第三章⑥『王の秘儀』
傍で待機する召使いに下膳させた後、王は黄金の絹と真紅のベルベットで彩られた高級ソファから不意に席を外した。
隣にいるエアの存在には目もくれず。
王に目配せされた別の召使いは、荘厳な扉を恭しく開いた。
扉の外で待ちわびていたのは、一輪の薔薇のような美女。
艶美な女が薔薇のような微笑みを咲かせる。
すると王は、妖艶な獣のようにぎらついた眼差しで歓迎する。
王は月の瞳に浮かべる。
王は美しい花を乱暴に手折るように女の肩を抱くと、別室へ移動していく。
毎夜夕食を終えると、王は必ず一人の美女を寝所へ連れて行く。
眩い黄金と宝石を散りばめた荘厳な扉の向こうへ消える寸前、女は毒を含んだ冷笑と共にエアを蔑視する。
毎夜入れ替わる美女と王の二人が、寝所で致している行為とは――。
エアの想像にも及ばないし、知りたくもない。
「どうした、小娘よ。お前も交ざるか?」
人間らしい理性と慈愛を持たぬ猛獣さながらの眼差と薄笑い。
寝所に籠る男女が醸し出す危うげな雰囲気も、エアに本能的な恐怖を与える。
気まずそうに俯くエアの態度に気付いたのだろう。
ふと足を止めた王は、獲物をつけ狙う粘着質な眼差しで揶揄する。
「……っ。いえ、私には畏れ多いことなので、ご遠慮させていただきます」
「……ふっ、そうであろうな」
か弱い獲物を嬲り、捕食する愉しみに涎を垂らす獣の誘い。
エアは怯えを隠せないまま、何とか丁重に断った。
予想するまでもないエアの露骨な反応に、王は鼻で嗤った。
獣欲に飢える雄と雌に変貌した二人の姿が扉の向こうへ消える。
途端、猛獣たちの巣窟へ引きずり込まれずに済んだ安堵と疲労でエアは脱力した。
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