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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
【Phase 2:世界再構築編】

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36/55

第36話:計算外の変数(イレギュラー)と、終わりを告げる右目

アオイとユズが仕掛けた「論理の罠」が、最強の執行者の足を止めた。

数秒。それはシステムにとっては永遠にも等しい、致命的な空白。

泥を啜り、仲間たちの想いを背負って再び立ち上がったカイ。

その右目に宿るのは、もはや借り物の力ではない。

絶望に支配された学園に、今、審判の鉄槌が下される。

『……バカな。座標エラーが修復できない!? この私が、こんなゴミデータに……!』


 空中でフリーズした執行者の奥から、エニグマの絶叫が響く。

 だが、その声さえも、今の俺には遠いノイズにしか聞こえなかった。


 ゆっくりと、右手に力を込めて地面を押し返す。

 右目から溢れる黄金の光は、もはや暴走してはいない。脳を焼くような熱は引去り、代わりに冷徹なまでの「確信」が、俺の意識を支配していた。


「カイ……っ! 無茶しないで!」

「先輩、今です! その隙に逃げて……!」


 レナとユズの声に、俺は小さく首を振った。

 逃げる? ……いや、その必要はない。


「……アオイ、ユズ。最高のサポートをありがとう。お前たちが作ってくれたこの『空白』、無駄にはしない」


 俺はふらつく足取りで、動けない執行者の目の前へと歩み寄った。

 執行者の真紅の双眸が、激しく点滅して俺を威嚇する。


『……退きなさい、欠陥品! 権限を返上し、消去されるのが貴様の運命だ!』


「運命、か。……エニグマ、お前の演算は確かに完璧だったのかもしれない。だが、一つだけ致命的な計算違いがある」


 俺は右手を、執行者の胸元——剥き出しになったコアへと突き出した。

 右目の奥で、黄金の紋章が複雑に回転し始める。


「お前の計算式には……『仲間』っていう、不確定な変数が抜け落ちていたんだよ」


 俺の右目から放たれた黄金の光が、執行者の白銀の鎧へと侵食を開始する。

 それは先ほどのような乱暴な「脆弱化」ではない。

 システムの根幹から、エニグマの支配権を奪い、俺自身のルールで上書きする——『真・改竄リアル・リライト』。


「リライト——接続拒否アクセス・ディナイド。お前の命令は、もうこの『身体オブジェクト』には届かない」


『なっ……私のリンクが……強制遮断パージされた……!?』


 執行者の全身から真紅のノイズが消え、純白の輝きへと変わる。

 エニグマの直接操作を切り離された執行者は、もはやただの「殻」に過ぎない。

 俺はそのまま、右手に込めた全エネルギーを解放した。


「終わりだ。——リライト・デリート」


 パォォォォォンッ!!


 視界が白銀と黄金の光に埋め尽くされる。

 衝撃波が時計塔を揺らし、窓ガラスが粉々に砕け散った。

 爆光の中、白銀の騎士は悲鳴を上げることなく、静かに、雪が溶けるようにデータへと分解されていく。


 そして。

 静寂が、戻ってきた。


 執行者が立っていた場所には、何も残っていない。

 ただ、夕暮れ時の淡い光が、静かに床を照らしているだけだった。


「……やった、のかしら」

「やりましたわ……! カイ様、あいつを、本当に……!」


 レナとセイラが、信じられないものを見るような目で俺を見つめる。

 俺は限界まで酷使した右目を手で押さえ、力なく笑った。


「ああ……。とりあえず、学園の『掃除』は終わったみたいだ」


 その瞬間、学園全体を覆っていた不気味なノイズが晴れ、空に青い色が戻り始める。

 だが、俺の右目には見えていた。

 消え去る間際、エニグマが遺した、呪いのような最期の言葉が。


『……これで勝ったつもりですか? 学園は、広大なネットワークの端(末端)に過ぎない。……外の世界で、真の絶望が貴様らを待っていますよ』

第36話、お読みいただきありがとうございました!

ついに、学園編の最強の壁・執行者を撃破!

カイの決め台詞「仲間の変数」が、エニグマの冷徹なロジックを打ち砕く熱い展開となりました。


仲間たちの連携、カイの覚醒、そして物理的な爆発演出。

まさに100万文字を目指す大長編の「第1章完結」にふさわしい盛り上がりになったかと思います!


次回、第37話。

学園に訪れた一時的な平和。しかし、エニグマが遺した言葉通り、学園の「外」へと続く扉が今、開かれます。

物語はステージを変え、さらなる広がりを見せる新章へと突入します!

続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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