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【書籍化決定!】ダンジョン湖畔の休憩地 〜限定オリジンスキルで始めた小さな宿屋に、探索者たちが帰ってくる〜  作者: 小狐


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101/113

第101話 湖畔休憩地、宿泊施設をアップグレードします!②

 その日のうちに、公式サイトとYへ臨時休業のお知らせを掲載した。

 次回分の利用券販売も止め、問い合わせには小坂と地上の事務担当が答える。


 数日後、休業前最後の営業を終えると、俺は異界から来た20人のスタッフを食堂へ集めた。


 検証初日は俺と小坂、黒瀬で新しい建物と設備を確認する。

 その日は全員に休んでもらい、休業2日目から再召喚して、館内の確認と営業準備を手伝ってもらうことにした。


 「わ、私はここで待機できます! お掃除も、仕込みもできますから!」


 こよりが真っ先に残留を申し出る。


 「こより、建物ごと変わるなら掃除する場所がない。それに建物がなくなるから、居ることがそもそもできないよ?」


 井瀬川に言われても、こよりはまだ納得していない。


 「でも、1日でも朝倉さんのお役に立てないのは……」


 「こより、休むのも仕事のうちだ。休業2日目からみんなには新しい館の確認を手伝ってもらうし、今のうちに家族や知り合いに顔を見せて、きちんと休んできてくれ」


 俺が全員へ伝えると、チカがこよりの肩へ手を置いた。


 「新しいお土産話も持って帰れるし、向こうで待っている人を安心させてあげましょう。休業2日目には、また呼んでもらえるんだから」


 「……分かりました。休業2日目になったら、必ず呼んでくださいね!」


 「もちろんだ」


 海路と来戸からも、地上研修用厨房で仕込みを続けたいという申し出があった。

 俺は新しい厨房設備が決まるまで仕込み量を増やせないと説明し、二人にも検証初日の休みを取ってもらう。

 契約は解除せず、全員の勤務終了手続きだけを行い20人を順番に送り出すと、いつも誰かの声がしていた食堂から物音が消えた。


 俺と小坂も宿泊施設を撤収し、地上へ戻った。



 ◇



 次の定休日。


 木場の地上基地には、俺と小坂、黒瀬の三人が集まっていた。


 宿泊施設はまだ展開していない。

 資材は主工場の中央から運び出してあり、建物1棟分より広い空間を確保してある。


 黒瀬は俺からアップグレードの説明を聞き、主工場の中央まで歩いた。


 「アップグレードか……。ずいぶん成長が早いな」


 「ですです。黒瀬さんも、このペースは考えてなかったでしょ?」


 「そりゃあな。ただ、ここまで未知のスキルなら、何が追加されてもおかしくないと割り切ってるよ」


 黒瀬が苦笑すると、小坂は敷地の門に掛けた南京錠を手で引っ張った。

 錠は外れず、門扉も動かなかった。


 「外に人はいません。主工場のシャッターも閉めました。いつでも始められますよ、先輩」


 「分かった。では、アップグレードするぞ」


 休業前までの営業で増えたポイントから、20人分の契約維持費が毎日差し引かれている。

 それでも、現在の残高は154,870ポイントまで増えていた。


 俺は【休憩地】を開き、黒瀬を今回の設備協力者として共有対象へ加えた。

 宿泊型施設アップグレードを選ぶと、実行前の確認画面が現れる。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 スキル区分:オリジンスキル

 表示種別:宿泊型施設アップグレード確認 ★新規

 登録名:湖畔休憩地

 対象施設:宿泊施設

 変更内容:宿泊型(小)→宿泊型(中) ★新規

 必要ポイント:100,000ポイント

 現在ポイント:154,870ポイント

 実行後ポイント:54,870ポイント ★新規

 実行確認:はい/いいえ ★新規

 ――――――――――――――――――――


 「100,000ポイント……。数字で見ると、やっぱり凄いですね」


 「でも、ここで広げないと湖畔の混雑は変わらない。使うぞ?」


 「はい!」


 俺は実行確認で「はい」を選択した。


 画面の文字が消え、中央に『アップグレードを実行しています』と表示される。

 1秒、2秒と待つ間も、何も展開していない敷地には変化がない。


 やがて完了音が鳴り、新しい画面へ切り替わった。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】★通知:アップグレード完了

 スキル区分:オリジンスキル

 表示種別:宿泊型施設アップグレード完了 ★新規

 登録名:湖畔休憩地

 休憩地Lv.11

 施設規模:宿泊型(中) ★新規

 消費ポイント:100,000ポイント ★新規

 現在ポイント:54,870ポイント

 現在状態:未展開

 次回展開:宿泊型(中)を反映 ★新規

 ――――――――――――――――――――


 「おお!」


 小坂が完了表示を見て声を上げた。

 黒瀬も表示された宿泊型(中)の文字を確かめてから頷く。


 「さあ、いろいろと確認していこうか」


 「そうですね」


 俺は完了表示の下に追加された《施設詳細》を開いた。


 ――――――――――――――――――――

 【宿泊型施設情報】

 施設規模:宿泊型(中) ★新規

 建物外形:約28メートル×16メートル ★新規

 階数:4階 ★新規

 建物高さ:約14メートル ★新規

 延床面積:約1,792平方メートル ★新規

 屋内最大宿泊人数:96名 ★新規

 野外最大宿泊人数:48名 ★新規

 合計最大宿泊人数:144名 ★新規

 食堂通常席数:80席 ★新規

 一時休憩利用人数:40名 ★新規

 追加設備:男女別大浴場/湖畔野外休憩・宿泊区画/屋外トイレ/共同シンク ★新規

 現在状態:未展開

 ――――――――――――――――――――


 「広さが……倍か?」


 黒瀬が延床面積の数字を見ている。

 宿泊型(小)は3階建てで、延床面積は約900平方メートルだった。

 階数が1つ増えた宿泊型(中)は、約1,792平方メートル。建物全体の床面積なら、ほぼ倍になっている。


 「そうですね。それに、安全領域もかなり広がっています」


 俺は施設情報から安全領域設定へ切り替えた。


 ――――――――――――――――――――

 【安全領域設定】

 最大半径:150メートル ★新規

 最大直径:300メートル ★新規

 範囲設定:最大値以内で任意設定

 最大運用費:C等級魔石2個/24時間 ★新規

 ――――――――――――――――――――


 宿泊型(小)の最大半径は100メートルだった。

 半径が50メートル増えただけに見えるが、最大まで広げた時の面積は、これまでの約2.25倍になる。


 「かなり規模が大きくなって見えますけど、先輩。これって、ここの木場本拠地の敷地内で入り切るんですかね?」


 小坂は何も展開していない主工場の中央を見回した。


 「そうだな……。とりあえず、大きさをいつもの仮想表示で確認してみようか」


 施設の実展開ではなく、《宿泊施設モデル表示》を選ぶ。

 木場で使う安全領域は、主工場内に収まる最小範囲へ設定した。


 ――――――――――――――――――――

 【休憩地】

 表示種別:宿泊施設モデル

 対象施設:宿泊型(中) ★新規

 表示状態:半透明モデル

 実施設:未展開

 安全領域:木場検証用最小範囲

 ――――――――――――――――――――


 主工場の床に、薄い光の境界が広がった。

 その内側へ、4階建ての建物が青白い線で浮かび上がる。


 以前の宿泊施設より横幅が4メートル、奥行きが3.5メートル増え、高さは約3.5メートル高い。

 約38メートル×28メートルの主工場へ置くと、建物の左右には約5メートル、前後には約6メートルずつ残った。

 上部の鉄骨までは約2メートルしかない。


 「結構きつきつだな」


 黒瀬は入口側から建物の横へ回り、外壁と鉄骨柱の間を確かめた。


 「点検する場所は残ってる。ただ、これ以上大きくなったら、主工場の中で全体を出すのは無理だな」


 「先輩! 階数も増えてますよ? それに、ロビーが倍以上に広がってます!」


 小坂は半透明の入口から、中のロビーまで入っている。

 俺と黒瀬もあとを追った。


 「とりあえず、細かいところを見ていこうか」


 「そうですね」

読んでいただきありがとうございます。

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