表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/81

71 コディの秘密

 杉咲家のマンションでは、ようやく機嫌を直したエリンを抱っこしたリリアーナが、「おやすみ、ルル」と声をかけ、自分の部屋へ引き上げていったところだ。


 ひとりになったルルは、「さて、そろそろやるかな」と小さく呟き、自分の部屋へ向かう。室内に入ると、邪魔が入らないように鍵をかける。

 机の上には、精巧なミニチュアのドールハウスが置かれている。その小さな玄関のドアを、コンコンと優しく叩き、


「エマ、ちょっといいかい」と声をかけた。


 きぃ、と小さなドアが開き、中からエマが姿を現した。


 ルルの部屋のドールハウスは、エマのためにルルが手作りした小さな家だ。壁や屋根の色も部屋のつくりも、できるかぎりエマの希望どおりにしてある。空間魔法がかかった家の中は、見た目よりもずっと広い。

 家具はまだ少なくて、エマの働きぶりに合わせて、ルルが少しずつ増やしていくことになっている。


「休憩してるところ悪いけど、あいつに聞きたいことがあるんだ。ちょっと呼び出してくれるか?」


 ルルがそう言うと、エマは小さく頷いた。

 机の前に座って待つこと、およそ一分。

 ドールハウスの前に、エマとは違うクッキーもどき――もといエイドスが、音もなく姿を現した。


「お、早かったな、あっちの家には、気づかれるようなへまはしてないよな」


 その言葉に、頷いたのは、拓海にくっついているコディだった。


「確認したいことがあって呼んだんだ。今日、リリアーナが皇子の家に行ったけど、身元がバレるような情報は渡してないだろうな?」


 ルルの問いかけに、コディはためらいがちに、こくんと頷く。

 その反応に、ルルの目が探るように細くなる。


「まさか、一緒に暮らしてるからって、情が移ったんじゃないだろうね」


 ルルの一言に、コディはそわそわと落ち着かなくなった。

 ルルは、はあーっと大きくため息をつくと、ドールハウスのドアをぱたんと開けて、中からエマを引っ張り出した。


「おい。術者のあたいを裏切るような真似をしたら、お前の妹がどうなるか……分かるよな?」


 縄で縛られ、身動き一つ取れないエマが、大粒の涙を浮かべてコディを見上げる。その様子を見たコディは、全身を小刻みに震わせながら、きっとルルをにらみつけた。


「あ? 妹に何かしたら、許さない? あー、はい、はい。お前さんが言われたことをちゃんとするなら、エマを傷つけるようなことはしないさ……だから、いいか。あっちの家の情報収集と、リリアーナの情報を遮断すること。その二つは、忘れるなよ」


 思わず抗議をしようとしたコディの前に、エマが立ちふさがり、ふるふると首を振る。自分のために、やめてと言わんばかりの、必死な姿だった。


「ほらほら、お前の妹もこう言ってんだ、しっかり仕事しろよ」


 コディは一瞬、ルルにきつい視線を向けるが、エマの肩にそっと手を置き、互いの目を見て小さく頷くと、闇の中へと消えていった。


「……どうだ。もう、コディは帰ったか?」


 ルルが尋ねると、エマが頷いた。


「悪かったな、縛って。痛くなかったか?」


 ルルがエマの縄を丁寧にほどいてやる。


「あ、大丈夫? なら、よかった。それにしても、演技うまかったぞ、エマ。コディのやつ、すっかり騙されてさ。でも、ちょっとやり過ぎたかな?」


 ルルがエマをのぞき込むと、エマは顔を横に振る。


「え、兄ちゃんはお調子者だから、これくらいプレッシャーを与えとかないと、まともに働かない? あー、それは、あるかもな。それにしても、ほんと、男どもの尻を叩かなきゃいけないなんて、こっちは大変だよな」


 ルルとエマは顔を見合わせて、小さく笑った。


「そうだ。今日のご褒美に、前からお願いされてたドレッサーを作ってやるからな」


 その言葉を聞いて、エマが嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。


「よしよし、あんまり騒ぐと寝られなくなるぞ。明日も、お嬢にくっついて、学校に行くんだからな」


 ルルがドールハウスのドアを開けてやると、エマが中へと入っていく。

 階段を上り、大きな窓のある部屋で、エマはベッドにもぐりこむ。

 近いうちに届くドレッサーを夢見ながら、そっと目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ