↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【通常版】光の渦と禍~王女は異国の神官との儀式で光に導かれる  作者: 神森 無為


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/11

11話. ゆらぎ

クアはリルの決心を受け止めた。


石板の儀式が成功するかはわからないが、リルも早くラス王国に帰りたいだろう。


クアはウタ国の神話にある、望まぬ相手と添うことを嫌がった姫が、命を絶つ物語を思い出していた。

リルが自分との儀式を受け入れるには、かなりの葛藤があったはずだ。


「ただの儀式だ、忘れればいい」そう言うしかできなかった。リルに言った言葉を、クアは何度も頭の中で繰り返した。


翌日、ラス王国のレイから文書が届く。石板を盗みだした者を捕らえたという内容だ。鉱山で金と翡翠を盗み、ウタ文明の保管庫にも盗み入ったらしい。石板に宿っていた異変には気付いていなかった。


クアは大神官に文書を報告すると共に、リルの決心を伝えた。


「大神官様、ラス王国へはリル王女に術を行うとのみ報告します。...儀式については明かさずに」


「それでよい」


クアは大神官から術式の言葉や印の結び、そして万が一、禍が強まった時のために抑え込む術式も合わせて学んだ。


型を習得し、儀式を記した書も受け取る。


リルの決心から、一か月が過ぎようとしていた。


王宮の使用人には、リルの滞在はレイと同じく、外交で滞在していると伝えていた。来国の際に体調を崩してしまい、大神官とクアが治療にあたっていると。


しかし使用人の間では、リル王女はクア様の婚姻相手なのでは、と噂されていた。国王夫妻やヒチ王太子家族が宮を移ったのも、婚姻前に二人きりで過ごすためなのではと。


その噂のためか使用人達は皆、リルに優しい。王宮の二階はクアとリルしか使用しないため、なるべく邪魔しないように配慮していた。


リルはそうとは知らず、禍に取り憑かれた忌まわしい自分に、王宮の人々が良くしてくれることに罪悪感を感じていた。


早くラス王国に戻らなければ...

無事戻ったら、私はユークと結婚するのだろうか...


王女の立場では、リルに選択肢はない。しかし、禍に取り憑かれたと知れたら、ラス王国やユークの公爵家の名誉にもかかわる。


それに、婚姻前に別の方と...


クアに忘れろと言われても、リルはユークに対して罪悪感を持つと感じていた。さらにその気持ちの下には、隠しきれないクアへの思いがあった。


悩んだリルはその日の夜、クアに聞いてみる。


「クア様、術式のことですが、選ばなかった方法について教えていただけませんか」


「リル王女、それを知る必要はない」


「お願いします。私はあの時、恐怖でよく考えられませんでした」


「そうだとしても、他の方法は選ばせない」


「...わかっています。すでに決めたことです。ただ、知ることで...この儀式を受ける覚悟を持ちたいのです」


「リル王女、もし俺が嫌なら他の者に...」


「違うのです!...もし私が禍から解放されて、ラス王国に戻れたとしても...これでよかったのかと、クア様を巻き込んでしまったことをずっと心残りするでしょう」


リルの葛藤を聞き、クアは術の内容を説明した。


「その術は、「禍が望む部位」を生贄として差し出す。禍が体のどこを選ぶかはわからないし、場所によっては命がない」


「もう一つは、術によってその者の「命」と共に禍を貫き、魂に乗せて禍を天に導く。いいか?リル王女、今俺が伝えた術は何があっても実行しない。もし君がこれらを選んだとしてもだ」


リルはしばらく黙っていたが、クアに微笑んだ。


「クア様、私のことを気遣って下さり、感謝しています」


最後は声が震えて涙が溢れた。


「ラス王国に戻れるよう、私も覚悟できました」


リルの涙を見て、クアは思わずリルを抱きしめてしまいそうになるのを抑えた。かわりにリルの手に触れ、心を鎮める術式をかけてから部屋を出た。


自室に戻ったクアは、リルのことを考えていた。

俺の立場も、彼女にとって重荷になるのかもしれない。


他の神官で代わりになる者がいないか。同世代は女性の神官しかいない。男性は既婚者ばかりで、他は12歳、10歳の子供だ。


皆、いざとなれば真剣に儀式に挑んでくれるだろう。しかしクアは、自分以外の者とリルが儀式を行うことに苛立ちを覚えた。


リル王女は俺が救う。

クアの決心も固まった夜となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。