第39話:紅の残響と、兄貴分の双剣(スタイル)
鉄の門を越えた先に待っていたのは、赤く光る無数の瞳。
廃墟都市の影に潜む「スカベンジャー」たちが、新たな獲物を求めて一斉に飛びかかる。
窮地に立たされるカイたちを救ったのは、拓真の振るう巨大な刃と、冷徹なまでの戦闘技術。
そしてカイは、この「外の世界」でリライトを使うことの真の意味を知ることになる。
ビル影から飛び出してきたのは、学園の「掃除屋」とは明らかに造形が異なる化物だった。
四足歩行の獣のような骨格に、剥き出しの光ファイバーが筋肉のように巻き付いている。
頭部には目がない代わりに、紅いノイズを放つクリスタルが埋め込まれていた。
「……スカベンジャーだ。データの残骸を漁る、この街の野良犬だよ」
拓真が低く呟くと同時に、先頭の一匹が音もなく跳躍した。
その鋭い爪がアオイの喉元に迫る。
「危ないっ!!」
俺が叫び、右目の「リライト」を発動させようとした、その時。
——ガキィィィィィィィンッ!!
凄まじい火花が散り、スカベンジャーの巨体が真横から吹き飛ばされた。
拓真が担いでいた大剣が、いつの間にかその手に握られ、重厚な一撃を叩き込んでいたのだ。
「悪いが、こいつらは話が通じないんでね」
拓真は流れるような動作で背中の大剣を地面に突き立てると、腰の二丁拳銃を抜き放った。
引き金が引かれるたび、バグを分解する特殊な弾丸がスカベンジャーたちの眉間を正確に貫いていく。
「すごっ……一発も外さない……」
ユズが驚愕の声を上げる。
だが、敵の数は減るどころか、ビルの壁を伝って次々と増援が降りてくる。
「レナ、左だ! セイラはアオイを護れ!」
俺は右目に力を込め、地面の摩擦係数を書き換えて敵の足を奪おうとした。
だが、視界に浮かび上がるコードに指をかけた瞬間、頭蓋を直接万力で締め付けられるような激痛が走った。
「ぐっ……!? あ、ああぁぁぁぁッ!!」
視界が真っ赤に染まる。
学園の中では感じたことのない「抵抗感」。
まるで、世界そのものが俺の介入を拒絶し、押し返してくるような感覚だ。
「おいカイ! 止めとけって言ったろ!」
拓真がスカベンジャーの首を大剣で跳ね飛ばしながら、こちらへ鋭い視線を投げた。
「ここは学園の中じゃない。管理者のいない『野ざらしの世界』だ。無理に書き換えようとすれば、その反動は全部お前の脳に返ってくるぞ!」
「……でも、これじゃ……戦えない……!」
「いいから見てろ。……力押しだけが能じゃないんだよ」
拓真は銃をホルスターに戻すと、大剣の柄にあるスイッチを入れた。
瞬間、大剣の刃が縦に二つに分かれ、青い電光を放つ双剣へと姿を変える。
拓真の体が、弾丸のような速度でスカベンジャーの群れへと突っ込んだ。
彼が通った後には、ただ青い光の残像と、綺麗に切断された敵の残骸だけが残る。
それは、世界を「書き換える」のではない。
世界の「隙間」を縫い、最小限の力で最大の結果を出す、熟練の狩人の戦い方だった。
「……はぁ、はぁ……」
俺は膝をつき、激しく脈打つ右目を押さえた。
拓真が見せた圧倒的な戦闘力。そして、自分を拒絶するこの「外」の理。
学園での「最強」が、この廃墟では通用しない。
突きつけられた残酷な現実に、俺はただ、荒い息を吐き出すことしかできなかった。
第39話、お読みいただきありがとうございました!
廃墟都市のバグ・モンスター「スカベンジャー」との遭遇。
そして、新キャラ・拓真が見せた、二丁拳銃と変形大剣(双剣)を操る鮮やかな戦闘スタイル。
一方でカイは、学園外での「リライト」の使用に伴う凄まじい反動に直面します。
最強の権限を持ちながら、それを使えないというジレンマ。
この過酷な環境で、カイはどう自分を磨き直していくのか。
次回、第40話。
拓真の案内で辿り着いた、廃墟の中の「安全地帯」。
そこで明かされる、拓真の過去と、この世界の「本当の勢力図」とは。
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