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75話 破壊されし役割

「役割を聞いた時点で察しては居たが思っていたよりも…規格外ではあるな」


空間が歪んだ。


「だがそもそもとして近づけない。そこで詰んでいるわけだ」


空間が歪んだ。


「仮に、思いつく限りでこの『呪い』を突破する術があるとすれば…」


空間が歪んだ。



─────爆ぜた。



「自身の変化を止める…とかか?ただそれには当然…それなりの対価が必要と思えるが」


一瞬だった。一瞬にして眼前にリュシが現れた。それも…最高に加速した状態の。


「はぁぁぁぁ!!!!!」


拳が勢いのまま放たれる。最高の加速に加え『溜め』まである。これは…


「少し力の認識を誤ったか…?」


こいつの異能はゼルのように単純なものとは違うらしい。


レックスの視界が、弾けた。



 * * *



「2回目」


ネタが分かった気がする。思えば最初のフィーナとの隔離を仕組み実践したのはこいつだろうということも。


『存在そのものの隔離』。それの応用だ。


例えばレックスという存在を世界から『隔離』することによって動きも何もかもがこちら側での意味を為さなくなる。


つまりは『静止』というわけだ。想像を遥かに超える意味合いだったわけだが…


これがまた厄介だった。



…………


……………………



「5回目…」


一撃はゼルには及ばない。されど速度と知性は…リュシの方が遥かに上を行っている。


「どうした!不死王よ!私一人さえ止められぬか!」


ありえない速度の乱打。躱すことも受けることも許されぬそれらはレックスの精神を蝕んでいく。


勝てるのか…?そもそも、時間を掛けすぎればフィーナに危険が…


「必ず…何かを犠牲にしている。お前らは」


血を吐きながら倒れる。視界も霞んでいく。


それでも次がある。だから…レックスは決して折れぬ強さを持っているのだ。



 * * *



「29回目」


仮に『存在そのものの隔離』だとして、何を隔離すればこのような速度を得られる?それともこの速度は別の力なのか?


「余所見とはまだ元気のようだな!」


「もううんざりだ!」


戦い方の癖が分かってきたからか多少なりとも回避は出来るようになってきた。まぁ…限界はあるわけだが。



…………


……………………



「41回目」


違うな。考え方が違った。ようやく掴んできた。


空間が歪んだ。


この音を。


…………


「43回目」


力の本質は『隔離』で間違いない。ただリュシの扱っているのは…その『隔離』によって起こる戻そうとする力、だ。


「てめぇ自身を『隔離』し続けている。その速度は現実への埋め合わせによる反動だ」


「っ!」


どいつもこいつも…天神族ってのは分かりやすい反応をしてくれるねぇ。大当たりだ。


「だから俺の呪いも無視して接近できる。一瞬で溜めを含んだ一撃も作れる」


もっと早く気付くべきだった。空間の歪みに。


言い当てられたからか、先ほどよりも乱雑に拳が放たれる。


「念のため…確認しておこうか」


躱して反撃の蹴りを放つ…が、リュシの身体を通り抜けて空ぶった。


「ははっ…もう、消えかかってんな?」


「黙れ!!」


怒りの一撃を貰い、死に絶える。



…………



「44回目」


代償はその力自体の危険性。他に使う分には消費が激しいとかなのだろうが自身に使うのが最も使い勝手がよく今なお優勢を保っている。


「俺に攻撃するたびに隔離から戻している。なら…これも弱点か」


「何っ!?」


加速している拳に合わせて…掌底を突き出して受け止める。


ただ受け止め切れなかったため、衝撃により腕の骨が粉砕骨折したが…手のひらは生きている。


指に力を込めリュシの拳を掴んだ。


今度は空振らない。ついに触れることに成功した。


「捕まえた」


「こんなものっ!」


すぐに振りぬかれる。が…おっと、気付いたようだな。


『隔離』を使う前のタイミングでしっかりと触れたんだ。当然…その腕を呪いが蝕む。


「がぁぁぁぁぁ!!!??」


「ゼルよりも……厄介だったよアンタ」


別にここで掴まなくともいずれは異能の使い過ぎでリュシという存在そのものがこの世界から隔離されていた。


すなわちこいつ自身、レックスに勝つつもりなど毛頭無かったわけだ。


「ってことは…こいつも時間稼ぎってわけか」


リュシが力尽き倒れた頃…

恐らくは最後となる、三人目の刺客が戻ってきた。




 * * *



「…フィーナはどうした?」


「今は関係ない」


片目を長い前髪で隠した、小柄な天神の少女。

露出しているもう片方の瞳だけが、無感情にレックスを見据えていた。


「そうか……1発殴れば口開くか?」


レックスはいい加減……この展開に飽き飽きしていた。どうせ自分が勝つのだから。


先の2人を見ていなかったのだろうか?


「……さっさと、かかってこい」


「あぁ、そうだな」


レックスは1歩足を踏み出し─────


「─────は?」


「のろま」


「がっ…」


頭蓋が割れた。




 * * *



なるほどなるほど……あくまで抵抗は止めないと。


「正直見くびってた」


しょうがないだろう。見た目が幼い上で女体の天神だ。先入観があるのはどうしたって……


「……一旦、お返しだ!」


立ち上がりながら……背後へ立つカイラに向けて、固めた拳を振るった。が……空振り。


「ばか」


まただ……また……レックスとカイラの立ち位置が離れていた。

気付いたら首が落ちていた。


…………


「2回目」


少し再生が遅いことに気が付いた。恐らく仕込んでいやがる剣に『断罪の剣』を使っている。ゼルと同じだ。


ゼルは途中から楽しくなったのか純粋に殴りあってくれたが……カイルからは同じ雰囲気はしない。ただ淡々と、こちらを見つめている。


「何つったってるの?」


「そこだ!」


声の方に腕をやる……も、空振り。


「どこみてるの?」


「ちっ」


上、左右前方……どこからでも、後手になる。


「……無理、諦めて」


「……はっ」



…………



……………………



「10回目」


馬鹿でも分かる。ひとまずこいつの力は『対象を移動させる』といったところだろう。それでレックスの位置も『呪い』自体も移動かその類のことをされているのだ。


「……まるで条件も弱点も見えん……」


戦い方はリュシに似ている。リュシは加速の過程を『隔離』することによる高速移動かつ高火力の一撃。

カイラはそもそも加速のために動いていない。『瞬間移動』のようなものだ。


「そろそろ来るだろ?」


「っ」


10回目にもなると癖やらが見えてくる。その短剣を持っての首への一撃を掴み取る。

どうせ抜けられるのは分かっている……が、むざむざ殺されてやるつもりはない。


「…むだ」


「やってみなきゃ分かんねえだろ!」


拳を握り締め……放つ、が直前でやはり消え……


無かった。ただ空振りはしたが。


「……ほう?」


「ちっ」


条件が見えてきた気がする。



…………



……………………



…………………………………………



「30回目」

掴まれると抜けれはする。ただ余裕が無さそうだからか遠くへは消えない。

剣の扱いはそこそこ。そもそも非力なのだろうか急所狙いが顕著だ。

遠くじゃなくてもずらされている?可能性としてはありうる。



…………



……………………



「43回目」


「はぁっ……はぁ……」


「息、上がってきてるぞ?」


「…………問題ない」


カイラは目を瞑り……自身の胸に、手を当てた。


─────来る。


「っ!」


「ははっ!分かってきたなぁ!」


ジャストタイミング。短剣を振るう起こりの時点で掌底で押さえ付け接近。


「離れろっ!」


「おっと……」


随分と遠く……あ?こりゃ……空か?




…………



……………………



…………………………………………




「46回目」

空中で2回、落下で1回死んだ。それは置いておく。

それよりも、だ。つい先程の現象……急な回復。あれは恐らく『異能』によるもの。


「あいつは確か……目を瞑って、胸に手を……」


どっちだ?発動条件は。


「まだ生きてるんだ」


「……そろそろ諦めてもいいんだぜ?」


「こっちのセリフ」



…………



「50回目」

2択。このどちらかが恐らく発動条件であり……弱点に付随するなにかでは無いかと思った。

希望的観測になるがこうも弱点さえ見えないのはおかしいと感じたからだ。


「今度はこっちから仕掛けさせてもらおうか!」


とはいえ今のレックスには大した力はない。何せ呪いがどこかへ消えている。純粋な力しか持ちえていない。


それでも普通のものならば避けることさえも許さぬ高速の一撃を放ち……ずらされる。


が……そのありえない程の風圧でようやく……目に入った。


「目だな?不自然だと思ってたんだ…」


「……っ」


顰めっ面で片目を瞑るカイラの顔が。


〜キャラ設定紹介〜

リュシ=エリュシオン(天神族)

『静止』の役割を持つ薄水色髪青眼の天神。生真面目で自身の全力を持って役割を全うする。


前回からなんですけどちょっとキャラの容姿を文に入れるの忘れててもう面倒なのでここで……

『役割』によって『異能』が決まるのではなく、『異能』の主な扱いから『役割』が決められます。

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