴァだけは「マスターが二人……? 一人は予備スペアとして保存しましょう」と、またしても斜め上の反応を見せて……!?


続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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