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77話 愛という呪い

色々落ち着いた頃……テーブルが用意され囲うように私、レックス、ヴァルネシアが座る。

他のものを入れないのは彼なりの示しということだろうか。


「世界が滅ぶってのは……どういうことだ?」


開口一番、無駄話は避けたいらしくレックスが問う。


「あぁ、そうだな……そこからか」


ヴァルネシアは1度面倒くさそうに……されど仕方ない、と言った様子で例の『映像』を出現させた。


「まずはこれを見ろ」


そこに映し出されたものは……それぞれ人族、獣人族、魔族、天神族、各領地にある『不死王』を封印していたそれらが今にも解けそうな様子で周囲の生命がざわついている……って、やばくない?


「えっと……どうしてこうなってんの……」


「各地の封印が解けかかっている。考えられる理由は2つだ」


既に調べは付いているらしい。映像が閉じられる。


「1つ、俺がお前を1度殺したこと」


「えっ……やっぱり私、ちゃんと死んでた?」


「『断罪の剣』は確かだ。間違いなく心の臓を貫いて……死んだ」


なるほどなるほど……つまるところ、私が施した分の封印が解けかけてるってことかな。


「2つ、これは推測だが……お前の存在だ。不死王」


「あ?」


蚊帳の外になりつつあったレックスへ、今度は視線が向けられる。


「推測に過ぎないが……お前の復活に伴って呪いが強まっているのだと……俺は考えている」


「根拠は?」


「推測に過ぎぬと言っているだろう」


まーた2人がバチバチになってる……

仕方ない。多分私がここに居る意味でもあるし仲裁するとしよう。


「ありえない話じゃないよ。実際、『不死王の骨』なんか……ほぼ確実にそうだろうし」


「……フィーナが言うなら、そうか」


「……続けていいか?」


なんか気まずい空気にしちゃったよ。ヴァルネシアが言葉を吐くまで随分間があった。


「現状をどうするかだが…」


おっと……?今、レックスに目をやったね?


「……悪いけどそれだけは無しだよ」


「いいや、今回ばかりは引く訳にはいかん」


……さっきも問答無用で刺されたけどね?


「他にも方法はあるでしょ」


「無いな。『心臓』が動き始めている」


「っ……そっか……それは急がなきゃだ」


「何の話だ?フィーナ」


レックスはまたも話に着いていけていない。まぁそうだよね。自分の『死』について話をしているとは思うまい。


私が言葉を選ぶよりも先に、ヴァルネシアが告げる。


「不死王よ……貴様を、この世界から抹消する」


「……はぁ?」


意味が分からない、だがこれが1番手っ取り早い方法だった。



 * * *



「どういうつもりだ?」


疑問を投げる。当然だろう。


「言っただろう。お前という存在自体をこの世界から『抹消』させると」


「だからそれはっ」


「うるさいぞ『色彩』。今お前が誰のおかげで生きていると思っている」


眼がマジだった。でも、引けないんだけど、こればっかりは…


「こいつを生かし貴様へと解放させたのは貴様と対等に『交渉』するためだ。昔のお前なら不可能なことだったろうが……今の貴様は違うだろう?」


「……なるほどな」


レックスはヴァルネシアの言葉を吟味し……しばらくして、口を開いた。


「つまりは……俺が死ねば全員幸せに終われる。だから死んでくれってことだろ?」


「……あぁ、そうなるな」


「できんのか?」


するしないではなく、『出来る出来ない』。レックスは不死だからそこに行き着くのは当たり前だった。


「俺は『忘却』だ。世界からお前という存在を……『忘却』させる」


「……ほう?」


レックスはニヤリと笑った。まるで、その態度はまるで……もう自身の中で結論づけた様に。


「待って!」


口が勝手に動いていた。だって、だってこのままだと……レックスは……


「きっと他にも方法は」


「フィーナ」


私の言葉を、レックスが遮った。


「少し、話そうか」


「あ─────」


あの時と同じ、楽しそうな笑みだった。



 * * *



「少しでいい……2人にさせてくれるか?」


「あぁ、構わん」


ヴァルネシアがどこかへ去り2人きりに。

ようやく、また面と向かって話せる機会がやってきたわけだ。


「……なんつー顔してんだ。ほら、座れよ」


「うるさぃ……」


フィーナは今にも泣き出しそうだった。

あぁもう、大事な話をしようと思っていたのにこれでは……


「いい顔が台無しだろう」


「確かに私は美少女だけどぉ……だって、だって……」


それ以上言葉が続かなかった。


─────だと言うのに、俺の心は少し、暖かさを覚えていた。


これは1000年前の、最後の日にも感じた『それ』と似ていて……決して、捨てちゃいけないものだ。


「フィーナ……1回しか言わない。聞いてくれるか?」


「……嫌だ、聞いたらレックスは……」


「悪いが意地でも聞いてもらう。俺ももう、曲げられないんでね」


やはり座ってるとダメだな。立ち上がり、耳を塞ぐフィーナの手を無理やり引っ張り……抱き寄せる。



あぁ、言う。言ってしまおう。この気持ちを全部吐いて─────『呪い()』として、彼女に残すために。


「俺は、お前のおかげで……救われた」


初めは興味本位だった。実際面白いやつだった。


「俺は世界に一人ぼっちになっていた。そんな俺に、お前は共感してくれた。1人じゃなかったって、思えたんだ」


だから死んで欲しくないんだ。生きていてほしい。この温もりを、永遠に……


「身勝手だって分かってる。でも俺は……もう、充分お前から貰った。だから……もう、いいんだ」


抱きしめる力が強くなる。もう離したくない。本当はずっと一緒に、平和に暮らしていたい。


でも世界はそれを許さない。理外を始めた俺に容赦しない。運命は、残酷なのだから。


「言いたいことはこれで全部だ。お前も、もう俺のことは忘れてくれていい。幸せになって……あぁ、でもやっぱり時々は思い出して墓参りには」


「……バカ!」


「はっ?」


身長差を活かした顎への鋭い頭突き……会話の流れがフィーナへと渡った。



 * * *



もう充分?満足した?身勝手だって分かってる?


「本当に身勝手!バカ!バカバカ!なんで、なんでそんな……こと言うの……!」


あぁダメだ。最後まで威勢よく言えない。幾ら言っても彼の中ではもう決めているのだろうと理解はしているからだ。……それでも……


「私だって貴方に救われた!」


叫ぶ。


初めては見透かしたように心内を当てられた。


「貴方から貰ったものが、今も私を満たしてくれている」


本来見れないはずの未来()。それらを見て、出会ってこれたのは全部、全部彼がくれた『呪い()』があったから。


「早いよ……返し切れないよ、まだ、まだまだ納得いくぐらい貴方に恩返し出来てない!」


「いや……」


「いやも何もない!」


今は私の番。絶対……絶対離してやらない。


「生きたいって言ってよ!私と一緒に─────未来を!」


「っ─────」


揺れた。もう一押し─────


「時間切れだ!」


ヴァルネシアが、割って入った。



 * * *



「『不死王の心臓』が動き出した!」


「っフィーナ!」


「いやっ!絶対……」


嫌だ嫌だ嫌だ。離したくない。もう離れないって決めたんだ。だから……


そんな私を振りほどいて、レックスは目線を合わせるように少し屈んだ。


「フィーナ……俺のことは、忘れろ」


「やだ!」


「……ヴァルネシア。頼む」


ヴァルネシアは珍しく躊躇った素振りをしたものの……何か手を振って─────



ここからの記憶は、無い。



 * * *



「本当に良かったのか?」


「あぁ、本来ならこれは俺が払うべき罪だ。その精算をこいつに任していたこと自体、おかしな話だったんだよ」


「そうか……やはり貴様、変わったのだな」


「ははっ、あいつといりゃ嫌でもな」


こんな強引な『別れ』。きっと怒るだろうな。


いや……もう、悲しんで、名前を呼ぶことも……無いのか。少し寂しいな。


「今は『色彩』から奪っただけだ。まだ戻せるが」


「構わん。俺が『心臓』を何とかしたら後は頼む」


「……承知した」


最後の一仕事だ。少し……派手に行こうか。



 * * *



ヴァルネシアは、こうも人は変わるのだと……感心していた。


「ただ、罪は消えん」


それは世界の理だ。間違ってはならない、重要な部分。だから……仕方ないのだ。もう、こうするしか全てを終わらせる方法は無いだろうから。


だからヴァルネシアも()()の力を振り絞り念じた。


「『世界』よ。彼の者の全てを……『忘却』の彼方へ還せ」


『世界』への異能の発動。代償など払えるものは自分自身のみ。


初めからそうするつもりだった。


一度は殺そうとしたがあれはあくまでも恨みを晴らすため─────最終的にはこれを目的としていた。


段々と、体が薄くなっていく。力が失われていることを理解する。


「後は任せた……か」


悪い言葉では無いな。


少し満たされた感覚の中……ヴァルネシアは消滅した。







ようやくここまで来れたという感じ……

ちなみにですが、この時点で不死王→フィーナの恋慕はあります。愛という感情を知らなかったけど、フィーナのお陰で知ったということです。逆は無かったです。ですが人生における恩人であることに間違いはないのです。

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