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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒
【Phase 2:世界再構築編】

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16/55

第16話:書き換えられた庭園と、赤い空

『バグの核』を破壊し、初期化を阻止したはずのカイたち。

しかし、鳴り響くシステムメッセージと共に、世界は残酷な「再構築」を開始する。

静寂が戻った学園で三人が目にしたのは、かつての日常とは似て非なる、歪んだ箱庭の姿だった。

 世界が、作り変えられていく。

 鼓膜を揺らすような轟音が止み、俺がゆっくりと目を開けると、そこには静寂が広がっていた。

 足元の床は、先ほどまでの紫色のノイズを失い、元の古びた石材に戻っている。

「……終わった、のですわよね?」

 レナが不安げに声を出し、周囲を見渡す。

 時計塔の内部は、以前の静かな姿を取り戻したように見えた。だが、窓から差し込む陽光を見て、俺は息を呑んだ。

 ——赤い。

 夕暮れ時でもないのに、窓の外はどす黒い赤色に染まっている。

 俺たちは弾かれたようにバルコニーへと駆け出し、学園の全景を見下ろした。

「……何、ですの……これ……」

 レナが絶句し、セイラが香炉を握る手に力を込める。

 そこにあったのは、俺たちが知る学園ではなかった。

 校舎の一部は断裂したまま重力を無視して空中に浮き、校庭の地面には巨大な幾何学模様の溝が、まるで街の血管のように刻まれている。学園を囲んでいた緑豊かな森は、すべてが冷たい水晶の結晶へと姿を変えていた。

 俺の右目が、無機質な文字列を網膜に投影する。

【Phase 2:リビルド完了】

【隔離領域の安定性を確認——世界強度150%】

(バグを消したんじゃない……世界が、より強固に書き換えられたんだ)

 あの『ヤト』という少女が言っていたことは本当だった。

 俺たちは救ったのではない。ただ、次の地獄への階段を一段上らされただけだ。

「カイ様、見てください! 生徒たちが!」

 セイラが指差す先、校舎の地下室から、避難していたはずの生徒たちが続々と姿を現していた。

 俺たちは急いで塔を駆け下り、中庭へと向かう。

「みんな! 無事でしたのね!」

 レナが駆け寄り、一人の女子生徒の肩を掴む。

 しかし、声をかけられた生徒は、不思議そうな顔でレナを見返した。

「え? ええ、もちろん無事だよ。……それよりレナさん、どうしたのそんな格好で。次の講義、始まっちゃうよ?」

「……講義? 何を言っていますの、あんなに化け物が溢れて……!」

「化け物? 夢でも見たんじゃない?」

 生徒たちは、赤く染まった空も、浮遊する校舎も、昨日までの地獄も、すべてが「当たり前」であるかのように振る舞い、談笑しながら去っていく。

 記憶が、世界の再構築と共に上書きされているのだ。

「そんな……わたくしたちが命を懸けて戦ったことは、全部なかったことになってますの……?」

 レナの唇が震える。

 その時。

「いいえ。世界は、あなたの献身を正しく記録していますよ。……『イレギュラー』の皆さん」

 背後から、凛とした、だが感情の欠落した声が響いた。

 振り返ると、中庭の噴水の前。

 そこには、見慣れぬ真っ白な制服に身を包んだ、銀髪の少女が立っていた。

 彼女は、俺の赤紫色の右目を真っ直ぐに見つめ、優雅に、完璧な所作で一礼する。

「お初にお目にかかります。私は運営委員会・監査官の『エニグマ』。Phase 1の突破、お見事でした」

「……運営委員だと?」

 俺が問い返すと同時に、空が割れた。

 赤い空を切り裂くように、巨大なホログラムの数字が浮かび上がる。

【Phase 2:生存競争サバイバル

【タイムリミット:168時間】

「さあ、第二幕の始まりです。……今度は、少しだけルールが複雑になりますわよ?」

 少女の冷ややかな微笑と共に、俺の右目がかつてないほどの激痛を上げた。

第16話、お読みいただきありがとうございました!

ついに始まった第2章【世界再構築編】。

バグを壊したはずが、学園はより歪んだ姿へと作り変えられ、生徒たちの記憶からも事件が消去されてしまいました。

そして現れた新たな敵(?)エニグマ。

168時間(7日間)という新たな期限の中で、カイたちは何を強いられるのか……。

新章も加速していきます!ぜひ☆☆☆☆☆での応援、よろしくお願いします!

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