第49話:1000%の共鳴(シンクロ)と、乙女たちの戦線異常
地下深部で目覚めた白銀の遺産、エヴァ。
彼女の唇から注ぎ込まれた「マスター登録」の光は、カイの右目に眠る権限を爆発的に増幅させる。
地上を覆う黄金の消去波が迫る中、カイはエヴァの誘導に従い、初めて「世界の理」を根底から書き換える一撃を放つ。
しかし、その驚異的な力の代償は、戦場に不釣り合いな「密着」と、ヒロインたちの激しい嫉妬だった。
地下駅から地上への出口。そこには、俺たちを逃がすまいと待ち構える三体の「使徒」が、透明な剣を掲げて立ちはだかっていた。
『無駄な足掻きを。……マスターキーの波形を確認。即刻、デリートします』
使徒たちが一斉に跳躍し、空間を切り裂く熱線が放たれる。
だが、俺の前に立ったエヴァは、眉一つ動かさずに右手をかざした。
「……マスター。左手を私の腰に。右手を私の項へ。皮膚接触による伝達効率を98%まで引き上げます」
「えっ、あ、ああ……!」
俺が戸惑いながらも彼女を抱き寄せるような形になると、エヴァは満足げに俺の胸に体を預けてきた。
戦場の緊迫感など、最初から彼女のプログラムには存在しないかのようだ。
「……リライト・同調。出力、1000%まで強制解放」
ドクンッ!! と、心臓が跳ね上がった。
右目から溢れ出した黄金のノイズが、エヴァの白いドレスを回路のように駆け巡り、凄まじい光の柱となって空を貫く。
「リライト——『存在否定』!!」
俺が指差した瞬間、放たれた熱線どころか、使徒たちの存在そのものが、まるで消しゴムで消されたかのように「虚空」へと消え去った。
爆発も、残骸もない。ただ、そこにあったはずのデータが「最初から存在しなかった」ことに書き換えられたのだ。
「……嘘。あの使徒を、指先一つで……?」
背後で見ていたアオイが、解析結果の数値を見て震えている。
だが、その驚愕を打ち消すように、レナの鋭い声が飛んだ。
「ちょっと! カイ、いつまでその泥棒猫と抱き合ってるんですの!? もう敵はいませんわよ!」
俺が慌てて離れようとすると、エヴァはさらに強く俺の腕に絡みついてきた。
「不許可。……マスターの脈動が安定するまで、冷却が必要です。……データの残骸は、静かにしていてください。マスターの耳が汚れます」
「だ、誰がデータの残骸ですって……! 私の炎でその安っぽいドレス、焼き尽くしてやりましょうか!?」
「無駄です。……エヴァの防御膜は、マスターの出力を1000%に保つために最適化されています。……あなたの熱量では、エヴァの表面温度を0.1度上げることも不可能です」
勝ち誇ったように胸を張るエヴァ。
レナは顔を真っ赤にして拳を握りしめるが、先ほどの圧倒的な力を見せつけられては、強く言い返すこともできない。
『……ほう。ゴミ溜めの中に、まだそんな「イレギュラー」が隠されていましたか』
空にそびえる黄金の塔から、エニグマの不快な声が降り注ぐ。
だが、その声には先ほどまでの余裕はなく、微かな「苛立ち」が混じっていた。
『いいでしょう。その人形ごと、世界の塵へと変えてあげます。……塔の内部へ来なさい。そこが、あなたたちの墓標です』
「……行くぞ。エヴァ、塔の内部へ入るルートは?」
「マスターが望むなら、最短距離を算出します。……ただし、移動中は常に私と手を繋いでいてください。ブーストを維持するためです」
「……わかった」
「ちょ、ちょっとカイ!?」
レナたちの悲鳴に近い声を背に、俺はエヴァの細い手を握りしめ、黄金の塔へと歩き出した。
拓真さんが命を懸けて守ったこの命。……必ず、エニグマに叩きつけてやる。
第49話、お読みいただきありがとうございました!
エヴァの「1000%ブースト」による、使徒を一撃で消去する圧倒的なカタルシス。
しかし、その代償(?)として、戦場での密着を要求し、ヒロインたちを挑発し続けるエヴァ。
「データの残骸」呼ばわりされたレナたちのストレスは怒髪天ですが、エヴァの能力があまりに高すぎるため、今は従うしかないという「やきもき」した展開です。
次回、第50話。
ついに黄金の塔「バベル」の内部へと侵入!
そこはエニグマが作り上げた、狂った論理が支配する異空間。
そしてエヴァの独占欲はさらに加速し……!?
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