65話 分からないけど、それでも。
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つまるところ、ヴィレアは夢を見る少女だった、そういう結論付けが私の中で行われた。
私に焦がれ、禁忌を犯し結果として最も大事な人を悲しませ命までもを奪った。
「怖いんでしょ…だから物理的な存在にしか使ってない」
自分の身体を治せるのだから理論上は可能なはずだ。
なのにしていない。矛盾している。
「それと…アルベルトが自らの命を絶ったその意味を理解したから…かな?」
「っ…お姉様…今のは少し…頭に来ました」
「おー怖いね…」
言葉ではそう言うが…正直なところ、もう脅威として感じなかった。
あれほど遠ざけていた彼女のことをここまで知ることができたからだろうか。
「なら私も…本気、出すよ」
詠唱している暇はないから『封印虹陣』は無し。そもそも必要じゃない。
ただの元素精霊と封印を合わせて攻める。
単純にフィーナは言うが普通のものであれば不可能に近しい。精霊との親和性が異様な程に高いフィーナだから実現出来ることだ。
「流石は…お姉様」
封印魔術のみを器用に防ぎながらこちらへと反撃が放たれる。
「っ…」
「いっ…」
お互い同時に被弾。すぐさま次へ。
「こんなに家を荒らしていいの?」
「構いませんよ!後々から戻せますから!」
よく動く口だ。随分と余裕があるみたいだね。
「じゃあこういうのはどうっ」
遥か上空を起点に…家ごと覆う範囲で魔術を放つ。
「大事なんでしょ!ここが…唯一、ヴィレアに残ったものだから」
「いやっ」
ヴィレアは全生命力を使う勢いで攻撃に向けて防御を張った。
─────押し切れない。そう判断した直後には魔術の維持を諦め次へ。
隙だらけのお腹に攻撃。その衝撃波で家の壁を突き破り、そのまま外へ出る。
「やっと隙を見せてくれた」
「お姉様こそ─────」
「家の中はヴィレアの独壇場だったからね。外は貰ったよ」
直後、あちこちから精霊が操る封鎖が放たれヴィレアを捕えたのだった。
* * *
「いつの間にっ…」
「さっきの応戦中にね」
「…そんなの…私はお姉様を見るので必死だったのに…」
悔しそうな表情を浮かべるヴィレア。
「届かないのは分かっていたことでしょ」
「えぇ…でも、追いつきたいと願ってしまうのです…」
「だからって…」
続く言葉が出ない。…私も、憧れとは違うが似た状況になったことはある。だから否定出来ないんだ。
「…私の負けです。お姉様」
「うん、そうだね…魔力も切れたみたいだし」
「……これからどうすればいいんでしょう?」
「え…?」
いや…確かに唐突に始まった魔術戦だったからなんの取り決めもしてないや。
うーん…特に罪に問いたいとかじゃないしなぁ…
「私は聞きたいこと聞けたし…もう戦意も無いみたいだから、好きにしたらいいよ」
「…私は未だよく分かりません。自分がどうしたいのか、どうするべきなのか」
助けを求めるようだった。きっともう、縋れるものがわずかしかなくて…その1つが私だから。
でも…私に言えることはただ一つだけだ。
「…私にも、分かんないよ。もう…」
「そう、ですか……」
俯くヴィレア。…この戦いに意味は無かったと断言出来る。
私では結局のところヴィレアの止まった時間を動かすことは出来ない。その答えを持っていないから。
でもだからって……
相反する気持ちが、弱々しく項垂れるヴィレアを見て確信に変わった。
「また何時でも…頼ってくれたらいいよ。私、ヴィレアのこと…嫌いじゃないし…それに、お姉ちゃん、だからね」
「…!」
本心だ。これが私の出した答え。
「お姉…様…?」
「…うん」
「お姉様ぁ!」
ゆっくり、ゆっくりと…こちらへ、ヴィレアが歩み寄る。
そしてそのまま─────私に、力強く抱き着いた。
「ごめんなさい…お姉様!ごめんなさい…!ごめんなさい…!」
「…私も、ごめんね」
もっと早くこうすることが出来たんじゃないだろうか。
もっと何か…いい方法があったんじゃないだろうか。
分からない。何もかもが分からなかった。
これは答えのない感情の問題だったのだから。
私はヴィレアの気持ちを理解し助けたいと思ってしまった。だから─────頼れる姉として居続けよう。
そう信念を持って…抱き締める腕に力を込めた。
* * *
「ただいまー…」
「おかえりなさいししょ…誰ですか?」
「うーん…『命再の魔女』本人?」
どう伝えるか悩んだ末、素直に言ってみれば…エマは難しい顔をして、そして一言。
「…馬鹿なんですか?」
宿に戻った直後、初手から罵倒されて辛い…
仕方ないじゃん!捨てられた子犬みたいな目で「行っちゃうのですか?」って訴えられたらさぁ…
「…お姉様、そちらの方が…今のお弟子さん達ですか?」
「うん、エマはもう卒業したけど…そこのルカはそうだよ」
「…エマです。よろしくお願いします」
「ルカです!お姉さん!」
エマはなんとも言えない様子で、ルカはいつも通り挨拶を。
ふふん、私の弟子はちゃんと挨拶できるいい子ちゃんだからね!
「これはご丁寧に…私はお姉様の弟子…の、アルベルト様の弟子のヴィレア・ヴィンセントと申します」
「本当にその人が『命再の魔女』、なんですか?」
「…世間にはそう呼ばれていましたね」
エマは私がルヴィアを連れてヴィレア宅に向かっている途中魔導図書館にて『命再の魔女』について調べていたらしい。だから余計に違和感を持っているんだろう。
幼さの残る顔立ちに、エマよりも低い身長。疑うのは無理もない。が…間違いなく彼女こそが『命再の魔女』なのだ。
「大丈夫なんですか?」
「悪い子では無いよ」
「禁忌を犯したんでしょう?」
「…私もやったことあるし…それ言ったらエマも、だよ?」
「…」
エマの『精神干渉』は監督者無しの使用は原則禁止だし、ここに来るのに『転移』を使っている。
残念だったね、こういうのは大抵「バレなきゃいい」で世の中回ってる。
「お姉様…悪い顔になってますよ」
「バレなきゃいいんだよ、とでも言いたげですね」
「流石はエマ…」
なんで分かるかなぁ…
「まぁ、もういいです。師匠が拾ってくるのはいつもの事ですし…私はもう寝ますおやすみなさい」
ほんとに…?あぁやばまた不機嫌そうになってる…
「どうしよ…エマ気が立ってるみたい…」
「なら…私がどうにかしておきましょう」
えぇ…初対面のヴィレアがどうにか出来ると思えないけど…まぁいいや。なんかワクワクした感じでエマの部屋に向かっていったし…
「ね、主…今の人誰?」
入れ違いで入ってきたミツハが私の顔を覗いて尋ねる。
ミツハは眠っていたらしく少し髪が跳ねている。
…アートみたい。
「ミツハ、直してあげるからおいで」
「…ん」
トテトテトテ、ポスッ…
自然な流れで私を椅子にしたね。私もモフモフがすぐ近くに来たので嬉しい訳だが。
「…で、主、さっきのは誰なの?」
「んー…簡単に言うと、大昔の弟子のその弟子…私の孫弟子だよ」
「ふーん…」
ミツハはそれ以降興味無さそうに、ゆらゆらと尻尾を揺らすだけだった。
「連れてきたの失敗だったのかなぁ…」
エマを怒らせてなきゃいいんだけど。
* * *
〜翌朝〜
「ふぁ…おはよ…」
「おはようございます!師匠」
「おはようございます。お姉様」
…私が起きて宿の食堂へ向かうと、ニコニコと笑顔なヴィレアとエマが先に座っていた。
「えっと…何があったの…一晩で…」
「話の分かる方だったので…」
「趣味の合う友人になりました」
エマはうっとりと、ヴィレアはルンルンと…ほんとに何があったの…?怖すぎるんだけど。
二人で私に仕返ししようみたいに企ててるとか…!?
「…私、あんまりお腹すいてないやー…二度寝してくるね」
「あら、そうでしたか…ごゆっくり」
「…寝過ぎちゃダメですよ。師匠」
棒読みで言って食堂を出る。そして…階段の裏に潜んで、会話を盗み聞くことに。
「…主、何してるの?」
「しっ、今大事なとこ」
「ふーん…じゃあ私も」
欠伸をしながら起きてきたミツハが隣にちょこんと座る。
「魔女様、何してるです?」
「…盗み聞き」
「面白そうです!僕もやるです!」
続いてルカ…
「あれ?フィーナさん」
フレアも以下略。
皆で集まって盗み聞き。冷静に考えてよくバレなかったものだ。
そして─────私は、ここで知ることになる。
「…師匠はですね、寝顔が可愛くて…よく寝言を漏らすんですよ」
「そうなんですね!私にとって姉のような人でしたからそんな1面があったなんて…」
ん…?待って私の話?
「私はですね…お姉様は少し子供っぽいというか、大人ぶろうとする所があるじゃないですか?それでよく失敗するんですけど…それでもその後、隠れて努力して克服しようとするんです!」
「分かります!だからあんまり強く怒る気に慣れないんですよねぇ…」
…聞かない方が良かったかもしれない。
「主、顔真っ赤」
「いっそコロシテ…」
もう2人が仲良くしてくれたから…なんでもいいや。
どうにでもなーれ。
食堂で、また笑い声が響いた。
ヴィレアここまで立てていいのかな…いいよな可愛いし。ということでいい具合のポジションに。もう少し深堀するべきだったかもなぁとも思う。




