5話. 王子の旅
ウタ国の王子はクアの他に、5つ上の兄で王太子のヒチがいる。
二人の王子はよく似ている。ウタ民族の黒髪に、白い肌、ブルーグレーの瞳。国一番の美女と言われる、ナト王妃から受け継いだすっきりとした目元に、鼻筋が通った顔立ちだ。ヒチの方が優しい顔付きで、クアは一見無愛想に見られやすい。
3年前、クアはヒチと共にラス王国の文化や王政を学ぶ目的で、初めてラス王国を訪問した。
雨が多く険しい地形に囲まれているウタ国とは対照的に、ラス王国は温暖で晴れ間が多く、見渡す限りの平野が広がっている。
馬車で国境を越えると、二人はローブを頭から羽織った。ラス王国の人々は金や銀色の髪色をしており、服装や文化がまったく異なるウタ民族の黒髪や衣服は目立ってしまう。
王子の来国にあたり、ラス王国からは二人の安全を考慮して、髪や衣服を隠せるローブが贈られていた。
農作地を抜けるとやがて街並みが見えてくる。ウタ国とは違い、建物には石やレンガが使われており、装飾性に凝った造りをしている。
「すごいな、あれはなんだ?」
クアはヒチと共に、馬車から見えるラス王国の街並みを小さな子供のように見入っていた。
街の中心部に行くほど人が多くなり、活気がある。クアには巨大都市だと感じた。
街中を馬車で進むうちに、壮大な白い建物が視界に入った。いくつもの高い塔が見える。
「ヒチ、あれが宮殿か?すごい大きさだ」
「父上に聞いたが、平野の先まで見渡せるように、あの高さの塔を建てたらしい。以前の式典の際に、母上と登ったことがあるそうだ。塔からウタの山がよく見えると言っていた」
ウタ国が他国と交易を始めたのはごく最近のことだ。クアの父である現王が、初めてラス王国との交易条約を結んだ。
二人の王子はラス王国での滞在中、王政の他、新しく発明された道具や大陸の文化についても学んでいった。
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クアがラス王国を訪問した翌年、今度はレイがウタ国を訪問することとなった。
クアは父であるウタ国王に呼ばれ、レイの来国を知らされる。ウタ王は、レイ王子と年の近いクアにこう命じた。
「クア、ラス王国からの道のりは長く険しい。ラス王国まで王子を迎えに行き、ウタ国まで王子の護衛も兼ねて旅路を共にするように」
「わかりました。時期はいつでしょうか」
「冬になる前、おそらく来月になるだろう。ちょうど我が国が最も美しい、赤い森の時期だ」




