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53話 獣の叫び

────沈黙、後にフィーナは口を開いた。


「『大地よ、目覚めよ──ガイア・テラ』」


大地が一瞬にして隆起、魔術により創られた岩塊が『不死王の骨』目掛け飛来する。

『不死王の骨』は避けることはない。ただ岩塊の魔力を吸い取り、自身のものとすることで対応する。


「そう…何度も続くかな?『深淵よ、応えよ──ウンディーネ・ラグナ』」


続いて天が泣く。大雨が突然『不死王の骨』のみに降り注ぐ。大雨と言ってもただの雨粒ではない。

一つ一つが鋭く様々な効果を持ったそれだ。

『不死王の骨』は更に放り込まれた餌に歓喜し遠慮なくその全てを喰らった。


「あー……もう骨だからこれは要らないかな?『劫火よ、咆えよ──イフリート・ヴァルカン』」


湿った大地を乾かす熱が生み出され……やがて付近の自然を焼き尽くす焔へと成長する。『不死王の骨』の一部を焦がすほどに膨れた炎は、消えることなく白骨を燃やし続ける。


「こっから加速するよ……!『天穹よ、裂けよ──シルフ・ゼピュロス』」


炎に混じり風は嵐へと進化する。嵐と風の刃が悪戯に白骨を刻みながら燃やしていく。重ねれば重ねるほど、刃は早く強く、削り続けた。



4つの精霊王級の魔術。それらが繰り返し『不死王の骨』を攻め続ける。


途絶えることなく、正確無比に狙われ続けた『不死王の骨』は……一瞬、ほんの一瞬……再生を止めた。



 * * *



なるほど、その可能性も有り得たか。


再生は止まった。ただそれはお腹いっぱいになったのではなく……厄介な『敵』を見つけそちらにエネルギーを割くと決めたからだ。


「ま……呪いだからね。想定と違うことが起きても不思議でもなんでもない」


「どうします?師匠」


「ムキになって魔術を壊してばかりで……私たちに毛程も気付いてない。このまま仕掛けるよ」


もうこの際だ。二度とこのような事にならないようにするために……私の最大級を打ち込んでやろう。



…………


……………………


…………………………………………




ここで余談だが、フィーナの最高出力を誇る魔術は方陣の広さによって出力を変える。つまり規模が大きくなればなるほど、比例して出力を上げて封印する術というわけだ。もっと言えば……重ねた場合、それが恐らくは最大級な訳だが……果たして、『方陣』の定義とは?



フィーナ・レインヴェルの答えはこうだ


「私の魔力が広い範囲で存在してればその場で編めばいい」


広い範囲にフィーナの魔力を込めた魔石が散りばめられている。それ、すなわち……



 


フィーナが、杖を天高く掲げる。


「『色彩の魔女』フィーナ・レインヴェルの名のもとに────」


方陣が、大地に色彩を持って描かれる。それも……二重で。


「『我は虹の盟約を再び此処に結ぶ者なり。六つの原色を統べる王たちよ、我が声に耳を傾けよ。』」


方陣が光り輝き、杖へと収束していく。


「『我が血に呼応せよ。我が魔に集え。我が名に顕現せよ。』」


収束した光が……6つに別れてさらに広がりを見せる。その光は『不死王の骨』を包み込むようだった。


「『大地の王、ガイア・テラよ。深淵の王、ウンディーネ・ラグナよ。劫火の王、イフリート・ヴァルカンよ。天穹の王、シルフ・ゼピュロスよ。天光の王、ルミエル・ソレイルよ。永夜の王、ノクティス・エレボスよ。』」


先程も呼ばれた4体に2体加えて精霊王がフィーナとエマの周りに顕現する。それぞれがそれぞれの色に合わせた光の先へと向かって動き出す。


フィーナも、最後の発動の詠唱を口にする。


「『六つの色を重ね、七つの穢れを呑み込み、虹の円環を以て此の闇を永遠に封じよ。«封印虹陣(アーク・イリス)»』!」


世界で唯一無二の『色彩』が『不死王』を封印する。その光景は幻想的としか言いようがなかった。


重なる色は白のキャンバスを染めるようで、全ての精霊王を呼び出した様はまるで神の使いかと思わせた。


「今回は……少し多めに、ってね」


精霊と、フィーナ。それぞれが共鳴しているからこその御業だった。



そこから夜明けまで、フィーナは封印を維持し続け『再生』機構の完全制圧、魔術使用不可の状況の打破に成功した。



 * * *



~翌朝~


「集合!!!!」


ヴォルフが森のど真ん中で叫ぶと、すぐさま傍で動く影があった。


「「戦士長!!」」


ざっと見て20人程。まだ遠くで動く気配があるため50人ぐらいにはなるだろうが…


「半分は減ったか…それに…」


皆半死半生と言った様子。それでも尚目に宿る闘志が尽きているようには見えないのは流石だった。


「整列!」


「「「はっ!!!」」」


ヴォルフは今一度『森の戦士』の面々の顔を見つめる。

……なんて酷い顔だ。それなのに弱気なやつは1人も居ない。全く……自分もだが、一周まわって馬鹿なんじゃないかと思ってしまう。

そんなところで考え事はやめにして、ヴォルフは指示を告げる。


「今朝方!依姫様の準備が整った!」


おお!と、喜ばしい反応が多く見られた。


「……我々の役割は依姫様と聖獣様の道を拓く事だ!油断なきよう……最後の最後まで視力を尽くせ!」


「「はいっ!!」」


『森の戦士』等最後の仕事だ。ヴォルフも喜ばしい気持ちを1度切り替え、再び戦場を駆け出した。



 * * *



「あー……つっかれたぁ……私はもう動けないや」


「……」


「エマも寝ちゃったかー……どうしよ」


森の中で1晩封印魔術、しかも封印虹陣だ。魔力消費は半端じゃないし封印に成功してからは確実にするために再生機構の解析までしていたから余計に酷い。


「はぁー……ま、なんとかなるでしょー……なんか前もこうだったっけ…」


まぁ最前線を張るのはあまり私らしくないからね。

寧ろこれこそ私の役目だったと言える。


「いや、私とエマ……かな」


「魔女様〜!!どこでありますか〜!」


「!ルカ!」


……柔らかいとはいえ外で寝る羽目にならなくて済みそうだ。

いやぁ……ひと仕事したあとのルカの笑顔は……染みるねぇ。


「魔女様!大丈夫でありますか?」


「うん、昨日よりはだいぶ良くなったよ。……でも魔力切れで動けないから……誰か大人の人呼んできてほしいかな」


「なら心配いらない、主」


ひょっこり現れたミツハに、私はエマもろとも持ち上げられる。

相変わらずちっさいのに凄いね……


「有難いけど、ミツハ……その、肩を貸してくれればそれでいいんだけど」


「ダメ、時間もないから、このまま」


「……そっか」


私は押しの強いミツハに反論することを諦め、されるがまま避難所まで運ばれるのだった。



 * * *



フィーナの足止めで、ヴォルフ達の奮闘で、確かな『道』が出来た。


そのことをミツハは……実感していた。


「行こう、ハクレン」


『ァゥ!』


昨日はゆっくり眠ることができた。それも……みんなのおかげ。

だからミツハは今、先頭へと降り立った。その期待に応えるために。


『不死王の骨』、完成し切った『疑似迷宮』の入口でミツハは、ハクレンは……始める。


「『学び継ぐ者(ラーニング)«色彩の輝き»』」


ハクレンの体が1層魔力体のように形を崩し……そのままミツハの胸元に吸収されていく。

反対にミツハは魔力で出来た擬似的な虎の耳や尾が現れる。


「全部、全部────ぶっ壊してあげる」


その目は、獣のように獰猛で……



 * * *



ミツハは大木のような骨を伝って迷宮を突き進んだ。


着地し、踏み抜く。それの繰り返しで……ミツハが通った所には砕けた骨と虹色の光だけが残されていく。


「ぁぁぁぁぁ!!」


骨壷目掛けて止まることなく光が進む。ドラマ的な展開など獣は求めていない。現状の解決だけを求めて容赦なく、壊すことだけを目的としている。


「あはっ……あはっ……アハハッ!!」


壊す、壊す、壊す、全部全部全部……目の前の障害を破壊し尽くす。

持ちうる力全てで……邪魔するものに牙を剥く。


「ジャマっ!」


ミツハの目がようやく骨壷を捉えた。


空中で踏ん張りを効かせて……一瞬で、距離を無くした。


ここまでは順調だった。ここまでは……


確かに『不死王の骨』は再生機能を封印によって失っていた。

ただそのせいか関係は無いのかは分からないが……『不死王の骨』は代わりに意思に近しいものを得ていた。


だから、ミツハを捕らえるように骨が展開されたのだ。


「っ…!」


前後左右、全てから害するものを排除するための鋭い骨が差し出される。ミツハはこれ自体は回避に成功したものの……隙を作ってしまった。


「しまったっ!」


骨を何重にも重ねた『檻』がミツハを囲った。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


前方、破壊……しかしすぐに他から補充。

右方、左方、後方……その全てが同じ結果だ。


「…………マズイ……」


気のせいではない。先程よりも……迫ってきている。

そういうことかと……ミツハは察した。


ただ閉じ込めるだけじゃなく、狙いは圧殺。


こちらが原始的に壊そうとするなら、あちらも原始的に殺そうとしているというわけで…


「最悪は…」


骨壷を壊すために備えていた術を使い無理にでも抜け出す。

それだけは決めておいてミツハは思考をフル回転させる。


「……だから……────で……なら……」


今この瞬間に、『道』が途絶えた感覚があった。




ちょっとここからの展開詰まってるので暫く投稿お休みかもです……!申し訳ないm(_ _)m

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