第28話:時計塔の番人と、重なる三つの絆
合流地点である時計塔に到着した三人の前に、巨大な番人が立ちはだかる。
右目が使えない絶体絶命のカイ。しかし、アオイとユズが彼の「目」となり、非戦闘員たちの知略と勇気が、不可能を可能にする奇跡を起こす。
時計塔のふもとまで辿り着いた俺たちの前に、絶望が形を成して立ちはだかった。
「……嘘、でしょ」
アオイの声が震える。
エントランスの重厚な扉を塞ぐように鎮座していたのは、これまでのバグとは一線を画す巨体。
三つの犬の首を持ち、全身が剥き出しの光ファイバーのようなノイズで構成された、『番人』型の巨大バグだった。
『……オォォォォォッ!!』
三つの口から放たれた衝撃波が、中庭の地面を爆ぜさせる。
「くっ、右目さえ……右目さえ動けば……!」
俺は奥歯を噛み締めた。敵の攻撃パターンを読み、隙を突くための右目は、今も激痛と共に真っ暗なままだ。
だが、その時。俺の左手をアオイが、右手をユズが、それぞれ強く握りしめた。
「カイ、前を見て! 私たちが、あなたの『目』になるから!」
「そうです! 敵の動きは私たちが教えます! カイ先輩は、私たちの指示を信じて跳んでください!」
アオイの鋭い観察眼と、ユズの動体視力。
二人が、戦闘不能なはずの俺の「四肢」になろうとしている。
「……ああ、分かった。お前たちを信じる!」
俺は二人の中央で腰を落とした。
番人が左の首をもたげ、高密度のノイズ弾を練り上げる。
「——今! 右へ三歩!!」
アオイの叫びと同時に、俺は横へ跳んだ。
直後、さっきまで俺がいた場所を、黒い光線が貫き通す。
「次は上です! 衝撃波が来ます!!」
ユズの指示に合わせて、瓦礫を蹴って高く跳躍。
足下をバグの咆哮が通り過ぎていく。右目による演算はない。だが、二人の声が、脳内に鮮明な『戦場の地図』を描き出していた。
「カイ! 喉元のコアが露出したよ! ……今!!」
アオイの指し示した一点。
ユズが投げた特製の発煙筒が番人の顔面で炸裂し、視界を奪われたバグが大きくのけぞる。
俺は怪我をしていない左腕に全神経を集中させ、地面に落ちていた金属バット——かつて野球部員だったNPCが遺した『残骸』を掴み取った。
「おおおおおっ!!」
視界の端で、胸元のルナが微かに光った気がした。
二人の声に導かれた渾身の一撃が、番人の喉元、赤く明滅するコアを粉砕する。
『ギ、ギャァァァァァッ……!』
巨体がガラス細工のように砕け散り、ノイズの粒子となって消滅していく。
それと同時。時計塔の頂上から、勝利を祝福するように、重厚な鐘の音が響き渡った。
ゴーン、ゴーン、と。
それは、レナとセイラがそこにいるという、何よりの合図だった。
「……やった、のか」
膝をつく俺の元へ、アオイとユズが駆け寄ってくる。
俺たちはボロボロだった。けれど、その顔には確かな笑みが浮かんでいた。
「勝ったよ、カイ! 私たちだけでも、やれたんだよ!」
「はいっ、カイ先輩! ……ほら、見てください!」
ユズが指差した時計塔の二階、テラス。
そこには、俺たちを見つけて大きく手を振る、真っ赤な髪の少女と、巨大な香炉を背負った少女の姿があった。
第28話、お読みいただきありがとうございました!
カイの能力に頼り切るのではなく、三人がそれぞれの強みを活かして巨大な敵を打ち破る、まさに「絆」の回でした。主題歌のサビが流れるシーンをイメージして執筆しましたが、いかがでしたでしょうか?
次回、ついにレナ・セイラと感動の再会!
しかし、喜びに浸る間もなく、時計塔の内部で彼らは「学園がNPCを隔離する真の理由」を目撃することに……。
物語はさらに核心へと加速します。続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!




