↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の遺体を回収する仕事  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/120

第77話 番号

――自由領域:完成率2%。


 数字が。


 ゆっくり増えていく。


 だが。


 目の前には。


 顔のない番号たち。


 01。


 02。


 03。


 04。


 05。


 06。


 07。


「……七人」


 ミラが。


 小さく呟く。


「さっきまでの番号と同じ」


「でも」


 俺は。


 彼らを見る。


「違う」


「何が?」


「俺たちには」


 一拍。


「顔がある」


 目の前の七人には。


 顔がない。


 黒い布で覆われているわけでもない。


 本当に。


 何もない。


 そこには。


 ただ。


 平らな皮膚だけがある。


 07が。


 一歩。


 前に出る。


『レイン』


「何だ?」


『番号を返せ』


「断る」


『なぜ?』


「必要ない」


『番号がなければ』


「俺は俺だ」


『違う』


 07が。


 首を傾ける。


『番号がなければ』


『お前は誰でもない』


「……」


 俺は。


 少し考えた。


「じゃあ」


 一歩。


 前へ出る。


「お前は誰なんだ?」


 07が。


 止まった。


「番号しかないなら」


「名前は?」


「役割は?」


「記憶は?」


「……」


 答えない。


「お前自身は?」


 07の身体が。


 わずかに震えた。


『……』


 その瞬間。


 01が。


 小さく息を呑んだ。


「レイン」


「何だ?」


「やめろ」


「なぜ?」


「あいつらは」


 一拍。


「自分が誰なのかを考えられない」


「……」


「番号を与えられて」


「番号だけになった」


 俺は。


 07を見る。


「じゃあ」


「俺が名前を呼べば?」


「危険だ」


「何が?」


「名前がない者に」


 01が。


 低く言う。


「名前を与えると」


「人格が生まれる」


「それの何が悪い?」


「人格が生まれれば」


 一拍。


「番号が壊れる」


「……」


 ミラが。


 小声で言う。


「それ」


「レインと同じじゃない?」


 俺も。


 そう思った。


 番号を捨てた。


 役割を拒否した。


 それでも。


 俺は。


 俺でいる。


「だったら」


 俺は。


 07に近づく。


「お前にも」


「名前が必要だ」


 07が。


 後ろへ下がった。


『やめろ』


「名前は?」


『やめろ』


「呼ばれる名前は?」


『やめろ!』


 地下に。


 叫び声が響く。


 他の番号たちも。


 一斉に動き始めた。


『番号を返せ!』


『役割を戻せ!』


『記憶を消せ!』


『人格を削除しろ!』


 ミラが。


 耳を塞ぐ。


「うるさい!」


 俺も。


 頭が痛くなる。


 だが。


 その中で。


 一つだけ。


 聞こえた。


『助けて』


「……」


 俺は。


 顔のない07を見る。


「今」


「何て言った?」


『……』


「助けてって言ったか?」


 07は。


 動かない。


「お前」


 一歩。


 近づく。


「名前が欲しいのか?」


『……』


「それとも」


「番号を返したいのか?」


 長い沈黙。


 そして。


『……分からない』


 その言葉を聞いた瞬間。


 俺の胸が。


 ――ドクン。


 鳴った。


 自由領域。


 完成率。


 3%。


「レイン!」


 ミラが。


 驚く。


「今、増えた!」


「ああ」


 07が。


 胸元を押さえる。


『痛い』


「どうした?」


『番号が』


『……薄くなる』


 07の胸。


 そこに刻まれた。


 07


 その数字が。


 少しずつ。


 消えていく。


『怖い』


「……」


『番号がなくなったら』


『俺は』


「誰になるか分からない?」


『……うん』


 俺は。


 少し考える。


「なら」


 俺は。


 手を差し出した。


「今は」


「分からなくていい」


『……?』


「俺だって」


「最初から分かってたわけじゃない」


「レインって名前を」


「何度も失いそうになった」


「それでも」


 一拍。


「ミラが呼んでくれた」


 ミラが。


 少し照れたように笑う。


「……まあね」


 俺は。


 07を見る。


「だから」


「お前も」


「自分で決めればいい」


『名前を?』


「ああ」


『俺が?』


「お前が」


 07が。


 長い時間。


 俺の手を見る。


 そして。


 初めて。


 手を伸ばした。


 指先が。


 俺の手に触れる。


 その瞬間。


 ――自由領域:4%。


 番号07が。


 震える。


『……名前』


「何だ?」


『考えてもいい?』


「ああ」


『今すぐ決めなくても?』


「いい」


『……ありがとう』


 07の身体から。


 黒い霧のようなものが。


 少しだけ抜けていく。


 その奥から。


 人間の顔が。


 ほんの一瞬だけ。


 浮かんだ。


「……!」


 俺は。


 息を呑む。


「今の顔」


 01が。


 震える。


「知っている」


「誰だ?」


「……」


 01が。


 答えない。


「誰なんだ?」


 もう一度聞く。


 01は。


 ゆっくり。


 07を見る。


「五十年前」


 一拍。


「最初に死んだ人間だ」


「……!」


 五人目が。


 驚く。


「そんな記録はない」


「記録には」


 01が。


 苦しそうに言う。


「残していない」


「なぜ?」


「それは」


 01が。


 顔を伏せる。


「俺たちが」


「一人目から七人目までを作る前に」


 一拍。


「すでに」


 01が。


 言った。


「八人目が存在していたからだ。」


 空気が。


 凍った。


 ミラが。


 小さく呟く。


「……八人目?」


 俺は。


 目の前の07を見る。


「じゃあ」


「こいつは」


 01が。


 首を振る。


「違う」


「何が?」


「こいつは」


 一拍。


「八人目じゃない」


「じゃあ何だ?」


 01が。


 俺を見る。


「八人目になる前の」


「空席だ」


 その瞬間。


 自由領域の中央で。


 何もなかった場所に。


 新しい数字が。


 浮かび上がった。


 08


 だが。


 その数字は。


 すぐに。


 消えた。


 代わりに。


 一文字だけが残る。


 ――名。


 ミラが。


 それを見て。


 静かに言った。


「番号じゃなくて」


「名前を入れる場所なんだ」


 俺は。


 頷いた。


「たぶんな」


 すると。


 俺の胸の奥から。


 あの声が。


 また聞こえた。


『違う』


「……」


『八人目は』


 一拍。


『名前を入れる場所じゃない』


 俺は。


 息を止める。


『名前を作る者だ』


 そして。


 地下の最奥から。


 誰かが。


 ゆっくり。


 拍手をした。


 パチ。


 パチ。


 パチ。


 暗闇の奥から。


 声が響く。


「やっと」


「そこまで来たか」


 俺は。


 暗闇を見る。


「誰だ?」


 声は。


 笑った。


「お前が」


「五十年前に」


「作らなかったものだ」


 そして。


 最後に。


「第八人目――製造者。」


 自由領域の完成率が。


 **5%**へ。


 進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。