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第十一章⑧『運命の邂逅』
「その剣を納めてください――」
殺伐とした場に相応しくないほどに、どこまでも清廉で美しい声が、シャムスの鼓膜を撫でた。
あどけない少年もしくは少女ともとれる不思議な音色に、シャムスが虚を衝かれている隙に、何かが王の剣を封じた。
王の手を剣ごと縛っているのは、丁度真下からいつのまにか生えた一本の枝木。
天高き太陽を仰ぐように地面から顔を出し、緑の羽を揺らす枝木から、白く清らかな花が咲いた。
甘く清廉な花香は王様の鼻孔を掠め、苛立ちに燻っていた王の心を一瞬だけ鎮めた。
地面から前触れもなく花の枝木が――しかも、この私に一切気取られずに……一体何者だ。
一瞬でも自分を出し抜いたつもりでいる正体不明の刺客。
シャムスは鬼気迫る勢いで振り返った。
そこで初めてシャムスは、己自身の運命と対峙した。
シャムスの嫌悪する神が新たに啓示した運命を象徴する無垢なる存在もまた――清廉な深緑の瞳に己の運命を初めて映した。
全てを焼き尽くす烈火の太陽、冷凛とした美しき月が交じり合ったような、激しさと冷酷さを湛えたシャムスの金の瞳と、あまりにも対照的な―慈しみに澄んだ大いなる緑の海原を映したような深緑の瞳。
二つの眼差しが交差した瞬間、双方の顔にはどことなく無邪気さを孕んだ笑みが自然と浮かんでいた。
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