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勇者の遺体を回収する仕事  作者: ななほし


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68/120

第68話 死ぬ前の1番

――「俺を殺す必要はない」


 -1番の言葉が。


 地下に響いた。


「……どういう意味だ?」


 俺は。


 警戒したまま聞く。


「言葉通りだ」


 -1番は。


 杖をつく。


 カツン。


 乾いた音。


「五十年前」


 彼は言った。


「俺はお前に殺された」


「……」


「正確には」


 -1番が。


 俺を見る。


「お前の命令で」


 その言葉は。


 以前にも聞いた。


 だが。


 今までとは。


 何かが違う。


「でも」


 俺は言う。


「お前はアルドを殺した」


「ああ」


「そして」


「俺に殺された?」


「そうだ」


「……」


 俺は。


 混乱する。


「なら」


 俺は。


 -1番の胸元を見る。


「今のお前は何だ?」


「記録だ」


「記録?」


「五十年前の」


 一拍。


「俺が死ぬ直前に残った記録」


 俺は。


 言葉を失った。


「つまり」


 ミラが。


 恐る恐る口を挟む。


「本人じゃない?」


「そうだ」


 -1番は。


 あっさり答えた。


「俺は」


 胸を指す。


「生きている-1番ではない」


「死ぬ直前の-1番だ」


「……」


 それなら。


 なぜ。


 今ここにいる?


「じゃあ」


 俺は聞く。


「お前は五十年前から」


「ずっとここにいたのか?」


「違う」


「いつから?」


「今だ」


「……」


 また。


 意味が分からない。


 すると。


 ミラが。


 小さく手を挙げた。


「質問していい?」


「何だ?」


「つまり」


 ミラが。


 指を折る。


「五十年前の人が」


「今のレインが条件を変えたから」


「今、記録として現れた?」


「正解だ」


「……」


 ミラが。


 自慢げに俺を見る。


「私、賢くない?」


「今だけな」


「今だけって何!」


 少し。


 笑えた。


 だが。


 少年は。


 ずっと-1番を見ている。


「……知ってる」


 少年が。


 小さく言った。


 -1番が。


 彼を見る。


「そうか」


「僕」


「お前に」


「会ったことがある」


 俺は。


 驚いた。


「五十年前?」


「うん」


「でも」


 少年は。


 首を振る。


「僕じゃない」


「……?」


「僕になる前」


 -1番の目が。


 細くなる。


「そうだ」


 その一言で。


 俺の背筋が冷えた。


「候補三になる前」


「お前は」


 -1番が言う。


「別の名前だった」


「名前?」


 少年が。


 俯く。


「僕」


 一拍。


「名前があったの?」


「あった」


「何て?」


 -1番は。


 答えなかった。


「言えない」


「どうして?」


「その名前を言えば」


 -1番が。


 俺を見る。


「お前の第三心臓が」


「完全に起動する」


「……」


 ドクン。


 胸が鳴った。


「じゃあ」


 俺は。


 聞く。


「第三心臓は」


「名前を聞くことで起動する?」


「違う」


 -1番が。


 首を振る。


「名前を思い出すことで起動する。」


「……」


 少年が。


 顔を上げた。


「僕の名前」


「そうだ」


「思い出したら」


「お前だけじゃない」


 -1番が。


 静かに言う。


「レインも思い出す」


「俺も?」


「ああ」


「何を?」


 -1番は。


 答えない。


 代わりに。


 床に杖をついた。


 カツン。


 地下の奥から。


 同じ音が返ってくる。


 カン。


 カン。


 カン。


「……」


 俺の金属板が。


 熱くなる。


 ――記録照合開始。


 壁に。


 古い日付が浮かぶ。


 ――五十年前。


 ――四十九年前。


 ――二十八年前。


 ――現在。


 そして。


 その四つの日時を。


 一本の線が繋いだ。


「……時間が」


 ミラが呟く。


「繋がってる?」


「違う」


 -1番が言った。


「重なっている」


「重なって?」


「五十年前に起きたことが」


 一拍。


「今、もう一度起きている」


 俺は。


 その言葉を聞いて。


 嫌な予感がした。


「つまり」


「俺たちは」


「五十年前をやり直してる?」


「違う」


 -1番が。


 首を振る。


「やり直しているのではない」


「じゃあ?」


「続きを生きている。」


 その瞬間。


 地下の奥から。


 足音が聞こえた。


 一歩。


 また一歩。


 誰かが。


 こちらへ向かっている。


 ミラが。


 俺の後ろに隠れる。


「……誰?」


 -1番は。


 答えない。


 ただ。


 静かに。


 杖を握り直した。


 足音が止まる。


 暗闇から。


 一人の男が現れた。


 黒い服。


 胸元に。


 ――05


「五人目……?」


 俺が呟く。


 男は。


 俺を見る。


 そして。


 ゆっくり笑った。


「やっと見つけた」


「誰を?」


「俺の」


 一拍。


「名前を」


 俺は。


 息を呑んだ。


 男の顔を。


 見た瞬間。


 胸の三つ目が。


 今までにないほど。


 強く鳴った。


 ――ドクン。


 ――ドクン。


 ――ドクン。


 そして。


 頭の中に。


 一つだけ。


 言葉が浮かんだ。


 「五人目は、俺が殺した」


「……俺が?」


 男が。


 笑った。


「そうだ」


 そして。


「五十年前」


 静かに。


「お前は俺を殺した」


 そう言った。

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