表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン湖畔の休憩地 〜限定オリジンスキルで始めた小さな宿屋に、探索者たちが帰ってくる〜  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/64

第31話 宿泊型ルートの初期設定(前編)

 黒瀬工務設備の作業場には、前にシャワーユニットを仮組みした時と同じように、屋外スペースが空けられていた。

 

 仮設資材のラックが端へ寄せられ、中央だけがぽっかり空いていた。

 黒瀬は軍手を片手だけ外し、俺と小坂を見た。


 「で、今度は宿泊型になったから、一回ここで出して確認したいと」


 「はい。次に湖畔でいきなり展開するのは怖いので、まず黒瀬さんのところで見てもらいたくて」


 「確かにな。しかしお前のスキルはホントによくわかんねぇな。そんな多機能なスキルなんて聞いたこと無いぞ」


 「いやぁ、俺もよく分かってないこと多くて」


 「まぁいいさ。俺も宿泊型に進化したって聞いてちょっとワクワクしたしな。さっさとやろうか」


 俺は作業場の中央に立った。


 「では、いきます」


 俺がそう告げると、黒瀬は一歩下がり、小坂は遠くの位置からスマホで撮影に入る。

 俺は【休憩地】の初期登録へ意識を向ける。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 スキル区分:オリジンスキル

 表示種別:宿泊型ルート初期登録

 登録名:湖畔休憩地

 対象:管理者、運営スタッフ、設備協力者共有

 

 宿泊型ルート反映準備中。

 …………少々お待ちください。

 ――――――――――――――――――――


 「おっ。なんか表示されたぞ」


 「黒瀬さんにも見えてます?」


 「ああ。俺の前にも出てる。設備協力者共有ってやつか」


 「私にも見えてます。前よりだいぶ表示も安定してきましたね。痒い所に手が届き始めてるっていうか」


 小坂が表示を見ながら言う。

 俺も同じ文字を見ていたが、『少々お待ちください』という文面のせいで妙に落ち着かない。

 そして待つこと数十秒、表示がようやく切り替わった。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 表示種別:宿泊型ルート初期化

 

 初期化します。

 周囲の安全確認を行っています。

 登録済み設備と宿泊施設モデルの統合準備を行っています。

 ――――――――――――――――――――


 「さて、どうなるか……」


 「なんかこっちまでドキドキしてきちゃいます!」


 「どんな建物が出てくるか……」


 直後にファンファーレが鳴った。

 どこから音が出ているのか分からない。

 天井のない屋外スペースに、金属音とも電子音ともつかない明るい音が広がる。


 次に、俺たち三人の目の前で、光の粒がぱっと弾けた。

 紙吹雪のような小さな光が上から降り、地面に触れる前に消える。

 セレブレーション演出、と言うしかないものだった。


 「……なんか……イメージと違って派手ですね、先輩」


 「うーん。俺の中のスキル概念が根本から崩れていく……」


 「最近のスキルは、こう、なんか演出が入るんだな……」


 黒瀬の言葉に俺と小坂はお互いに視線を合わし、『そんなことないだろ』と内心で呟いた。


 やがて、三人の前に同じメッセージが表示された。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 表示種別:宿泊型ルート開始案内

 

 おめでとうございます!

 これから宿泊型ルートの初期設定を開始します。

 まずは宿泊地モデルを半透明で表示します。

 設備登録の時と同じようにカスタマイズできますので、区画設定を行ってください。

 確定後、宿泊施設が出現します。

 ――――――――――――――――――――


 「黒瀬さん、これ大丈夫ですかね」


 「最初はカスタマイズできるように、半透明のカスタマイズモードになるんだろ? だったら問題ないと思うが」


 すぐに、光の境界の内側へ巨大な半透明の建物が浮かび上がる。


 最初に見えたのは入口だった。

 両開きの自動ドアのような形。

 その奥に、広めのロビー。

 右手に小さな売店らしき区画があり、左奥には食堂につながる入口が見える。


 上には二階と三階がある。

 想像していた建物の規模感が、一回りどころか二回りは大きい。

 俺の想像ではちょっとしたロッジ位だと思っていたので、目の前の半透明になっている建物に俺は内心驚いていた。

 ただ、大型ホテルというほどではない。

 探索者向けの小型宿泊施設、と言われれば一番しっくり来る規模だった。


 「これ、コテージって言う規模じゃないですよね?」


 小坂が半透明の外壁を見上げた。


 「コテージの大きい版、というより、小さいホテルですね」


 「だな。基礎も配管も見えねえが、建物の考え方はホテル寄りだ。入口を入ってすぐロビー、横に売店、奥に食堂。この配置見る限りは小坂の言う通り、ホテル的な構造だろう」


 黒瀬は建物の周囲を歩き、半透明の壁を外から見た。

 触れようとはしない。

 位置、幅、入口、建物まわりを目測で大まかではあるが測っていた。


 その時、俺たちの目の前に、バレーボールほどの白い球体が浮かんだ。

 表面には顔も模様もない。

 ただの無機質な球だ。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 表示種別:カスタマイズ補助起動

 機能名:カスタマイズガイドアシスト

 役割:宿泊型ルート初期設定の質問回答、区画確認、ポイント消費案内

 備考:未確定項目は案内できません。

 ――――――――――――――――――――


 『カスタマイズガイドアシストを起動しました』


 球体から、抑揚の少ない声が出た。


 「しゃべった!!」


 小坂がすぐ反応する。


 「これ、質問には答えてくれるのか?」


 『宿泊型ルート初期設定に関する質問へ回答します』


 「なんという便利機能……これがイルカの姿だったら、お前をけ……」


 『外観変更はポイント消費により可能です』


 俺は半透明の外壁を見る。

 今の外壁は、飾り気のない一般的なビジネスホテルに近い。

 白とグレーを混ぜたような、よくある外装だ。

 湖畔の景色には悪くないが、特別に合っているとも言いづらい。


 「なあ、外壁は変えられるのか?」


 『外壁、屋根、看板、照明、窓枠、入口意匠はポイント消費により変更可能です』


 「そのポイントって何ですか?」


 小坂が聞く。


 『営業すると貯まるポイントです』


 「……ざっくりですね」


 「どう営業したら、どれくらい貯まる?」


 『宿泊、食堂利用、売店利用、休憩利用、施設利用によりポイントが発生します』


 「具体的な数字は?」


 『営業実績が不足しています』


 黒瀬が腕を組んだ。


 「使わせたいのに、使うまで数字は出さねえタイプか。面倒だな」


 「ですね。運営しないとポイントの感覚が分からないみたいです」


 俺はまず施設の中へ意識を向けた。

 半透明化した建物入口が一部消えて、中に入れるようになった。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ