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18 和解は山盛りご飯で

 ザックが冷たくなった料理を温めている間、ユリウスと拓海は、ダイニングテーブルで向かい合っていた。


「拓海様、今回は」

「待ってください、ユリウスさん。先に、僕に話をさせてください」


 拓海はユリウスの言葉を遮ると、真剣な面持ち話し出した。


「僕、皇子教育を受けようと思います」


 意外な申し出に、ユリウスは拓海をまじまじと見つめる。ハンガーストライキをする程、拒否していた。それなのに皇子教育を受ける? これは本心なのか?


「……気持ちが変わった理由を、教えてもらえますか?」


 ユリウスは、つい探るような目で拓海を見てしまう。


「僕、魔法が使えるようになりたいんです。さっきの仮面の人や、獣、えっと魔獣を前にして、僕は何も出来なかった。ユリウスさんに庇ってもらうばかりで、足手まといだった……だから、僕は、魔法を勉強して強くなりたいです!」

「…………」

「駄目ですか? ……あれだけ皇子教育は受けないと騒いでいたから、呆れられても仕方ないけど……」


「いえ、そんなことは……ただ、本当にそれで、いいのですか?」

「はい。勿論です。僕、頑張りますから。だから、ユリウスさん。お願いです。僕の家庭教師になって下さい」


 拓海が、がばっと頭を下げてきた。その姿は偽りではなく、真摯な思いが伝わって来る。でも、ユリウスは、すぐに返事が出来ない。家庭教師を続けるべきか、躊躇していた。

 ここに残るのは、俺とザック……そして拓海にとって、正解なんだろうか……。

 ふと、ザックを見る。ザックは、全てを理解しているように頷いた。お前が、背中を押してくれるのなら――。


「わかりました。謹んでお受けいたします。なので、拓海様。顔を上げてください」

「ありがとう。ユリウスさん!」


 嬉しそうな拓海。人間界に残る事を決めたユリウス。二人は静かに見つめ合った。そこへ、ザックの声が割って入る。


「そうと決まったら、ささ、晩飯にしましょう」


 二人の前に、ザックが料理を置く。それは拓海の為にと、ザックが真心こめて作ったものだ。


「俺も手伝うよ」


 ユリウスが配膳の為、席を立った。その後ろ姿に、拓海がぽつりと呟く。


「僕はもう、ユリウスさんに怪我をして欲しくないんです……」


 小さな声だった。なのに、振り返ったザックと目が合った。そして、とても優しい目で微笑まれた。


 え? え? 聞かれた? そんな馬鹿な。


 焦る拓海の前に、次々に美味しそうな料理が運ばれて来る。やがて。テーブルを埋め尽くしていくその品数に、流石に拓海が焦り出した。


「ちょ、ちょっと待って下さい。こんなに沢山あるんですか?」

「はい。張り切って作ったんですよ。あ、冷蔵庫に、拓海様に食べてもらえなかった料理も入ってます。食後のデザートも用意してあるんで、今夜はお腹一杯、食べてくださいね」


 嬉しそうに山盛りのご飯を目の前に置くザックを見て、拓海は誓う。食事を抜くなんて馬鹿な事は二度としないと。

 二人のやり取りを見ていたユリウスは、笑いを堪えながら、席に着く。


「では、食事にしましょう」


 久し振りの三人揃っての夕食が始まった。


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