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【通常版】光の渦と禍~王女は異国の神官との儀式で光に導かれる  作者: 神森 無為


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12/15

12話. 石板の儀式

儀式の日程が決まり、季節は秋の終わりを迎えようとしていた。


リルの部屋とは別の客室を儀式の場として定め、室内には祭壇が設置された。他の者が入れないよう、ドアは厳重に閉ざされている。


王宮内の者にも儀式の内容は伏せられており、当日は上の階への入室を禁じた。


日が沈み、食事を済ませたリルは沐浴室で身を清め、用意されていた儀式用の衣装を着る。


伝承には禍を祓う際に、シルクを身につけると記されていた。リルには、ウタ国の花嫁が身に着ける白いシルクの寝衣が用意された。肩紐のついたスリップで、胸元と裾には、繊細な刺繍が施されている。

リルは寝衣姿の自分を見て恥ずかしくなり、ガウンを羽織って首元から足元までを覆った。


しばらくして、クアがリルの部屋を訪れた。


クアも身を清めてきたようで、長い髪がまだ濡れている。新郎用の白い上下の寝衣を着ており、上からガウンを羽織っていた。


リルは髪を下ろしているクアを初めて見た。それに、襟の詰まった神官服とは違い、寝衣は襟元が広く開いている。引き締まったクアの胸板が見えていた。見慣れないクアの姿に、リルはドキドキしてしまう。


「リル王女、これから儀式の間に案内する」


二人は儀式の間に入る。儀式用の室内はリルが使っている部屋とほぼ変わらない。部屋の中央には祭壇が設置されていた。

奥にはベッドがあり、シーツの上にはシルク素材の布がかけられていた。禍を祓う際に、シルクの生地が結界の役目を持つという。


まだ秋といえど気温は低く、暖炉には火が灯っていた。

クアは火の灯ったランプと香を手にしており、それらをベッドの横の台に置いた。そして振り向き、リルの方を見る。


リルは緊張で、入口から部屋の中に進むことができない。


「リル王女、祭壇の前に」


クアは祭壇の前にリルを呼び、祭壇の前に座った。それを見て、リルも真似をする。


「今から術式を唱える。そのまま動かずにいてくれ」


「は、はい...」


クアは目を閉じ、祭壇に向かって古代ウタ語の言葉を唱えた。

リルはランプの光ごしにクアの横顔を見て、式典で初めてクアの姿を見たのを思い出した。


クア様、綺麗...

もし、この儀式がクア様ではない方とだったら...

でもこの儀式が成功したら、私はラス王国に帰らなければならない...そして私は...


リルは禍の恐怖におびえながらクアと過ごすうちに、抑えきれないほどクアに惹かれてしまっていた。


リルは涙が出そうになるのを、術の邪魔にならないよう耐えていた。

クアが術式を唱え終えて、リルのほうを向く。


「リル王女、大丈夫か?」


リルはその綺麗な藍色の瞳から涙をいっぱいに溜めていた。

涙がこぼれないよう我慢しているが、ついに涙が溢れ出す。


儀式の途中だというのに、リルは涙を抑えられなかった。


もしかしたら、儀式を通じてクアと一緒になれる未来があるかもしれないと、わずかに期待していた。


しかしクアは、いつも毅然とした態度でリルに接している。ウタ国の王子、そして神官として。

淡い期待を抱いてしまった自分が情けなく、恥ずかしかった。ラス王国に戻った後の現実も、考えたくない。


「何か異変があったのか?」


リルは目の前で心配そうにするクアの顔を見つめた。


「クア様、私は大丈夫です。儀式を続けてください」


クアは涙が止まらないリルの顔にぎこちなく触れる。

そっと、流れた涙を押さえるように頬をなぞった。


「...ありがとうございます。もう大丈夫です」


クアは立ち上がり、リルの手を引いてベッドの前に連れて行く。


「先ほど開始の術式を唱えた。これより、儀式を始める」


クアはベッドの横に置いた香にランプの火を移し、煙を立てた。

すーっと煙が上に上がり、穏やかな香の香りが室内に広がっていく。

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