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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
【Phase 2:世界再構築編】

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35/55

第35話:絶対絶命の防衛戦と、非戦闘員の意地

黄金の光が途絶え、ついに地に伏したカイ。

エニグマの直接制御マニュアル・コントロールによって白銀の輝きを取り戻した執行者が、無慈悲な刃を振り上げる。

圧倒的な暴力の前に残されたのは、満身創痍の少女たち。

だが、知識の集積者であるアオイの瞳だけは、絶望の淵でエニグマの「傲慢な操作」が生んだ一瞬の隙を見逃してはいなかった。

ドサリ、と重い音を立ててカイが倒れ伏す。

 彼の右目から流れる黄金の血液が、無機質な地面を濡らした。


「カイッ!!」


 レナの悲痛な叫びが空間を引き裂く。

 だが、その声に反応する暇もなく、白銀の執行者がゆっくりと首を巡らせた。

 鏡面だった顔には、エニグマの悪意を象徴するような、おぞましい真紅のノイズが蠢いている。


『さあ、不愉快なイレギュラーの掃除を再開しましょうか』


 スピーカー越しの冷酷な声と共に、執行者が地を蹴った。

 標的は、気を失ったカイ。


「させませんわっ! 灰燼に帰しなさい!!」


 レナが両手を突き出し、これまでで最大火力の紅蓮の炎を放つ。

 しかし、エニグマの直接制御によって出力が跳ね上がった執行者は、巨大な剣を無造作に一閃しただけだった。

 轟音。凄まじい風圧が炎を真っ二つに裂き、その余波だけでレナの体が木の葉のように吹き飛ばされる。


「レナ様! ……くっ、幻惑の香よ!」


 セイラがすかさず香炉を振り回し、視界を奪う濃密な煙を散布する。

 だが、執行者の真紅の顔面がギョロリと動き、煙の奥にいるカイの生体反応を正確にロックオンした。

 物理的な目を持たないシステム・アバターに、視界潰しは意味を成さない。


「だ、だめ……っ、手も足も出ない……!」


 腰を抜かしそうになるアオイ。

 執行者が大剣を上段に構え、カイの首筋へと冷酷な刃を振り下ろそうとした、その刹那。


「(……待って、何かがおかしい)」


 アオイの脳内を、学園の膨大なシステムデータが駆け巡る。

 執行者の足運び。それは、あまりにも正確すぎた。本来この学園の物理エンジンでは、崩れたガレキや『液状化した床』の上では、わずかな姿勢制御の補正が入るはずなのだ。


「あいつ……エニグマが直接動かしてるせいで、地形の影響を完全に無視して『最短距離』で動いてる!」


 それは、神の視点を持つエニグマゆえの慢心。

 個別の地形オブジェクト(床のバグ)との接触判定をスキップし、強引に座標を上書きして移動しているのだ。


「ユズちゃん! カイがさっき書き換えた『液状化した床』の座標……あそこの境界線に、持ってるだけの『高硬度結晶』を全部叩き込んで!!」

「えっ!? 境界線……? わかりました、やってみますっ!」


 ユズが弾かれたように動き出す。

 アオイは震える足に鞭を打ち、カイを庇うように執行者の前に躍り出た。


「こっちよ、ポンコツシステム! 私たちを『計算外』にしたことを後悔させてあげる!」

『……下等なデータが、吠え面を』


 執行者のターゲットが、カイからアオイへと切り替わる。

 大剣が空気を裂いて振り下ろされる直前、ユズが結晶の楔を液状化した地面の「端」へ一気に打ち込んだ。


 ガガ、ギギギギギギギッッ!!


 凄まじい金属の絶叫。

 地形判定を無視して突進していた執行者の足が、強制的に固形化された結晶と、未だ液状化したままの床の「隙間」に挟まった。

 システムの「座標移動」と、物理的な「オブジェクトの衝突」が矛盾を起こし、執行者の足元で激しい火花とノイズが爆ぜる。


『な……!? 物理干渉の例外エラー!? 足が、抜けない……!?』


 エニグマの狼狽する声。

 傲慢な直接操作が仇となり、現場の複雑な物理計算にシステムが耐えきれず、完全にフリーズしたのだ。


「やった……! 止まったよ、カイ……!」


 へたり込むアオイの背後で、倒れていたカイの右手が、ピクリと動いた。

第35話、お読みいただきありがとうございました!

エニグマの「直接操作」という圧倒的なパワーを、アオイの「物理法則の知識」とユズの「工作スキル」で逆手に取る、スリリングな頭脳戦を描きました。

非戦闘員の二人が、自分たちの持ち味を活かして最強の敵の足を止める……100万文字の長編においても、彼女たちの個性が光る重要な一歩になったかと思います。


そしてラスト、ついにカイの指先が……!


次回、第36話。

仲間たちが命懸けで繋いだ数秒間。

再び立ち上がるカイが、極限状態の中で右目の『真の権限』の一端を解放します。

学園編、いよいよ完全決着へ!

続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!

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