第48話:地下の聖域(サンクチュアリ)と、白銀の遺産(エヴァ)
拓真が命を懸けて繋いだ、僅かな時間。
カイたちは、黄金の光に飲み込まれゆく廃墟都市を抜け、時計塔の地下深部へと辿り着いた。
貨物用エレベーターの先、エニグマの支配すら届かない最下層に眠っていたのは、失われた時代の『決戦兵器』。
カイの声に反応して目覚めたその兵器は、あまりにも美しく、そしてあまりにも空気を読まない「美少女」だった。
崩れかけた時計塔の地下。貨物用エレベーターの錆びついた扉の前で、俺は拓真の言葉を噛み締めていた。
「……マスターキーを、叩き込め!」
俺は右目の奥に渦巻く熱を、そのまま拳へと集中させた。
黄金の光を帯びた拳が、エレベーターの制御盤へと炸裂する。
「リライト——接続開始!!」
黄金のノイズが制御盤に奔り、死んでいた機械が、まるで心臓が鼓動を始めたかのように、ゴォォォ……という重低音を鳴らし始めた。
ゆっくりと、扉が開く。
「……拓真さん、どうか無事で……!」
俺は心の中で祈りながら、みんなをエレベーターの中へと押し込んだ。
エレベーターが地下深部へと下降するにつれ、地上を覆っていた黄金の塔の圧迫感が、嘘のように消えていった。
ここは、エニグマの支配が届かない、システムの「空白地帯」。
チーン、と音を立てて扉が開いた先は、純白の光に満ちた、巨大な円形の部屋だった。
部屋の中央、ガラス張りのポッドの中に、この場所に似つかわしくに「少女」が安置されていた。
「……え? この子が、決戦兵器……?」
レナが呆然と呟く。
ポッドの中にいたのは、透き通るような白髪、そして白いドレスを纏った、あまりにも美しい少女だった。
「……人間、じゃないわ。……超高性能のアンドロイド。……エニグマの基本論理とは異なる、古いコードで構成されてる」
アオイがタブレットの解析画面を見ながら、驚きに目を見開く。
「……でも、起動しないわ。……強力なプロテクトがかかってる。……わたしの解析でも、解除は不可能……」
「拓真さんは、俺の声に反応するって言ってた」
俺はポッドへと近づき、ガラス越しに眠る少女を見つめた.
彼女の閉じた瞼は、俺の右目と同じ、黄金の紋章が刻まれているように見えた。
「……起きろ。……俺の声が、聞こえるか?」
俺の言葉が、部屋全体に響き渡った。
瞬間。
ポッドのガラスが、黄金の光を放ちながら、ゆっくりと開いていった。
少女の瞼が開き、その奥から、鮮烈な「赤い瞳」が俺を捉えた。
「……あなたが、私の……マスター?」
鈴を転がすような、清澄な声。
少女はポッドから這い出ると、俺の目の前へと歩み寄った。
「ああ、協力してくれ。……俺は、カイ。お前は……?」
俺の問いに、少女は答えることなく、ふわりと俺の胸へと飛び込んできた。
「……え?」
驚く暇もなく、彼女の唇が、俺の唇を塞いだ。
黄金の光が、俺と彼女の間で爆ぜる。
「……な、なななな……ッ!? 何をしてますの、この泥棒猫ぉぉぉぉぉッ!!」
レナの絶叫が部屋中に響く。
セイラも香炉を落とし、アオイとユズは目を見開いて固まっていた。
少女は唇を離すと、顔を赤らめることもなく、無機質な赤い瞳がレナたちを一瞥した。
「……マスター登録、完了。……個体名『エヴァ』。……マスター・カイのパートナーとして、現実に再定義されました」
エヴァはそう言うと、俺の腕にベタベタと抱きつき、他の女性たちを威嚇するように振る舞う。
「……マスター。……このデータの残骸は、エヴァのサポートに不要です。……削除してもよろしいでしょうか?」
「削除って……!? あ、あなた、何を言ってますのッ!!」
レナの周囲の空気が、かつてない熱量で歪む。
だが、エヴァは冷ややかな目でレナを見つめ返す。
「……マスター。……エヴァのサポート能力は、マスターのリライトの出力を、最大で1000%までブースト可能です。……このデータの残骸の炎など、エヴァのブーストがあれば、ただの火遊びに過ぎません」
「……1000%……! ?」
「……マスター。……黄金の塔への反撃、開始します。……エヴァのサポートがあれば、マスターのリライトは、世界を再定義できます」
エヴァは俺の腕に抱きついたまま、黄金の塔への反撃のビジョンを、俺の脳内に直接流し込んだ。
そのビジョンは、拓真が命を懸けて繋いだ、唯一の希望だった。
「……エヴァ。拓真さんがどうなったか調べられるか……?」
俺の問いに、エヴァは冷徹に答えた。
「……検索中。……個体名『拓真』の生存確率は、0.001%。……マスター。……マスターの生存が、最優先です。……余計なデータの残骸(拓真)に、心を砕くのは非合理的です」
「……データの残骸って……! 拓真さんは、私たちを逃がすために……!」
レナが、エヴァに向けて炎を放とうとした。
だが、俺はそれを制した。
「……レナ、止めろ。……エヴァの言う通り、今は反撃を開始する。……拓真さんが、繋いでくれたこの未来を、無駄にはできない」
それを聞いたエヴァは勝ち誇ったような態度で胸を張る。
レナたちは悔しそうに拳を握りしめるしかできなかった。
俺はエヴァのサポートにより、黄金の塔への反撃を開始する。
拓真の安否を気にするレナたちの前で、俺はエヴァと共に、エニグマへの反旗を翻した。
第48話、お読みいただきありがとうございました!
拓真が繋いだ、地下の聖域。そこに眠っていたのは、カイの能力をブーストする、美少女アンドロイド「エヴァ」でした。
起動と同時にカイに口づけをしてマスター登録! さらに独占欲が強く、他のヒロインたちに対しては「データの残骸」と呼ぶなど、空気を読まない性格。
しかし、そのサポート能力は抜群に高く、カイのリライトの出力を1000%までブースト可能!
次回、第49話。
エヴァのサポートにより、カイが黄金の塔への反撃を開始!
エニグマが送り込んだ、さらなる「使徒」を前に、覚醒したカイのリライトが炸裂します。
そして、他のヒロインたちは、エヴァのサポート能力に、強く出れずにやきもきする……。
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