第67話 十人で研修を始めます!(前編)
最初に《海路快人》を選び、契約期間を七日に設定した。
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確認:
海路快人を雇用しますか?
契約期間:七日
消費ポイント:一日100ポイント
契約成立後、ただちに召喚されます。
はい/いいえ
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初めてこよりを呼んだ時ほどではないが、確定する指にはまだ緊張があった。
七日分のポイントを使うだけではない。
これから一緒に働く人を、知らない場所へ呼ぶ操作だ。
「押すぞ」
「はい!」
《はい》を選ぶと、ロビーの床に黒い渦が広がった。
水面へ墨を落としたような黒さが丸く回り、その中心から人の輪郭が浮かび上がる。
光が弾けたあと、二十代後半ほどの男性が立っていた。
茶色の髪を短く整え、薄いベージュ色の長袖シャツを着て、袖を肘までまくっている。
背丈は俺と大きく変わらないが、指と手のひらが厚かった。
海路は足元を確かめてから、俺と小坂へ向き直った。
「海路快人です。契約を受けていただき、ありがとうございます」
落ち着いた声だった。
突然場所が変わったはずなのに、周囲を一度見ただけで姿勢を整えている。
「朝倉です。俺が召喚主で、こちらが運営管理を担当する小坂です。詳しい説明は全員そろってからします」
「承知しました。調理場を任せていただけると伺っています」
「伺っている…そうですね、その通りです。それはまた後程で」
海路は受付の奥に食堂の表示を見つけると、そこへ一度視線を向けた。
真っ先に厨房の場所が気になるらしい。
二人目は曽布川姫乃だった。
同じ黒い渦と光のあと、栗色の髪を肩口でそろえた若い女性が現れた。
一瞬だけ驚いた表情を見せるも、俺たちの名前を聞くとコクコクと頷いた。
「朝倉さんが召喚主で、小坂さんが運営管理ですね。曽布川姫乃です。受付と案内を希望しています。よろしくお願いします」
三人目の若井譲司は、俺より少し背が高い、細身の男性だった。
短い茶髪で、目も同じ茶色をしている。
俺と小坂の挨拶が終わると、若井も口を開く。
「若井譲司です。商店で働いていましたので、接客と会計は得意です。金額の確認も任せてください」
四人目の比志野祥子は、小坂と同じくらいの背丈の女性だった。
背中まである黒髪は後ろでひとつにまとめられ、ぱっちりとした茶色の目がよく目立つ。
丸みのある顔立ちもあって、二十四歳という年齢より少し若く見える。
「比志野祥子です。以前は宿泊施設で働いていました。早くこちらの仕事を覚えて、受付でお役に立てるよう頑張ります!」
五人目の熊谷真久は、光が消えたあとも入口が狭く見えるほど大柄だった。
肩幅もあり、立っているだけなら近寄りがたい。
だが、小坂が館内研修だと伝えると、そばの椅子にぶつからないよう、すぐに一歩横へずれた。
「熊谷です。清掃と運搬を希望しました。重い物は、先に声をかけてもらえれば運びます」
六人目の阿武原玲奈は、紺色の長袖シャツと黒いズボンを身につけ、髪を高い位置で束ねていた。
名乗ってすぐ、壁際の案内表示を読んでなぜかニヤリとした笑みを浮かべた。
「水回りの掃除には慣れています。浴室と洗濯場も、手順を教えていただければしっかりやります」
「それは助かる。館内を見ながら説明します」
「はい。お願いします」
最後に現れた珍田伴吾は、俺より少し背の高い男性だった。
黒髪は短く刈られ、太い眉と角張った顔立ちが目を引く。
熊谷ほど大柄ではないものの、肩幅は広く、腕も太い。
「珍田伴吾です。夜間の見回りと入口確認を希望しています。緊急時の指示系統も、研修中に教えてください」
「わかりました。用意しておきます」
七人の契約が終わると、従業員管理の表示が更新された。
新規契約者七名は全員雇用中となり、既存三名を合わせた日額は640ポイントになっている。
「次は、先に働いてくれている三人を呼ぶ」
俺は笹原こより、井瀬川湊、花森チカを勤務開始に切り替えた。
ロビーの床に三つの黒い渦が続けて開き、見慣れた三人が姿を現す。
「はわわわわ! ちゃんと次も呼ばれま………はわっ!!!!」
こよりは待っていた新しい面々を見て、その場で癖なのか咄嗟に両手を握り合わせた。
「あ、こよりちゃん。新しい仲間だから先輩として仲良くしてあげてね!」
こよりは無言でコクコクと頷いた。
「一気に増えましたね…そしてバリエーション豊富」
井瀬川は大柄な熊谷を見てから、清掃と運搬を希望している人だと聞いて一度うなずく。
チカは海路へ丁寧に頭を下げた。
「花森チカです。厨房と配膳のお手伝いをしています。料理をされる方が来てくださると聞いて、楽しみにしていました」
「海路快人です。こちらこそ、現場のやり方を教えてください」
こよりは受付担当を希望した三人の前へ行き、一人ずつ名前を確かめた。
「私は笹原こよりです! 受付と案内をしています。分からないことがあったら、何でも聞いてください!」
「何でもは言いすぎ」
井瀬川が横から突っ込む。
「自分も知らないこと、まだあるでしょ」
「ありますけど! でも、一緒に調べます!」
俺はこよりの「一緒に調べます」に思わず噴き出した。
「先輩、随分とこよりちゃんも逞しくなりましたね」
「あぁ。そうだな。まだ二回目の召喚だけど」
そして井瀬川が自己紹介を始める。
「井瀬川湊。備品と裏方を担当してる。清掃と運搬なら、最初はこっちに聞いて」
新しく来た七人は、先に働いている三人の勢いに少し圧されながらも、それぞれ返事をした。
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
「まずは食堂へ移ろう。全員座って話したい」
俺が声をかけ、十二人で食堂へ向かった。
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