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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第45話:不合理な怒り(エモーション)と、逆転の連鎖

暴かれた「プロジェクト・エデン」の正体。

自分たちは消去を待つだけのサンプルだった。その事実に、カイたちの魂が激しく燃え上がる。

迫り来る防衛システムと、冷徹な機械兵「チェイサー」。

逃げ場のない最下層で、カイは右目に宿る『マスターキー』の真の使い方——理屈を超えた「感情」によるシステムの強制上書きを試みる。

けたたましい警告音と共に、天井のレーザー照準器が一斉に赤く発光した。


「伏せろっ!!」


 拓真の叫びと同時に、幾条もの熱線が部屋中を切り裂く。

 俺たちは間一髪でコンソールの陰に飛び込んだが、退路である通路はすでに白銀の機械兵——チェイサーたちによって封鎖されていた。


『感情というバグを検知。サンプルNo.001、および随伴データの「初期化」を実行します』


 チェイサーの声には、一切の抑揚がない。

 彼らにとって、俺たちの怒りも、悲しみも、ただの「エラーログ」に過ぎないのだ。


「ふざけるな……っ、勝手に初期化なんてさせてたまるか!!」


 レナが叫び、両手から紅蓮の劫火を放つ。

 だが、チェイサーは無機質な盾を展開し、その炎を涼しい顔で拡散ディフューズさせていく。


「カイ、あいつらの防御膜シールドはエニグマの基本論理で構成されてる! 物理攻撃じゃ埒が明かないぞ!」


 拓真が二丁拳銃を撃ち鳴らしながら、俺の肩を強く叩いた。


「……分かってる。論理ロジックで守ってるなら、それをぶっ壊すだけだ」


 俺は右目をカッと見開いた。

 脳を焼くような激痛。だが、今はその痛みが心地いい。

 俺の中に渦巻くこの「不条理な怒り」こそが、科学者が遺した最強の武器なんだ。


「(書き換えるんじゃない。……俺たちの『命の熱』を、直接流し込む!!)」


 俺は右手を地面に突き立てた。

 黄金の光が、回路を伝って部屋全体へと脈打つように広がっていく。


「リライト——感情過負荷エモーショナル・オーバロード!!」


 瞬間、部屋中のモニターが真っ赤に染まり、数式ではなく「叫び」のようなノイズがスピーカーから溢れ出した。


『……ガガッ……計算不能……!? なぜ……こんな……非合理な……熱量が……ッ!?』


 完璧な陣形を保っていたチェイサーたちが、ガタガタと震え始めた。

 俺が流し込んだのは、精密なコードではない。ただの「怒り」と「拒絶」。

 エニグマがもっとも嫌い、削除しようとした「人間そのもののノイズ」だ。


 論理を優先するシステムにとって、それは処理不能な無限ループ。

 チェイサーたちの防御膜がパリンと音を立てて砕け散った。


「今だ、みんなっ!!」


「いっけぇぇぇぇぇっ!!」


 ユズが放った高硬度の結晶が、無防備になったチェイサーの一体を粉砕する。

 レナの炎が、残りの機械兵を焼き尽くし、爆発の連鎖が地下室を揺らした。


「よし、道は開いた! 全速力で脱出するぞ!」


 拓真が俺の腕を掴んで引きずり起こす。

 崩れ始める天井、火花を散らすデータセンター。

 俺たちは瓦礫の雨を潜り抜け、光の差し込む地上への階段を駆け上がった。


「はぁ、はぁ……っ!!」


 地上へと飛び出し、俺たちはその場に崩れ落ちた。

 背後の地下駅が完全に崩落し、噴煙が上がる。


 だが。

 煙の向こう側、見上げた空の光景に、俺たちは息を呑んだ。


「……何、あれ……」


 アオイの声が震えている。

 さっきまで灰色の雲が垂れ込めていた空に、巨大な、あまりにも巨大な「黄金の塔」が、廃墟の街を貫くようにそびえ立っていた。


 そして、その塔から、世界中に向けて不気味な「声」が響き渡る。


『……不合理なるサンプルたちへ。……「選別」の第ニ段階を開始します』

第45話、お読みいただきありがとうございました!

「不合理な怒り」がシステムを凌駕する! カイが右目の『マスターキー』の真髄を掴みかけた、カタルシス溢れる脱出劇となりました。

しかし、地上に戻った彼らを待ち受けていたのは、さらなる絶望の象徴である「黄金の塔」。


次回、第46話。

エニグマが宣告した「選別の第ニ段階」とは。

街中に溢れ出す、これまでとは桁違いの強度を持つバグ。

拓真が隠していた、この世界の「もう一つの真実」が語られます。


続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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