表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン湖畔の休憩地 〜限定オリジンスキルで始めた小さな宿屋に、探索者たちが帰ってくる〜  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/61

第34話 異界人材の募集告知(後編)

 俺は表示を見ながら考えた。


 初回募集は一般人材、日額契約、最低一週間。

 いきなり人を呼ぶのは危険だ。

 けれど、募集告知だけなら、三日後にリストを見るところまでで止められる。


 「募集告知したら、すぐ誰か来るわけじゃないんだな?」


 『告知から三日後に、スキル内で応募者名簿を確認できます。名簿には応募者の概要、希望条件、日額ポイント、最低契約期間が表示されます』


 「そこで条件を見て、よければ雇用」


 『はい。雇用を選択すると、契約成立後ただちに召喚されます』


 「選ばなければ?」


 『掲載期間終了後、名簿は無効になります』


 「募集告知の千ポイントは戻るのか?」


 『戻りません』


 「ですよね」


 俺は少し笑った。

 小坂は笑わなかった。


 「先輩、本気ですか」


 「本気というか、確認はしておきたい。いきなり雇わない。まずは最低ランクで募集告知だけ」


 「最低ランクって言い方もなかなかですけど」


 「そうだな。最近はコンプラとかも厳しいし。一般人材枠、だな」


 言い直すと、小坂は少しだけ肩を落とした。


 「まあ、リストを見るだけなら……でも、表示を見たら先輩、絶対迷いますよ」


 「……それは確実に迷うと思う」


 「そこは否定してください」


 黒瀬が俺たちのやり取りを聞きながら、ガイドアシストを見る。


 「一つ確認だ。こっちの世界の情報を、そいつらが外に漏らすことはあるのか」


 『契約中に知り得た休憩地内部情報は、契約制限により無断開示できません。そしてこれは逆もまた同様です』


 「契約終了後は?」


 『休憩地内部情報は記憶保護対象になります。元の世界へ戻った後も、詳細な再現や第三者への伝達はできません』


 「あまりにも便利すぎて逆に怖いな」


 黒瀬はそう言ったが、俺を止めるところまではいかなかった。

 小坂も難しい顔のまま、もう一度表示を見る。


 「三日後にリストが出て、一週間載り続けるんですよね」


 『はい』


 「昼休みに確認するくらいはできますね」


 「じゃあ、とりあえず募集告知はしておくか」


 俺が言うと、小坂と黒瀬が同時に俺を見た。


 「本当に押すんですね」


 「告知までならノーリスクだろ? それに見てみないとなんとも言えないし。一般人材枠で最低費用。契約はもちろんだが、一旦は見るだけということで」


 黒瀬は表示をもう一度見てから、顎を引いた。


 「俺は反対寄りだ。だが、少なくともリスト確認まではしておいた方がいいだろう。それにこのスキルは底が知れない不気味さがある。だったら否定するよりも早いうちに確認して、使いこなさないとな」


 「確かにそうですね」


 「後だが……この人材を呼ぶときも場所を考えるべきだ。呼ぶならダンジョン内でのみにしておけ。あそこなら、こっちの街中よりは被害を抑えられる」


 「そこは必ず守ります」


 俺はガイドアシストへ向き直った。


 「一般人材枠、最低費用で募集告知を出してくれ」


 『承りました』


 表示が一段階切り替わる。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 表示種別:募集告知確認

 

 募集種別:一般人材枠

 募集対象:人間

 技能条件:特殊技能なし

 作業範囲:受付補助、清掃補助、配膳補助、リネン補助、荷運び補助

 告知費用:1000ポイント

 応募者提示:三日後

 掲載期間:提示後七日間

 

 この条件で募集告知を実行しますか?

 ――――――――――――――――――――


 「人間に限定できるんだな」


 『募集対象は切り替え可能です。ですが、現在の状況では人間のみの雇用に制限されています』


 「よし。実行」


 『募集告知を実行しました』


 半透明の表示の一部が淡く光る。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 休憩地ポイント:9000

 

 異界人材募集告知:受付済み

 応募者名簿提示予定:三日後

 ――――――――――――――――――――


 「本当に減った」


 小坂の声は、半分呆れで半分諦めだった。


 『三日後にリストを提示します』


 それで、この日の宿泊型ルート初期設定は終わりになった。


 終わりと言っても、決まったことは少ない。

 むしろめちゃくちゃ増えた。


 「これ、黒瀬さんにも三日後に共有します」


 「ああ。画面の写真は撮れるのか?」


 『休憩地内部表示の撮影は制限されています』


 「だろうな」


 黒瀬は笑った。


 「じゃあ、見た内容をメッセージでくれ。曖昧なまま採用するなよ?」


 「もちろんですよ」


 作業場を片付けるころには、外はすっかり暗くなっていた。

 宿泊施設モデルは消え、白い球体も消えた。

 けれど、頭の中にはまだ、応募者名簿という言葉が残っていた。


 異界の住人を、出来れば一般人材として最低一週間だけ募集する。


 どう考えても、普通の会社員が昼休みに考える内容ではなかった。



 ◇



 そして三日後。


 その日は、朝から落ち着かなかった。

 営業先へ向かう電車の中でも、資料を確認しているふりをしながら、頭の端ではずっと応募者名簿のことを考えていた。


 午前十一時を少し回ったころ、視界の端に小さな表示が浮かんだ。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 通知:異界人材募集告知

 

 応募者名簿を確認できます。

 ――――――――――――――――――――


 俺はすぐに小坂へメッセージを送った。


 『例のリスト見られるようになったぞ』


 返信は早かった。


 『人目が少ないところにしましょう。ステータス表示見たいので、公園で昼を取りながらどうですか』


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ