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【通常版】光の渦と禍~王女は異国の神官との儀式で光に導かれる  作者: 神森 無為


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14/15

14話. 翌朝

リルは夢を見ていた。


「ここは赤い森...?」


リルはまだ、王宮の外に出たことがない。森の中で、木々の間から金色の何かが光っているのを見つけた。


「あれは妖精?」


リルは自分も光になっていた。そして妖精と一緒に森の中を飛び回る。


「赤い鳥もいる!」


リルは鳥のまわりをふわふわと飛んだ。すると、森の奥で大きな白銀の狼がゆっくりと歩いているのが見えた。


「狼も!」


狼は岩山に向かって行く。リルは狼の背に乗り、そのままついていった。


岩山にはいくつかの小さな紫の光が見えた。リルは狼の背から離れて、岩山の頂上に向かう。


上に向かうにつれ、岩山の内部がなぜか透けるように見え始めた。そして地中深くに、巨大な紫の光の塊が見えた。


「岩山の地中に禍がいる?」


リルは山頂に着いた。まわりを見渡すと、山頂の一角に何か見える。

小さな石が円状に置かれ、その内側には人の背丈ほどある石が3つ、中心を空けて三角に並んでいる。


すると、巨石の中心に向かって、上から光が差してくるのが見えた。


「あれは?」


__


リルは目を覚ました。


今のは夢?不思議な岩や光...


まだ夜明け前だろうか、窓の外は少し明るくなり始めている。

リルが身を起こすと、クアも目を覚ました。


「クア様、不思議な夢を見ました。赤い森の中を、金色の光が飛んでいたんです」


「赤い森の妖精を見たのか?」


「それと、あの岩山の内部が見えました。地中深くに、紫の光が大きな塊になって満ちているのが見えたのです」


「岩山の地中に、禍の塊が?」


「はい。岩山の頂上にも行ったのですが、大きな石が3つ並んでいて...その石に向かって光が差し込んだのです」


「リル、なぜそれを?」


クアは驚く。


「確かにあの山は頂上に3つの石が並んでいる。それに、天から光が降りるのを俺も見たことがある」


クアは考えていた。慈束の儀で禍を浄化できたのなら、岩山の禍も何か方法があるかもしれない。

そして山頂の光。光から禍が生まれ、表面に巣食うのではなく、内部に潜んでいるのか?


「禍の浄化について何かわかるかもしれない。起きるか。儀式を閉じよう」


クアはベッドから降りると、祭壇の前に向かう。

クアの隣にリルは隣に座った。


「俺が唱え終わるまでそこにいてくれ」


香を焚き、クアが術式を唱える。リルは自分の体に禍が残っていませんように、と願いながら香の煙を見ていた。


クアがリルのほうを向いてじっと見つめる。


「やはり、俺の目には禍はもう見えない」


リルはほっとする。


「部屋に戻ったら食事の後に大神官様に報告しよう」


__


リルは部屋に戻り、沐浴室で体を清めた。

ほんの数時間前には、儀式でクアと共にいた。


もう、クアは「リル」とは呼んでくれない。

禍が祓えたのなら、ラス王国に帰らなくてはならない。そしてユークと結婚...


温かい湯の中で、リルは静かに涙を流した。


__


「大神官様、石板の術式を終えました。私の目にはリル王女から禍はもう見えません」


大神官がリルを祭壇に寝かせて、術式を唱える。


「慈束の儀は無事、成し遂げられたようだな。リル王女の禍は祓われた」


リルはほっとしながらも、心が重いままだった。


「大神官様、儀式で金色の光が禍を包むのを見ました。それと、リル王女は昨夜、夢で赤い森の妖精や岩山の石群を見たそうです。山頂に差す光、さらに岩山の地中には禍の塊があるとも」


「金色の光...クアとの儀を終えて、リル王女に力が宿ったのかもしれぬ」


クアとリルは顔が赤くなった。


「リル王女、禍は祓われたが、憑かれていた体にはまだ負担が残っている。しばらくはウタ国で体を癒すように。これからこの国は雪に覆われる。ラス王国に戻れるのは春になるが、よいか」


「はい。大神官様」


ウタ国は標高の高い山に囲まれており、ラス王国に面した国境側は深い雪に覆われてしまう。リルは春まで戻れないことが、うれしいのか悲しいのか複雑な気持ちだった。


__


クアは昨夜、慈束の儀が無事に済めばすぐに術式を唱えて、儀式を終える予定だった。


あくまで儀式だ。冷静さを保ち、リル王女を部屋に送り届けて自室に戻る。それでいい。


それなのに、慈束の儀ではリルの美しさに溺れ、儀式の後も一緒にいたいと思ってしまった。部屋に戻りたいかリルに尋ね、一緒に眠りたいと言われたときは喜んだ。


朝になり、自分の横で夢を見たと話すリルが可愛くて、その場で抱きしめたい気持ちを必死に抑えた。


このまま、俺のもとにいればいい。


ふと、そんな思いを抱いてしまう。しかし、いずれリルは遠くへ行ってしまう存在だ。決して想いを持ってはならない。クアは自分に言い聞かせる。


儀式で見たリルの光...あの光は、この国の禍を祓えるかもしれない。


クアはこの国の王子として、神官として、禍に立ち向かうことに集中しようと決めた。

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