第六章⑨『神々の失望』
神の血を色濃く継いでいることもあり、神と同格の力を宿した半神半人シャムスへの、対抗法を主神サマーァは思案した。
さっそく主神サマーァは、神々で最も純粋無垢と謳われし「平和の女神サラーム」を呼びつけた。
さらにサマーァ神は、人間の神官で最も敬虔で信心深い男を、女神サラーム自身に選ばせ、男との間に子どもを生むように命じた。
しかし残念ながら、シャムス王子の出生時とは異なり、今回の成婚は神々の望みを結ばなかった――。
神々の一柱である平和の女神、と一人の敬虔なる神官の男との間に生まれたのは、一人の少女。
少女の半分は、脆弱な肉体を備え凡庸な身。
さらに、残り半分は神聖な女神様の血を受け継ぎ、いわば「半神半人」と呼ばれる貴重な存在。
しかし、神々の目論見のためだけに産み落とされた少女の存在に、神々は深く失望した。
ガラスに走った唯一線の亀裂を嘆くかのごとく。
「何ということか。人間の叡智と強欲がもたらした荒廃を断罪し、悔い改めさせる唯一絶対の存在として生を授かりし者に対抗し得る存在が――よりによって、こんな落葉のように小さく脆弱な小娘だとは」
生まれて間もなく、少女は両親から引き離された。
半神半人とはいえ、少女は凡庸な人間の女と変わらない脆弱な身で生まれ、神の血による力も非常に弱かった。
脆弱な女という理由だけで、少女の誕生と命は神々の祝福を賜ることはなかった。
不幸中の幸いというべきか、”唯一の祈り人”は、神々にせめてもの慈悲を希った。
どうか少女の命だけは救ってほしい――と。
清廉なる徒の嘆祈に免じ、せめて少女の命がこの世界で生きることを神々は許した。
かくして少女は、神々に創造されし箱庭である聖なる獄地へ、独り産み落とされた。
聖なる自然のごとき美しさ、星のような命を煌めかせる大海のごとき純粋さと慈愛を、その身に宿して――。
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