第101話 湖畔休憩地、宿泊施設をアップグレードします!②
その日のうちに、公式サイトとYへ臨時休業のお知らせを掲載した。
次回分の利用券販売も止め、問い合わせには小坂と地上の事務担当が答える。
数日後、休業前最後の営業を終えると、俺は異界から来た20人のスタッフを食堂へ集めた。
検証初日は俺と小坂、黒瀬で新しい建物と設備を確認する。
その日は全員に休んでもらい、休業2日目から再召喚して、館内の確認と営業準備を手伝ってもらうことにした。
「わ、私はここで待機できます! お掃除も、仕込みもできますから!」
こよりが真っ先に残留を申し出る。
「こより、建物ごと変わるなら掃除する場所がない。それに建物がなくなるから、居ることがそもそもできないよ?」
井瀬川に言われても、こよりはまだ納得していない。
「でも、1日でも朝倉さんのお役に立てないのは……」
「こより、休むのも仕事のうちだ。休業2日目からみんなには新しい館の確認を手伝ってもらうし、今のうちに家族や知り合いに顔を見せて、きちんと休んできてくれ」
俺が全員へ伝えると、チカがこよりの肩へ手を置いた。
「新しいお土産話も持って帰れるし、向こうで待っている人を安心させてあげましょう。休業2日目には、また呼んでもらえるんだから」
「……分かりました。休業2日目になったら、必ず呼んでくださいね!」
「もちろんだ」
海路と来戸からも、地上研修用厨房で仕込みを続けたいという申し出があった。
俺は新しい厨房設備が決まるまで仕込み量を増やせないと説明し、二人にも検証初日の休みを取ってもらう。
契約は解除せず、全員の勤務終了手続きだけを行い20人を順番に送り出すと、いつも誰かの声がしていた食堂から物音が消えた。
俺と小坂も宿泊施設を撤収し、地上へ戻った。
◇
次の定休日。
木場の地上基地には、俺と小坂、黒瀬の三人が集まっていた。
宿泊施設はまだ展開していない。
資材は主工場の中央から運び出してあり、建物1棟分より広い空間を確保してある。
黒瀬は俺からアップグレードの説明を聞き、主工場の中央まで歩いた。
「アップグレードか……。ずいぶん成長が早いな」
「ですです。黒瀬さんも、このペースは考えてなかったでしょ?」
「そりゃあな。ただ、ここまで未知のスキルなら、何が追加されてもおかしくないと割り切ってるよ」
黒瀬が苦笑すると、小坂は敷地の門に掛けた南京錠を手で引っ張った。
錠は外れず、門扉も動かなかった。
「外に人はいません。主工場のシャッターも閉めました。いつでも始められますよ、先輩」
「分かった。では、アップグレードするぞ」
休業前までの営業で増えたポイントから、20人分の契約維持費が毎日差し引かれている。
それでも、現在の残高は154,870ポイントまで増えていた。
俺は【休憩地】を開き、黒瀬を今回の設備協力者として共有対象へ加えた。
宿泊型施設アップグレードを選ぶと、実行前の確認画面が現れる。
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【休憩地】
スキル区分:オリジンスキル
表示種別:宿泊型施設アップグレード確認 ★新規
登録名:湖畔休憩地
対象施設:宿泊施設
変更内容:宿泊型(小)→宿泊型(中) ★新規
必要ポイント:100,000ポイント
現在ポイント:154,870ポイント
実行後ポイント:54,870ポイント ★新規
実行確認:はい/いいえ ★新規
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「100,000ポイント……。数字で見ると、やっぱり凄いですね」
「でも、ここで広げないと湖畔の混雑は変わらない。使うぞ?」
「はい!」
俺は実行確認で「はい」を選択した。
画面の文字が消え、中央に『アップグレードを実行しています』と表示される。
1秒、2秒と待つ間も、何も展開していない敷地には変化がない。
やがて完了音が鳴り、新しい画面へ切り替わった。
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【休憩地】★通知:アップグレード完了
スキル区分:オリジンスキル
表示種別:宿泊型施設アップグレード完了 ★新規
登録名:湖畔休憩地
休憩地Lv.11
施設規模:宿泊型(中) ★新規
消費ポイント:100,000ポイント ★新規
現在ポイント:54,870ポイント
現在状態:未展開
次回展開:宿泊型(中)を反映 ★新規
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「おお!」
小坂が完了表示を見て声を上げた。
黒瀬も表示された宿泊型(中)の文字を確かめてから頷く。
「さあ、いろいろと確認していこうか」
「そうですね」
俺は完了表示の下に追加された《施設詳細》を開いた。
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【宿泊型施設情報】
施設規模:宿泊型(中) ★新規
建物外形:約28メートル×16メートル ★新規
階数:4階 ★新規
建物高さ:約14メートル ★新規
延床面積:約1,792平方メートル ★新規
屋内最大宿泊人数:96名 ★新規
野外最大宿泊人数:48名 ★新規
合計最大宿泊人数:144名 ★新規
食堂通常席数:80席 ★新規
一時休憩利用人数:40名 ★新規
追加設備:男女別大浴場/湖畔野外休憩・宿泊区画/屋外トイレ/共同シンク ★新規
現在状態:未展開
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「広さが……倍か?」
黒瀬が延床面積の数字を見ている。
宿泊型(小)は3階建てで、延床面積は約900平方メートルだった。
階数が1つ増えた宿泊型(中)は、約1,792平方メートル。建物全体の床面積なら、ほぼ倍になっている。
「そうですね。それに、安全領域もかなり広がっています」
俺は施設情報から安全領域設定へ切り替えた。
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【安全領域設定】
最大半径:150メートル ★新規
最大直径:300メートル ★新規
範囲設定:最大値以内で任意設定
最大運用費:C等級魔石2個/24時間 ★新規
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宿泊型(小)の最大半径は100メートルだった。
半径が50メートル増えただけに見えるが、最大まで広げた時の面積は、これまでの約2.25倍になる。
「かなり規模が大きくなって見えますけど、先輩。これって、ここの木場本拠地の敷地内で入り切るんですかね?」
小坂は何も展開していない主工場の中央を見回した。
「そうだな……。とりあえず、大きさをいつもの仮想表示で確認してみようか」
施設の実展開ではなく、《宿泊施設モデル表示》を選ぶ。
木場で使う安全領域は、主工場内に収まる最小範囲へ設定した。
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【休憩地】
表示種別:宿泊施設モデル
対象施設:宿泊型(中) ★新規
表示状態:半透明モデル
実施設:未展開
安全領域:木場検証用最小範囲
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主工場の床に、薄い光の境界が広がった。
その内側へ、4階建ての建物が青白い線で浮かび上がる。
以前の宿泊施設より横幅が4メートル、奥行きが3.5メートル増え、高さは約3.5メートル高い。
約38メートル×28メートルの主工場へ置くと、建物の左右には約5メートル、前後には約6メートルずつ残った。
上部の鉄骨までは約2メートルしかない。
「結構きつきつだな」
黒瀬は入口側から建物の横へ回り、外壁と鉄骨柱の間を確かめた。
「点検する場所は残ってる。ただ、これ以上大きくなったら、主工場の中で全体を出すのは無理だな」
「先輩! 階数も増えてますよ? それに、ロビーが倍以上に広がってます!」
小坂は半透明の入口から、中のロビーまで入っている。
俺と黒瀬もあとを追った。
「とりあえず、細かいところを見ていこうか」
「そうですね」
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