↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の遺体を回収する仕事  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/120

第30話 レイン

――初代レイン


 ――死亡理由:


 そして。


 最後の文字が浮かんだ。


 ――自分自身による殺害。


「……」


 誰も喋らなかった。


 俺も。


 ミラも。


 三十一番も。


 三十三番も。


 一番も。


 零番でさえ。


 ただ、その文字を見ていた。


「自分自身って……」


 ミラが小さく呟く。


「どういう意味?」


「分からない」


 俺が答える。


 すると。


 老人が笑った。


「いや」


 老人は首を振る。


「意味は、そのままだ」


「どういうこと?」


「初代レインは――」


 老人が俺を見る。


「自分で自分を殺した」


「……」


 俺は眉をひそめた。


「そんなこと、どうやって?」


「それが問題なんだ」


 老人は壁を見る。


「初代レインには、自分を殺せるだけの力がなかった」


「じゃあ……」


「誰かが手を貸した」


「誰?」


 老人は答えなかった。


 代わりに。


 一番が口を開く。


「俺だ」


 全員が一番を見る。


「……一番?」


「ああ」


「お前が俺を殺した?」


「正確には違う」


「どう違う?」


 一番は少し黙った。


「お前が俺に頼んだ」


 俺の背筋が凍った。


「俺が?」


「そうだ」


「何を?」


「殺してくれ、と」


 頭の中で。


 何かが弾けた。


 ――雪。


 ――血。


 ――一番。


 ――そして。


 自分の声。


『俺を殺してくれ』


「……」


 映像が一瞬だけ見えた。


 五十年前の俺。


 子供の姿。


 その前に立つ一番。


 俺は一番の手を握っている。


『約束して』


『何を?』


『俺を、もう一度生きさせて』


 俺は息を呑んだ。


「……もう一度」


 一番が俺を見る。


「思い出したか」


「少しだけ」


「なら、続きを聞け」


「……」


 一番は言った。


「お前は死ぬ前に、一つだけ条件を出した」


「何?」


「俺に殺されること」


「……それだけ?」


「違う」


 一番の声が低くなる。


「お前は言った」


 地下室が静まり返る。


「『俺を殺したあと、二十八年後に起こしてくれ』」


 俺は息を呑んだ。


「二十八年後……」


「そうだ」


「だから俺は……」


「二十八年前に起きた」


「誰が起こした?」


 一番は答えなかった。


 その代わり。


 老人を見る。


 老人が静かに言った。


「私だ」


「……」


「お前の再起動を行った」


「じゃあ、母さんたちは?」


「何も知らない」


「父さんも?」


「知らない」


「じゃあ、どうして俺はあの町に?」


 老人が少し笑う。


「それも、お前自身が決めた」


「俺が?」


「そうだ」


「五十年前の俺が?」


「いや」


 老人は首を振る。


「五十年前の記憶を持たない、お前自身がだ」


 意味が分からない。


 俺が頭を抱える。


「じゃあ俺は、五十年前に死んで……」


「二十八年前に起きた」


「そして普通に生きてきた」


「そうだ」


「でも、その人生は誰かに作られたものじゃない?」


「違う」


 老人がはっきりと言う。


「お前自身の人生だ」


 その言葉に。


 胸の奥が少しだけ軽くなった。


 ミラが隣で微笑む。


「ほら」


「……何?」


「前に私が言ったでしょ」


「何を?」


「どうやって生まれたか分からなくても、今ここにいるあなたはレインだって」


「……」


 俺は少しだけ笑った。


「覚えてたのか」


「当然」


「俺は忘れてた」


「レインだもん」


「どういう意味?」


「忘れっぽいって意味」


「……」


 緊張していた空気が。


 ほんの少しだけ緩んだ。


 だが。


 一番は笑っていなかった。


「まだ終わっていない」


「何が?」


「初代レインの死だ」


「俺が自分で死を選んだんだろ?」


「そうだ」


「じゃあ、何が問題?」


 一番が答える。


「なぜ、お前は自分を殺す必要があった?」


「……」


「なぜ二十八年後だった?」


「……」


「そして」


 一番が壁を見る。


「なぜ、お前は自分の死亡理由を自分で消した?」


 誰も答えられない。


 その瞬間。


 壁の文字が変わった。


 ――死亡理由:自分自身による殺害


 その下に。


 新しい一文が浮かぶ。


 ――目的:記憶の封印


「……記憶?」


 三十一番が呟く。


 さらに文字が続く。


 ――封印対象:


 そこで。


 文字が途切れた。


 俺は息を呑む。


「何を封印した?」


 壁が震える。


 カン。


 カン。


 カン。


 そして。


 ゆっくり文字が現れた。


 ――アルドではない。


「……?」


 全員が固まる。


 さらに。


 その下に。


 ――魔王でもない。


 俺の心臓が跳ねる。


 そして最後に。


 一行だけ。


 ――『七人目』である。


 地下室の空気が凍った。


 三十三番が顔を上げる。


「……七人目」


 三十一番が一歩後退する。


 一番の手が剣に伸びる。


 零番は目を閉じた。


 そして老人だけが。


 静かに呟いた。


「とうとう、そこまで戻ったか」


 俺は老人を見る。


「七人目って……誰なんだ?」


 老人は答えた。


「お前だ」


 その瞬間。


 俺の徽章が鳴った。


 カン。


 表示された文字は――


 三十二番。


 その下に。


 今まで見たことのない表示が浮かんだ。


 ――七人目:起動確認。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。