美容室
美容室に行きます。
歯を磨いて、私は淡いピンク色の夏用の着物に着替えた。帯は生成り色のにし、濃いピンクの帯紐をして、銀の細工に真珠が付いている帯飾りをして、髪には銀の髪飾りで真珠が付いているのをさした。髪を結い直して、化粧もし直した。
十時から美容室に予約を入れていたのだった。手帳を見るまで、すっかり忘れていた。
猫たちに「行って来るね」と声を掛けて、スマホとお財布とハンカチだけバックに入れて、日傘をさして、美容室まで歩いて行った。
私は髪が多いので、髪を漉いてもらいに来たのだった。髪も少しだけ切って貰うことにした。
シャンプーをして貰った。
いつも担当してくれる、オーナーの奥さんに髪を切って貰った。
「文ちゃん、着付け上手くなったね」と言われて、プロに褒められて嬉しくなった。「でも歩いていたら、人から見られている気がして、恥ずかしいんですけどね」と私が言うと、「文ちゃん、似合ってるから、気にしなくていいよ」と笑われてしまった。
奥さんはいつも素敵なネイルをされていた。ジェルネイルと言うのだそうだった。「一ヶ月間持つのよ」と言われて驚いた。お店で水曜と土曜日にしているから、興味があったら、予約してね、とジェルネイルのチラシをくれた。意外に安かった。
「飲み物は何にする?」と聞かれて、いつもの生姜紅茶を頼んだ。生姜紅茶とは、紅茶に生姜の砂糖漬けが付いているのだった。いつもホットを頼んでいて、覚えられていた。
美容室には、流木の上に流線的な硝子の水槽が置かれていて、中には熱帯魚のベタが泳いでいた。私もベタを飼った事があるが、元気なベタで、大きめの硝子の容器に入れていたのだが、仕事から帰って来たら、ベタは容器から飛び出して死んでいたのだった。
奥さんに髪を結って貰った。さすがプロの技で、前髪を波打たせて、後ろの髪は巻いてから結って下さった。
「いい髪飾りね」と言いながら、奥さんは髪にさして下さった。
お会計を済ませにレジに行ったら、大きな円形の硝子の水槽が置いてあった。めだかが三匹だけ入ってるの、と言われておかしかった。水草も入っていた。
「ありがとうございました」と言ってから、お店を出て、日傘をさしてうちに帰った。
日傘をたたんで、家の鍵を開けていたら、猫たちがニャーニャー鳴いている声が聞こえて来た。
「ごめんね、遅くなりました」と言ってから、手を洗い、うがいをしてから、餌を作ってあげた。
スマホで自撮り写真を撮ってから、妹にラインで送った。
両親にもこの姿を早く見て欲しかったが、両親が来るのは夕方だったから、浴衣に着替えるか迷った。
美容室は癒しの空間で、気持ちが高揚するのだった。普段地味に生きている私が、華やいだ空間に触れるまれな機会だった。
昼薬を飲んでから、エプロンをして、お昼ご飯にホットサンドを作って食べた。中身はトマトとピーマン、玉ねぎと、ハム、とろけるチーズを入れた。アイスコーヒーを注いで、飲みながら食べた。
皿やコップを洗い、歯を磨いてから、ソファーに座り、膝に子猫を乗せて、ココを撫でながら、図書館から借りて来ていた本を読んだ。私はいつの間にか寝ていて、起きたら、母が来ていて台所で料理をしていた。
「寝てた」と母に言うと、「文、出掛けたの?着物じゃない」と聞かれたから、「美容室に予約を入れていたのを思い出して、行って来たの。髪を漉いてもらったの」と奥さんに結って貰った髪を見せた。
「素敵よ、文」と言ってくれた。
母は昔から爪を長くしていたから、「お店でジェルネイルをしてるんだって。お母さんもしない?チラシを貰って来たよ」と言ったが、「後で見せて」と母は言った。
「お父さんは?」と聞いたら、「お風呂よ」と言った。
私は夕薬を飲んでからエプロンをして、母の料理の手伝いをした。
今日の献立はインゲンと南瓜の煮付け、豆腐が入ったサラダ、マグロのお刺身に長芋を擦った物が掛けてある物だった。
お風呂上がりの父に、「似合う?」と言って、後ろを向いて貰った髪を見せたら、「どこの美人かと思ったぞ。後ろ姿だけはいいな」と言うから、「もう!」と私は言って、みなで笑った。
父は芋焼酎を、母はビールを、私は麦茶を飲みながら夕食を食べた。両親はご飯を食べていたが、私は長年夜はご飯を食べていなかった。
食後に夕薬を飲んだ。
母と猫たちとお風呂に入って、今日は髪を洗うのが勿体なく感じたから、洗わなかった。
身体だけ洗い、猫たちを母と一緒に洗った。
湯舟に浸かって、化粧を落として蒸しタオルをした。蒸しタオルは母がするので、私も真似してするようになったのだった。
猫たちをタオルドライして、ドライヤーで毛を乾かしてあげた。
私も肌のお手入れをしてから浴衣に着替え、歯を磨いた。
父はもう寝ていた。
私は水を飲んで、就眠薬も飲んだ。
浴室の母に「先に寝てるよ」と声を掛けて、寝室に入ると猫たちはベッドの真ん中で寝ていた。
私は窓際に寝て、ヘッドライトの灯りで日記をつけた。そしてそのまま寝た。
翌朝、起きたら八時過ぎで両親はいなかった。顔を洗い、歯を磨いて、朝薬を飲んだ。
昨日結って貰った髪に合うのは何かな、と浴衣を見ていたけど、やはり着物が着たくなって、襦袢を着て、翡翠色の着物に白い帯を締めた。翡翠の簪をして、帯留めも翡翠の物をつけた。化粧もした。
居間のテーブルの上に『よく寝ていましたね。会議があるから、お父さんと会社に行きます。夕方また来ます。猫ちゃん達にはご飯をあげました。食べたい物があったら、ラインしてね』とメモ用紙に書いてあった。
パンを焼いて、ヨーグルトを硝子の器に盛って、蜂蜜を掛けて食べた。紅茶を淹れて飲んだ。
皿などを洗ってから、歯を磨いて、ソファーに座って、図書館から借りた本の続きを読んだ。膝の上には、子猫たちが乗って、ココは私にくっついて寝ていた。
昼薬を飲んでから、猫たちに餌をあげた。
それから、自分のお昼ご飯に、素麺を茹でて、麺つゆに梅干しをたたいたのを混ぜて食べた。トマトとチーズのサラダも作って食べた。
器などを洗ってから、歯を磨いた。またソファーに座って本を読んだ。借りていた本、三冊を読み終えたから、図書館に返しに行って、また三冊借りて帰って来た。
浴衣に着替えて、化粧を落としてから猫たちと昼寝をした。
両親が夕方来たけれど、私は眠くて仕方がなくて、夕薬と就眠薬を一緒に飲んでから、母に「もう寝るね」と言ってから、猫たちと寝た。
夜中に目が覚めて、お豆腐を食べた。
また寝室に行って、母を起こさないように静かにベッドに寝た。
行きつけの美容室は、長い付き合いで、髪をどうするかは奥さんに任せています。
お読みくださり、ありがとうございました!




