第46話:選別の福音と、連鎖する消失(デリート)
地下からの脱出に成功したカイたちを待ち受けていたのは、天を突く黄金の輝きだった。
廃墟都市の中央にそびえ立つその塔は、世界を再定義するための「審判の柱」。
エニグマが宣言した『選別の第二段階』によって、都市のあちこちで「不必要なデータ」の強制削除が始まる。
逃げ場のない空の下、拓真が語る、塔に隠された残酷な役割とは。
黄金の塔から放たれる眩い光が、灰色の空を無理やり黄金色に塗り替えていく。
それは神々しい美しさとは程遠い、すべてを無機質に管理しようとする「冷徹な光」だった。
『——基準値以下の個体を検知。セクターG-14、フォーマットを開始します』
空から響くエニグマのシステムメッセージと共に、周囲の景色に異変が起きた。
遠くに見える半壊したビルが、まるで砂の城が崩れるように、端から「立方体のノイズ」となってサラサラと消えていく。
それだけではない。逃げ惑うスカベンジャーたちまでもが、光に触れた瞬間に断末魔すら上げられず、虚空へと吸い込まれていった。
「……消えてる。街が、消されてる……!」
ユズが震える声で指差した。
それは破壊ではない。存在そのものを「なかったこと」にする、根源的な消去だ。
「おい、ぼうっとしてる暇はねぇぞ! 走れ!!」
拓真が俺たちの襟首を掴まんばかりの勢いで叫ぶ。
彼の顔からは、いつもの飄々とした余裕が消え失せていた。
「拓真さん、あの塔は何なんだ!? 選別って、一体……!」
「……エニグマの直属サーバー、通称『バベル』だ。あそこから発信される信号に『適合』できないデータは、すべてバグとして処理される。……つまり、感情を捨てきれない俺たちは、今この瞬間から、世界にとっての『猛毒』に指定されたってことだ!」
背後から、光の波が迫ってくる。
触れれば最後、俺たちの存在もまた、ただの文字列となって消滅するだろう。
その時、俺たちの行く手を阻むように、空から三筋の光が降り注いだ。
光の中から現れたのは、これまでの機械兵とは一線を画す、流線形の純白のアーマーに身を包んだ「使徒」。
『不確定要素の排除。……目標、マスターキー保持者』
使徒が掲げた透明な剣から、空間そのものを切り裂くような高出力の熱線が放たれる。
「リライト——っ!!」
俺は咄嗟に右目を開いた。
だが、黄金の塔の影響か、周囲の理がガチガチに固定されており、書き換えが恐ろしく重い。
「ぐ、あぁぁぁ……ッ!!」
「無理すんな、カイ! こいつらは俺が食い止める!」
拓真が大剣を双剣へと分割し、超高速の連撃で熱線を弾き飛ばす。
しかし、使徒の動きは拓真ですら防戦一方に追い込むほど速く、正確だった。
「……みんな、聞け。あの塔を止めない限り、この世界に逃げ場はない。……俺はこの街の地下に眠る『もう一つの遺産』を知っている。そこなら、あの塔の干渉を一時的に無効化できるはずだ」
拓真は使徒の攻撃をいなしながら、背中で俺たちに告げた。
その瞳には、何か重大な決意のような、静かな覚悟が宿っていた。
第46話、お読みいただきありがとうございました!
世界をフォーマットする「黄金の塔」と、最強の刺客「使徒」。
圧倒的な力の前に、カイたちは「逃げる」ことすら許されない極限状態に追い込まれます。
拓真が口にした「もう一つの遺産」とは。そして、彼が抱える「覚悟」の正体とは……。
次回、第47話。
迫り来る光の波と使徒の猛攻を潜り抜け、一行は拓真の指し示す「約束の地」へと走ります。
しかし、そこへ辿り着くためには、誰かが「殿」を務める必要がありました。
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